現在形の批評
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『シアターアーツ』の最新号が25日に刊行されます。 表紙は、岡山県犬島で公演された維新派『台湾の、灰色の牛が背のびしたとき』の写真。抜けるような空と、人力によって組み立てられた巨大な舞台装置との対比が美しいです。(写真=装丁・デザイン 奥秋圭) 海外公演を含め、独自の上演を続ける維新派が象徴するように、今号の特集「外への志向/思考」は、まさにトーキョーの演劇状況をいかに批評し、内破することができるか、その可能性を問うものです。 この1年間、東京で上演される舞台をかなり定点観測してきました。 「静か」と形容された平田オリザ提唱の現代口語演劇は、ゼロ年代の若手演劇人に思わぬ形で波及し、様々なスタイルとなって継承、発展してきました。 その雰囲気は、私にとっては「イベント」と呼べるものです。東京の若手集団の舞台に接し「イベント」的演出が採られた劇空間に多々遭遇しました。つながりを求める者達による同期的なノリは、居心地の良さを提供します。同時に、それを演劇と言って良いのか、疑問に思うのです。 そこには、演劇を問う思想が欠如している。グローバリズムの世界情勢に呼応したジャンル横断、と言えば聞こえは良いけど、それはただ単に世界の表層をなでたものでしかない。なぜ演劇なのか、なぜ表現するのかという声が、バイアスを伴ったものとして聞こえてこないのです。 AICT賞授賞式に合わせて行われた「シアタークリティック・ナウ2010」のシンポジウム記録「脱出せよ! 日本演劇」では、佐野碩と野田秀樹という、世代は違えど世界へと活動を広げた演劇人の軌跡が語られます。 特に、野田氏自身の口から語られる『赤鬼』や『THE BEE』といった国際共同制作で経験した出来事は、1人の演劇人が孤独に格闘したなまなましいドキュメントとなっています。 関連論考としては、堀切克洋の「地理的な外部/歴史的な外部――フェスティヴァルの功罪を中心に」が興味深い示唆を与えてくれます。また、文化が内向きに閉じ続ける大阪の劇場状況を報告する畑律江「大阪の演劇環境は今――精華小劇場などをめぐって」も、特集と関連したものと言えるでしょう。 上演テクストとして掲載した岩崎正裕『S小学校の眠らない夜』は、そんな大阪の文化行政に対する明確な抵抗であり、演劇人の矜持のこもった作品です。 また、大野一雄、つかこうへい両氏の追悼も掲載しています。前号の井上ひさし氏に続き、今年は演劇史に燦然と輝く足跡を残した芸術家が相次いで逝去されています。今月も、黒テントの創立者の1人である、劇作家/演出家の山元清多氏が死去されました。すでにアングラ革命から40年以上が経過。演劇革命の志は一体どこへ? という思いがします。 小劇場時評では、イキウメ『プランクトンの踊り場』・快快『SHIBAHAMA』・悪い芝居『らぶドロッドロ人間』を取り上げました。特に、クラブカルチャーと同質的な舞台空間ながら、それとの差を示した快快『SHIBAHAMA』は、収穫でした。 もろもろ、盛沢山な内容です。是非ご一読下さい。 ジュンク堂もしくは紀伊国屋、あるいは[第三次]『シアターアーツ』HPからお求め下さい。 ▽▽▽ [第三次]シアターアーツ 2010秋 44 目次 特集・外への志向/思考 [座談会] 脱出せよ! 日本演劇 内田洋一×野田秀樹×扇田昭彦×野田学(司会) [論考] 「外」は消えたか?――『三月の5日間』と『夢の泪』 新野守広 地理的な外部/歴史的な外部――フェスティヴァルの功罪を中心に 堀切克洋 米軍基地を背に「平和」を訴える演劇祭――キジムナーフェスタ二〇一〇報告 梅山いつき [インタビュー] さいたま芸術劇場の冒険 佐藤まいみ 聞き手=西堂行人 [連載] [舞台時評]『夢の痂』・『ムサシ』・『天保十二年のシェイクスピア』、『 峯の雪』、『キャンディード』 高橋豊 [演劇時評]物語の紡ぎ方――救済/虚無/倦怠 嶋田直哉 [小劇場時評]「わたしはここにいる」の言い方/示し方 藤原央登 [ダンス時評]もし、一生で一度だけダンスを観るとしたら 上念省三 [関西からの発言]劇場への愛情 九鬼葉子 [世界の演劇]ロシア演劇 二〇一〇年 安達紀子 [地方からの発言]創作の場と制作の場――南東北地方の演劇活動を中心に 星野共 [舞台人クローズアップ]演出家としての千葉哲也 江森盛夫 [書評]『劇作家 ハロルド・ピンター』喜志哲雄 著 松岡和子 [書評]『岸田國士の世界』日本近代演劇史研究会 編 正木喜勝 [追悼]大野一雄 舞踏と生命――大野一雄氏を悼む 岡本章 肉体とは、魂が羽織っている宇宙だ 立木あき子 「舞踏ファーザー」大野一雄さん、さようなら 原田広美 大野一雄 略年譜 [追悼]つかこうへい 狭間を越えて 金守珍 日本は今大きく病んでおります――つかこうへいが残したもの 西堂行人 [劇評] 〈メタ〉より〈ベタ〉――椿組『天保十二年のシェイクスピア』 大塩竜也 呼応する生――『閃光のスフィア レクイエム』 岸沙織 [論考]劇場と制度 劇場と芸術監督 柾木博行 大阪の演劇環境は今――精華小劇場などをめぐって 畑律江 [上演テクスト] 劇団太陽族『S小学校の眠らない夜』作=岩崎正裕 インタビュー――岩崎正裕 聞き手=西堂行人 △△△
Sep 25, 2010