ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Jun 11, 2008
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「泣きっ面に蜂」

 カルテットの練習をした。自分 (vn1)、マリリー (vn2)、エレン (va)、マルディ (vc) というメンツ。

 このK590はモーツァルトの書いた最後の四重奏曲。つまり、もしかして最高傑作なのかも?と、過度に期待して挑戦したわけだけれども、その割にイマイチ。
 ただ、彼のカルテットのなかでは一、二を争うほど難しいのは事実。なんか損した感じ。

 ベートーベンのような険しさをも匂わせ、ところどころに憂いさえ漂っている。モーツァルトとベートーベンの最後の四重奏曲がともにヘ長調というのも単なる偶然か。

*****

1楽章 : 彼自身のクラリネット五重奏曲を彷彿とさせる難度。楽器の受け渡しや上昇/下降のフレーズとか。冒頭の二分音符を弓をアップで始めるかダウンで始めるかで悩んでしまうとこまで似てる。
 曲の終わり方がどうも気に入らない。何度も繰り返して合わせてみたけど、結局納得いく弾き方はできなかった。尻切れトンボ的。

2楽章 : アンダンテなのかアレグレットなのか不明。この楽章もあんまり遅めに弾かないほうがいい。平和なハ長調音楽を、8分の6拍子で表現するってのも渋い。冒頭の弓づかいで再び大討論。

3楽章

4楽章 : 難しい……。ハイドンみたいに快活に弾かなきゃ全く意味のない曲なのに、音の粒を揃えるのに手こずる。ファーストだけじゃなく、四者それぞれに難所が廻ってくるのは公平でよろしいんではないかと。
 四人で泣きそうな顔をしながら、コ難しい半音階だの装飾音符だのトリルだのと格闘。
 細かく小刻みに動いたり、かと思ったらフェルマータで「ひと休み」するとこもあって、ブーンと蜂が飛んでるようにも聞こえる。低音のうなり音もあるし。

*****

 結論。すごく変な曲。収まりの悪い転調攻撃とか唐突の和音進行とか。なんかの音が抜けている、あるいは余計な音が入ってるような気がして落ち着かない。モーツァルト特有の爽快感を演出しにくい。
 僕ら四人の意見が珍しく一致。封印ご決定。

 天性の才能にまかせて筆を進めたというより、むしろ、悩みながら、考え抜いて、苦し紛れに、強引に完成させた曲? ウォルフィー最後のカルテットがこれでいいのかとさえ思ってしまう。

 彼のカルテットに目覚めて20年、この「最後の曲」に自分が挑戦する日が来たなんて感無量だし、それだけで涙モノ。でも、好きか嫌いかと問われたら、おそらく僕は「嫌い」と答えてしまうのではないかと。

beehive.JPGニューヨークの鉄道駅構内にある「蜂の巣」シャンデリア。





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最終更新日  Jun 14, 2008 07:36:47 PM
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