ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Apr 9, 2009
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 そしたらなんと、ゲネプロを公開してるとのこと。地元の小中学生を対象としたシカゴ市の文化振興活動の一環なのだとか。
 それならばと、慌てて地元の小中学生の格好に変装し?一緒に見学させてもらうことにした。←てゆーか、事務局のお姉さんに駄々こねて。

 ちなみに、シカゴのアウトリーチ活動は本格的らしい。こうやって若い世代にホンモノの芸術に触れさせるのは長い目で見るととぉーっても大切なこと。ヨダレが出るような豪華な内容で、しかも頻繁に実施してるらしく。

 で、良い子のみんなと一緒にお行儀よく熱血グスタボお兄さんたちのリハーサルを見学。演目は チャイコ交響曲4番 カステヤーノス「パカイリグアの聖なる十字架」
 以下に気づいたことを箇条書き。はっきり言って本番を聴くよりもずーぅっと面白かった。

■とにかく大所帯。リハ中も頻繁に座席の配置を確認し、何度もチューニングする。第1バイオリンは全部で26人/13プルト(普通のオケは16人?)。第9プルトから内側に入る。観客側最後尾のプルト(=8プル)ですらヤマ台なし!

■バイオリンパートのピチカートがよく鳴る。単に大編成だから?
■大編成なのに pp がいい感じ。
■譜めくりもお上手。プルトごとにずらしたりして、極力雑音を立てないように努めてる。100人以上が乗ってるオケにしては奇跡的な静けさ。
■弓の位置や使う量がちゃんと揃ってるし、なにより弓の上げ下げが大きくて元気がいいので、見てて気持ちがいい。若いって素晴らしいっ。
■チャイコ2楽章では旋律をたっぷり歌わせる、いわゆる「ドゥダメ」カンタービレ奏法。
■3楽章では指揮者もコンマスも敢えて引率してなかった。彼らは静止したまま、オケの自主性だけで演奏してた感じ。なのにビシッと揃ってる。
■全体的に木管の首席らが率先して縦の線を合わせてるご様子。確かに、これぐらいでかいオケになると、指揮者の近くに座ってるコンマスが主導するよりも、位置的にもオケの中核にいる彼ら四人の裁量や機転がかなり大切な要素。

 そんなこんなで、とにかくこの若人ら、タダモノではないことは一目瞭然だった。芯の太い土臭い演奏というか、妙な細工をせずに直球勝負なとこには心を打たれた。
 僕の席の斜め前に座ってたお嬢さんなんて、あまりに感動なさったのかいきなり涙を流し始め、やがてそれは号泣へと変わっていった。激しく鼻水垂らしちゃって。

 僕も最初は呆気にとられて聴いてたけど、やがて彼らの魔術のからくりがわかってきた。


 実際、部分的に練習するときも、ドゥダメル氏は「じゃ、練習番号Mの3小節前から」などとは決して言わない(どーせ彼はスコアは使ってない)。そのかわり、「フルートが入ってくるとこ」とか「ビオラのトレモロが始まる1小節前」みたいな指示の出しかたをする。そして、オケ全員がそれがどこを指すのかちゃんとわかっている。

 天才お子ちゃまエリート集団という感じではなく、そのへんにいるただの純情少年/少女という感じなのも好感が持てた。この子たち、けっこう落ち着きないし。
 チェロの少年は野球帽を普通にかぶるべきか後ろ向きにかぶるべきか悩んでて、オーボエの少女はお気に入りのイヤリングが外れてしまい泣きそうな顔してる。
 バイオリンの弦が切れてしまった少年のプルトの周りでは、みんなで我こそはとこぞって替え弦を提供してたし、暇そうにしてるラッパ少年はカメラ小僧と化し、リハ中ずっと撮影してた。客席の我々に向かってもカメラを向けたり。

 結論。

 そして、このオケの場合、ほかのオケと同じ土俵で論じたりつべこべ批評するのではなく、可能ならナマで聴いてその瞬間を存分に楽しむのが一番かと思った。

0409openrehearsal2.jpgドゥダマニア増殖中

追記 : そういえば、ドゥダメルがまだ知名度の低かったころ、彼の振るシカゴ響を僕はたまたま聴いてたのだけれど、僕ってば そのときの日記 でドゥダメルのブレイクを見事に予言していた。おぉ、偉いぞ、オレって(笑)!





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最終更新日  Apr 14, 2009 10:21:10 AM
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