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2007/02/17
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カテゴリ: 政治
日経新聞の社説には、なるほど!、そうだ!、と思うことがよく書いてあって、特に、経済紙でありながら、家族の問題や心の問題も採り上げていて、単純にカネさえ儲かれば良いという表面的なことだけではなく、本質的な部分から論理的に考えていこうという姿勢が、私のお気に入りです。
従って、既得権益保護の自民党よりも、民主党が掲げている政策に近い主張が多いのですが、結論になると急に、民主党はダメ、自民党が良い、となってしまうのが不思議です。

さて、本日(2007年2月17日)付日経社説は、「成長基盤の強化で格差固定を防げ」と題して格差問題を採り上げています。
日経社説の主張は、

(2) フリーター、母子家庭所帯に、職業訓練・教育を施し、履修者にICカードを交付して、よりよい条件で就労できるようにする。
(3) 英国で導入されている職業資格制度は民間主体で基準作りが行われて発展した。日本でも定着させるためには、産業界の協力が不可欠だ。
(4) 最低賃金を県の平均賃金の一定割合にまで引き上げ、守らない中小企業経営者を厳しく指導せよ。
というものです。
(1)は私もそう思いますが、(2)~(4)には異論があります。
経済財政諮問会議の報告に盛られている構想を評価する、という主張なので、私の主張とやや異なるということかも知れません。

日経社説ライター氏は、データもよく調べ、既成概念や利権擁護にとらわれることなく、日本経済の将来にとって何がベストか、という視点に立って書いてくれているように思いますが、格差問題や福祉問題になると、末端の低賃金労働者がどうしているか、障害者の生活がどうなっているか、というを肌身で感じてくれているわけではない、ということなのだろうと思います。

まず、(2)については、職業訓練を施せば収入が本当に上がるのか、ということが言えると思います。

テーマがややずれますが、例えば大学入試センター試験数学の「情報」の内容は、BASICという言語を使って行われます。
ところが、一般家庭のパソコンで、この言語でプログラムを書いても動作しません。
こんな役にも立たない試験をやってどういう意味があるのでしょうか?
かつて行われていた「情報処理技術者試験」も、試験問題作成者は現場のソフトウェア作成の現場を知らないお役人さんたちでした。
これでは、試験の意味がありませんね。
要するに、職業訓練の制度を作っても、官僚の天下り先確保に使われてしまうのでは、役に立たないのです。
従って、意味もない職業訓練を受けてきて企業に来てくれても、そんな技術はうちでは役に立たないよ、ということになってしまい、ICカードを持っていても、収入はちっとも上がらない、ということになります。

(2)についてのもう一つの問題点は、日本の就労者のレベルは職業訓練を必要とするほど低いのか、ということです。
このブログで、日本人はアホか、と、よく書いていますが、それは日本の教育レベルが低いという意味ではなく、日本人が自分一人で苦しんでいて他人の苦しみには無関心、連帯し共感し合うということをやらない、という意味においてのことです。
日本人一人一人の知的レベルは先進国中でも非常に高いのです。
問題は、一人一人に自己主張と他人を思いやる心が無く、誰が何を求め何ができるのか、相互交流し、相互連携し合うような土壌がないことです。

日本中で、能力のミス・マッチングが起きているのです。
そして、企業内ということなら努力もされていると思いますが、日本全体として見たときに、能力が最適に活かされるような努力がまるで為されていません。
どうせ、やる気と能力の欠如が格差問題の原因だろうと、安易に決めてかかっているところに、格差問題解決の困難があるように思います。

(3)、(4)については、経営側の問題ですが、中小企業経営者が、なかなか入社してくれる人が見つけられない時に、ICカードを持ってきたA君を雇い入れたとします。
笑顔が気持ちよいので、A君には営業をやってもらったのですが、全く仕事を取ってきてくれません。

そりゃ、そうでしょうね、専門学校で朝から晩までコンピュータとにらめっこをしていたA君を営業に出しても、仕事を取ってきてくれるはずがありません。
最低賃金を守らない中小企業の経営者を締め上げれば、単にその中小企業が倒産するだけのことでしょう。
実は、A君は友人から、あの会社ではビルの構造計算をするプログラムを自社開発している、という話を聞いて、その会社に来たのですが、構造計算プログラムは既に完成していて、メンテナンス程度のことなら他にやっている人がいるのでした。
日本では、面白いプログラミングの仕事がどこにあるかという情報が、口づてになっていたりするのです。
特定の人たちの間では知られていても、うまい話は外に出すな、勝ち組と言われる人は、情報を隠し持っていて、情報が広がることがありません。
良い情報にありつくのには、人付き合いが最大の武器だったりします。
人付き合いのヘタな人間の所には仕事が回ってきません。

日本では、全ての情報が公開され、全ての人がその情報の中から自分が必要とする情報を検索して抽出できるようになっていない、なっていない、というよりも、そういうことをしようという努力を、既得権益を守るために、ということで力づくで潰しにかかる人たちがいるのです。
楽天やライブドアやヤフーのような企業が、そうした仕事を融通し合うようなシステム構築を目指しても、虚業だ、錬金術だ、拝金主義だ、冷たい競争が起こる市場原理主義はごめんだ、国家の品格が保たれないぞ、ということになってしまいます。

大学の研究室で生命工学を極めた人が博士号まで取得したのに、研究実績を活かせるような就職口がなく、やむを得ず、タクシー運転手をして生計を立てて来たのに、市場原理主義者たちが規制緩和をしてタクシー業への参入障壁を取っ払ってしまったために、タクシー業の収入が減ってしまって食っていけない、ところが、生命工学の最先端のところではどうしても期待された研究成果が得られずに実験結果を捏造して論文を発表した、しかしながら、論文の不備が発覚して大学から追い払われる人が出てくる、実は、その実験の問題点については、タクシー運転手をしていた生命工学博士がプロで、しっかり解決のノウハウも握っていた、ということが起こるのです。

以上を見てくれば、日本で必要なことは何か、はっきりしています。
利権に群がる人だけが甘い汁を吸う、ということがないように、情報公開を徹底して、情報の民主化を図り、仕事とその仕事をこなせる能力をもつ人が最適にマッチングできるような社会システムを構築すること、最適にマッチングさせるためには、公平公正な競争が行われるルールと、競争に敗れても飢え死にしたりすることがないようなセーフティ・ネットが完備されていること、すなわち、適正な市場原理がきちんと機能することが求められているのです。
待てど暮らせど、ある仕事をこなしてくれる社員が現れないと悩んでいる企業と、どの仕事に応募してもさっぱり仕事を受注できない人がいて、はじめて、職業訓練・職業教育が必要になるのであって、ニート、フリーターは全て無能力者である、なんていう仮定から出発すれば、無駄な職業訓練と、何のために訓練されているのかわからずストレスがたまるだけの失業者の増大と、天下り先を確保できたお役人さんと、税金の無駄遣いを招くだけのことです。

日経社説は、適正な市場原理を機能させるための施策を数多く提言してきています。
格差問題についても、より優れた提言をしてくれるように望みたいと思います。




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最終更新日  2007/02/17 12:54:50 PM


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