Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2005/04/01
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カテゴリ: 映画・TV・演劇
 少し前に観た、「パッチギ!」という日本映画の話をしよう。ミステリー・サスペンス系以外、最近あまり邦画を観ない僕だが、この映画はミステリーでもない。一言で言えば、井筒和幸監督の青春映画である(「パッチギ」とは、朝鮮語で「頭突き」の意味)。

 それを、なぜ観に行ったかと言えば、社のある同僚が「**さん、きっと気に入るよ、この映画」と強く勧めてくれたから…。勧める理由を、彼は具体的には言わなかった。新聞や雑誌の映画評でもとても評判がいいことも知っていた。彼がそこまで言うならと思い、シネコンへ足を運んだ。

 「パッチギ!」は60年代後半の京都が舞台。主人公の康介は高校2年生、康介が一目惚れするキョンジャは朝鮮学校の生徒( 写真上 は、映画の1シーン  (c)井筒和幸 )。キャンジャの兄、アンソンは朝鮮学校の番長グループのリーダーだ。康介はキョンジャに一目惚れするが、兄や周囲の在日の大人たちは、日本人である康介自体を認めない。パッチギ!

 夜、鴨川の岸辺でフルートの練習をしていたキャンジャを、対岸から見付けた康介が、川を泳いで渡り切り、ずぶぬれになりながら愛を告白するシーンが、とてもいい。

 浅瀬に上がった康介に対し、「もしも結婚することになったら、朝鮮人になれる?」と問いかけるキャンジャ。この映画で、僕にとって一番印象的な、大好きなシーンだ(キャンジャ役の沢尻エリカが、とても可愛い!)。

 この「川」は、現実に横たわるいろんな「壁」や「差別」をも意味する(タイトルの「パッチギ」も、さまざまな「壁」に対する頭突きを意図して付けられたのか?)その「川」を必死で泳いで渡った康介。言葉であれこれ説明しなくても、このシーンはグッとくる。

 日本人高校生と朝鮮高校の若者たちの喧嘩や恋愛や友情を縦糸にし、在日朝鮮・韓国人たちが抱える様々な現実を横糸にして、織り上げた青春ストーリー。だからと言って、決して政治的な映画ではない。愛あり、涙あり、笑いあり。喧嘩のシーンがやや多すぎて( 写真下 (c)井筒和幸 )、くどいという感じもしたが、全体としては、見終わって爽やかな感じすら残った。パッチギ2

 個人的には、60年代後半の街の雰囲気がとてもよく描けていて、懐かしさで胸が熱くなった。映画のなかの音楽も、良かった。「イムジン河」「悲しくてやりきれない」など、当時流行ったフォーク・クルセダーズの名曲がちりばめられている。

 音楽監修も、そのフォークルのメンバーだった加藤和彦が担当(加藤自身、龍谷大学の学生として当時、京都で青春を送っていた)。ギター・バンドをしていた頃は、僕らも「イムジン河」などをレパートリーの一つとして、よく歌った。

 僕が生まれ、育った京都や大阪は、「在日」の人たちの割合がとても多い。朝鮮・韓国だけでなく、中国・台湾が出自の人もたくさん暮らしている。僕らの子どもの頃、親の世代にはまだなんとなく、彼らに対する根強い差別意識が残っていた。

 だが、中学や高校の同級生に「在日」の友だちが数多くいた僕らの世代は、そんな偏見もほとんどなく、ごく自然に、普通に付き合ってきた。卒業後も、同窓会などで変わらぬ付き合いを続けている。ただ一人の人間として、好きか嫌いかで付き合ってきた。それは日本人に対してだって、同じ。これからも、その気持ちは変わらない。

 「パッチギ!」は、「在日」という重いテーマを実に爽やかに、感動的に描いた秀作だと思う。10点満点で点数を付ければ、9点は贈れるだろう(1点の減点は、さっきも書いたが喧嘩のシーンがやや多すぎるところ)。もう映画館ででは上映していないだろうが、ぜひレンタル・ビデオででもご覧ください。





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Last updated  2005/04/01 11:16:46 AM
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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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