ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Dec 9, 2006
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「シャンデリアの下のビオラ弾き」

 お金持ちマダム、シャロンさん(ビオラ弾き)の豪邸にお茶に招かれました(通称「サロン de シャロン」)。
 ついでにクリスマスの祝いも兼ねて、音楽仲間が楽器持参で集い、彼女と一緒に一曲演奏しました。曲はご夫人お気に入りの、モーツァルトの五重奏曲ハ長調。(第1バイオリン:僕、第2:ジャネット、第1ビオラ:トム、第2:シャロン、チェロ:ケイティー)

 余談ですが、このおばさま、その人脈と財力を利用して、数年前ニューヨーク市内で、アマチュアによる本格的な合奏団を作ろうと試みたことがあるほどの方です。しかも指揮者はご自分の 愛人 (年下。某バイオリニスト)。
 実際、リハーサルをするところまで漕ぎ付けました。僕にも声をかけてくださり、そのうえコンサートマスターに任命してくれたり、バッハの協奏曲の独奏を弾かせてくれたりと、身分不相応にも彼女には可愛がっていただきました。そのプロジェクト自体は企画倒れに終わりましたが、正直言ってホッとしてます……。

 さて、マンハッタン一等地の高級マンションの一室で、ハイソな家具や食器に囲まれながらのモーツァルト。このきらびやかなシャンデリアの下で弾く室内楽は、さすがに響きが違います……。

 僕は五重奏を弾いた経験はあまりないのですが、四重奏にビオラが一人加わるだけで、これほど雰囲気が変わるものかと痛感しました。

 顕著なのは、バイオリンの二人がオクターブで動くところが多くなるということ。これは二者のわずかな音程のズレが目立ってしまうということでもあり、油断は禁物(笑)。


 ……っていうか、同じことを楽器を変えて五回も繰り返すとなると、普通だったらクドくなってしまうはずなのに、そのあたりの処理が実にうまい!

 一例としては、1楽章後半に出てくる、4小節からなるフレーズのフーガ。前の人が弾き終わらないうちに次から次へと別の人が土足で入場してくるような場面ではありますが、「計算されつくした混沌」という雰囲気がたまらない。

 3楽章(アンダンテ)では、第1バイオリンと第1ビオラが 協奏交響曲並みの修羅場 をくぐるとこがあって、僕もトムも冷や汗をかきながら弾きました。
 そしてそのぶん、終楽章(4楽章)は心底楽しまなきゃという気がします。奇しくも同じ調性の「不協和音」四重奏曲の終楽章にも似て、楽しんだもん勝ちという感じ。

 ウィーンやザルツブルクとかに生まれなくても、貴族の血が流れてなくても、お金持ちじゃなくても、誰でも存分に楽しめるのがモーツァルトの魅力なんだと改めて感じた一日でありました。(←ひがみ?)





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最終更新日  Dec 13, 2006 12:36:26 PM
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