読書の部屋からこんにちは!

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2009.12.21
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カテゴリ: その他の本
タイトルだけ見てふざけた本だと思った方、

きっかけは、  「探偵!ナイトスクープ」 というバラエティ番組に寄せられた、一通の投書でした。「東京ではバカ。大阪ではアホ。その境目はどこですか?」
こんな素朴な疑問から、番組のディレクターさんが独自に調査を始め、その結果「全国アホバカ分布図」がテレビ放送されたそうです。
その放送は大きな反響を呼び、ついには方言学会でも注目される研究となりました。
その経過を、真摯な態度でつづった記録です。


確かに、アホ地帯とバカ地帯の境目ってどこにあるんでしょう。
調べていくと、名古屋のあたりに「タワケ地帯」を発見。タワケの語源は何だろう。

それを全部探してみようじゃないか!

すると不思議なことに、遠く離れた東北と九州に同じ言い方があることも判明。
なぜ?人の行き来があったとは思えないのに・・・
青森弁と鹿児島弁は、通じない代表のように言われるのに、なぜ同じことばが使われてるんだろう。
どこまで調べても、終わりというものがありません。



前半は、方言のおもしろさに加えて、テレビ番組を作る現場も垣間見えたりして、興味深いです。それが後半になると、感動的にさえなってくるんです。
それは、調査を進めていくうちに、沖縄の方言に差別的な語源が出てくるあたりのことです。
全国のアホバカ方言に、差別的な、あるいは相手を嘲笑したり切り捨てたりするような方言は一つもありませんでした。
だって、アホバカだって、そんなにきつくひどい言葉とは思えません。
自分の失敗に気づいて、「私ってばかね」「うちってあほやなあ」とか言うでしょ。
ラブシーンでも、「いやーんバカ」って言うじゃありませんか?

アホバカはそんな愛情深い言葉なのに、沖縄語だけが差別用語を語源とするなんて、そんなことあるわけない!著者はそのように考え、あらゆる文献を調べ、手を尽くして考えます。
そしてその結果、やはりその沖縄方言は差別から来た言葉ではなかった、ということを立証できたのです。


学者というものは(たぶんですけど)研究や学問に自分の願いや個人的な思いは、邪魔だと思って、排除するんじゃないでしょうか。
冷静じゃないと、正しい研究結果は得られない。そんな気がします。
でも、この本の著者は国語学者でもなんでもない、普通の人です。

だから調査しながらも、方言っておもしろいなあ、愛情あふれるいい言葉だなあと、感動しながら調べることができたんじゃないでしょうか。
だから、差別的な言葉に出会ったとき、「そんなの嫌だ。そんなはずない。」って、思ったことでしょう。
そしてついには、それまでの定説を覆すほどの発見をしたんですから、しろうとの発想もすごいものです。


学問として読んでも意味深く、また読み物として読んでも実におもしろい。感動的ですらある、すばらしい本でした。
皆さんもこの本で、ふるさとの懐かしいことばに再会できるかもしれません。
そして、日本のどこか知らない遠い町で、同じことばが使われていることを知って、とてもうれしい気持ちになれるかもしれませんよ。
なぜ、遠く離れた町に同じ方言があるのか。その答えもこの本にあります。
学問上、非常に意味深いことだそうです。


この本(新潮文庫)のカバーの裏には、全国アホ・バカ分布図が掲載されているそうです。
というのは、私が読んだのは図書館の本なので、カバーがしっかり接着されていて、残念ながら分布図を見ることができなかった。ほんとうに残念です。
図書館さん、なんかいい方法を考え出してほしいです。



全国アホ・バカ分布考





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Last updated  2009.12.21 09:51:51
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