ぐりっちのいるところ

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ぱぷりか。

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それは、夜の８時過ぎ。

その日。
おとどさんは未明から出かけてた琵琶湖から帰ったなりだったし、
お母さんはまだちょっとしくしくするお腹を案じて、
楽しみにしてたエッシャーさんの展覧会もお預けになったのに
図書館で借りた本も昨日読破してしまい、
かといってＰＣの前には夫が転がってるし、
ゆかちは、いつもなら休日の友のピンクの一輪車もうっちゃって
珍しくドリル開いて月曜日のテストの勉強してたもんだから

誰から云うともなく、家族仲良く４時間もお昼寝したのです。

あんまり寝すぎて
夕食にちょっと辛めのビビンバを食した後にさえ、
みんなぽやんとしてたので
３０分くらい
だぁれも気にかけなかったのです。

ぐっちゃんがいないのに。

だってぐっちゃんは、お家大好きっ子だから
放してもすぐ（５分以内に）戻ってくるし、
おしっこで湿った砂風呂のお砂を替えるために
ケージのカゴ外したって

そのまんまお世話を忘れちゃったって、
すっかりきつくなったハウスの中でお腹出して
うとうとしてるくらい呑気な王子さまだったのさ。

だから、大好きなブロッコリをケージに入れたのに
いつまでたってもハウスのちっちゃな窓から、

ソファでお膝抱えてＴＶ見てるゆかちに聞いたんだ。

「そこ(お膝）にぐっちゃんいるの？」
「ん～ん。何で？」
「いないから。」
「ぇええええ！？」

いつもひと休みしてるテーブルの下。
時どき怪しいモノをほっぺに詰め込むソファの裏。
こぼれた生米狙いのキッチン。
稀に寝とぼける畳んでない洗濯物のやま。

・・・いない－－；

「ぐらやぁ～～～い！」
「ぐっちゃ～～～～ん！！」

ふと頬をなぶる風が廊下から渡ってきて
まさか・・・

玄関風通すために鎖かけただけだ！

ぽやんとした亜熱帯頭が零下３０度くらいに急降下する。
今ならバナナで釘が打てそう。

慌てて（いきなり足もとに出てきても踏んづけないために）
すり足で廊下を駆け抜け玄関のチェーンを外し、
マンションの通路へ出た。
・・・いない。
と目をあげた前にはエレベーターの扉。
（うちの玄関はＥＶの真正面。）

まさか、これに？！
や。でも､平日ならともかく、
休日のこの時間帯にこの階で乗り降りするヒトなんていないし。
開け閉めの瞬間に飛び乗るなんて
離れ業、どすこいなぐっちゃんにはムリだ。
只でさえＬＤＫからこっちには、ハムボールなしで
行けたことのないビビリ君なのに。

そうだ。まだ敵（？）は家の中だ。
それでもそぉ～っと玄関を閉めて､カギをかけると
自分の部屋でそろそろ這いつくばってるゆかちを横目に
お向かいのＰＣ部屋へ。
ケーブルは・・・と無事だ。
んじゃ、ここじゃないな。
こないだこってり絞ったことだし。
（あれはゆかちが連れてきたんだっけ）

・・てことは。
リビングの２８型ＴＶの裏のコードの束をくいっと
引くと・・・カサカサカサ

ビンゴ。

でも部屋の角っこにピタっとはまる格好のＴＶ台は、
滑車もついてない上に
木目調の合板製で表側からは裏がさっぱり見えない。
ゆかちを呼んで、
裏側に入り込んでもらおうと思ったら、
ＴＶと壁の間に詰まって入り込めない。
ぅぅ、こないだまで叱っても叱っても出入りして遊んでたのに
すくすく育ちおって・・・
どうやら彼はビデオデッキの置いてある台の下段の
さらに下のすき間にいるらしい。
不味い。（あそこは配線がとぐろを巻いておるぞ）
ゆかちが「まんま」（好物のペレット）を裏と
侵入路とおぼしきすき間に撒いてみるも
出てくる気配なし。
仕方ない。

「パパ～。悪いけど、ちょっとＴＶ持ち上げてくれん？
その間に台動かして、ぐっちゃん出すから。」
「ぇえ～？
だって、今ＴＶ見てるのに～－－」

・・・あに－－＃？
今ぐっちゃん出さなかったら、
ＴＶのコードはコード宿敵のぐっちゃんの餌食だよ！？
そしたら、今観てる大好きなＫー１どころじゃなくなるだよ！？
ぐっちゃんだって、感電死しちゃうだよ！！

こんの馬鹿もんぐぁああああ！！！

母は２８型ＴＶにがっぷりと腕を回した。
ぶちっとコードが外れる音がした。

ぐっちゃん、身柄確保。

その後
母がおとどさんに口をきかなかったのは
云うまでもなく。

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