ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

May 5, 2006
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「ボンの青年」

 いつもソナタを一緒に弾いてくれるピアノのセスさんは、ほんとはピアノ三重奏を定期的に練習したいそうで、チェロ奏者探しに奔走している。
 先月はエーブリーさんという超お上手なチェリストと合わせてみたが、僕が至らなかったためか、ご本人はなかなか二回めの練習の誘いに応じてくださらない(笑)。
 でも、セスは諦めず、どうしてもメンデルスゾーンのトリオを弾くんだいと鼻息を荒くして、あらゆるツテを頼って、今日はクリスチャンさんというチェロ弾きを見つけてきた。

 クリスチャンは、ドイツ生まれ。「鉄のカーテン」の東側での幼少時代のこととか、その後の西側での半生とか、ボソッとだけど興味深い話をしてくれた。今はニューヨークの某名門大学で理工系の教授をなさっている。なんか、またもやスゴイ人と弾くことになっちゃった。

 で、早速、前回エーブリーとも弾いた ベートーベンの1番(変ホ長調) 3番(ハ短調) を通してみた。そしたら、クリスチャンはこれらのチェロ譜をほぼ暗譜していた! ベートーベンの故郷ボンにもしばらく住んでたそうで、おそらく楽聖への誇りが為せるワザかとも思ったら、弟さんがバイオリン弾きで、あらゆるピアノ三重奏曲を家族で弾きまくっていたとのこと。

 あっけにとられたけど、曲を熟知なさってる方と一緒に練習するとほんとに勉強になる。ちょっとした間の取り方とか、さすが。

1番(変ホ長調):  1楽章は、バイオリンはバイオリンらしい明るい音色で、チェロはチェロらしい暖かい音色で表現できれば、実にチャーミングな曲に仕上がる可能性を秘めてると感じた。奥深い曲。
 2楽章は、ノスタルジックな曲想なので、若造の(?)僕にはまだまだ無理か。
 例の4楽章最後のほうのバイオリンの難所(10度の跳躍=♭ミとソ)はやっぱり音を外してしまった。慌てる僕を見て、セスもクリスチャンも苦笑い。「無理して10度上のソに跳ばずに、3度上のソを弾けば?」などと言って僕をからかう。ちょっとムカついた(笑)。

3番(ハ短調):  3楽章のメヌエットが意外にトリッキーで焦った。
 4楽章は、短調だからといって下手に重くなりすぎずに楽しく弾いたほうがいいという結論になった。狂おしく盛り上がる部分もあるが、最後のほうで結局長調になって、なんとピアニッシモで静かに終わる。しかも、弦の二人はドではなく、ミとソで終わる。主音のドを弾くのはピアノだけ。なんとも物足りない微妙なエンディング。青年ルートビッヒの「作品1」にしては、あまりに渋すぎ。





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最終更新日  May 7, 2006 12:18:02 PM
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