ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Feb 7, 2006
XML
「二人の敵とのウンポコごっこ」

 ワークショップで受講した二曲めはメンデルスゾーンのトリオ。メンバーは、ピアノがSue、チェロはBillという個性派ぞろいで、講師のNicole先生は、まさに猛獣使いのようなノリで第一楽章を見てくださいました。

 この曲、一小節を一拍で数えて、ぐんぐんノンストップで弾き切るのもいいのですが、ピアノの左手の四分音符を常に耳の端で聞き取る余裕がないと、絶対崩壊してしまいます(しました)。

 僕はいつもこの曲に挑戦するたびに、ピアニストとチェリストになぜか敵意を感じながら弾いてしまいます。かなり怖い顔して弾いてるかもしれません。でも、緊迫感あふれる曲の割に、随所にちょっとした通過ポイントがしかけられていて、そういう箇所を楽しみながら弾ければだいぶ変わってくることがわかりました。気に入ったのはずばり以下の二箇所。

 1) 曲が激しく盛り上がってる真っ只中に突如出てくる un poco rit(ちょっとだけ遅くする)。1楽章の中で2回出てくるのですが、1回めと2回めで三者の役割分担が微妙に違う。このウンポコ・トリックが何とも言えず小気味よい。うまく息が合えばの話だが。

 2) 弦の二人がユニゾンで優しくメロディを奏でるところ。何の変哲もない8小節のフレーズを調を変えて一緒に二回弾くのですが、強弱記号がピアノと書かれてるだけで、espressivo とも dolce とも何にも書かれてない。緊迫感に包まれた agitato な楽章のなかで、むしろ異様な雰囲気を醸し出している部分です。ブラームスのピアノ付き室内楽のように弦楽器どうしのユニゾンが多い曲だったら気にも留めなかったでしょうが、このトリオのなかで、チェリストへの敵意が失せる一瞬なのであります。

 メンデルスゾーンのトリオと言えば Op 66も捨てがたい(特に2楽章)ので、いつも悩むところです。ちょっとしたフレーズのオーバーラップ(メロディが終わりきらないうちに、別のパートが違うメロディを弾き始める)がメンデルスゾーンのトリオの魅力のひとつだと考えてます。
 何はともあれ、SueやBillのようなツワモノたちと一緒に今回この曲この楽章を弾けたことは非常にいい経験になりました(音楽以外の面でも)。どんなに激しい曲でも、他のメンバーへの敵意を捨て、寛大な心でもって落ち着いて弾けるようになるのが次回のトリオの目標です。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  Feb 7, 2006 08:31:51 PM
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

ピカルディの三度TH

ピカルディの三度TH


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: