ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Feb 11, 2006
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「こぶしの正しいきかせかた」

 指を負傷していて半年以上クラリネットが吹けずにいたシャーマンと、昨日久しぶりにモーツァルトの五重奏曲を練習した。ここ数年、モーツァルトやブラームスに共に挑んできた仲間だが、ついに練習を再開できることとなり感無量。新メンバーのマイクをセカンドヴァイオリンに迎え、僕はファースト、ヴィオラはジェーン、チェロはケーティー。
 この編成で集うときに必ずもめるのが座席の配置。個人的には、自分がどのパートを弾こうとも、クラリネットとチェロとが隣どうしにならずに、ステレオ感覚で左右から聞こえてくる並び方が好み。逆にブラームスの場合は、クラとファーストが必ず向かい合うべきというのが僕の意見。

 この曲を練習するのは久しぶりだったので、振り出しに戻り、全楽章一気に演奏してみた。前回と違う出版社の譜面を使ったが、強弱記号のみならず音も全然違う箇所がいくつかあった。
 気になったのは第三楽章。トリオが二つもあるのだが、一つめはクラリネットがお休み。となるとファーストがこぶしをきかせるべきか? 二つめのトリオで、音がぶつかって不協和音になるとことか、意外なコード進行が出てくるとことかも、どうもすっきりしない。そういう箇所をあんまり強調しすぎずにさらっと弾くべきなのかがよくわからない。
 そもそもこの楽章、リピートとかダカーポが満載なので、自分が落ちて他人にご迷惑おかけしちゃマズいので余計に緊張してしまう。でもって、やっぱりそういう場所で五人のうちの誰かが必ず落ちる。自分もたまに迷子になるけど、他人が落ちるのは許せない(笑)。

 第四楽章は、変奏曲のくせして各パートに均等に主役の座が廻ってこないから、セカンドやチェロ奏者は腑に落ちない。なんといってもこの楽章のハイライトは第三変奏のヴィオラソロ。日本人のこころに深く染み入る哀愁の演歌風。以前にレッスンでこの曲を指導してくださったDavid先生によると、プロの方々の間ではこの部分は一種の「びよらジョーク」として扱われ、わざと音を外したり、ポルタメント入れて泣きを入れたりするのが流行ってるらしい(本番でやるのかどうかは不明)。ほかにファーストやクラリネットにも「こぶしポイント」がいくつか見られるのだが、この第三変奏のこぶし付きびよらジョークほどの芸当はなかなかできない。

 クラリネットが弦楽四重奏に加わると、全体の響きは当然のように著しく変わる。どう変わるのかはうまく言えないけど、思いつく言葉を並べてみると、(いい意味で)朴訥、懐古、田園、無垢、柔和、など。だから、そういう雰囲気を壊すまいと、ビブラートのかけ過ぎに気をつけたりとか、へたに出しゃばり過ぎないようにしたりとか気を遣うのは大切だと思う。でも、「まったり」し過ぎた丸っこい演奏になっても困るし、やっぱり時にはこぶしをきかせて、スパイスも加味された、それでいて温かいユーモア感の漂う演奏ができるようになりたいものです。





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最終更新日  Mar 18, 2006 12:31:22 PM
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