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社会的弱者として切り捨てられてきた彼らのくぐもった声が、決して声高にならない無気力による悪意であることも特徴的だ。五反田団に見られる「イヤー」な感触はまさにその悪意とシニシズムの具体的な産物だろう。そこでは徹頭徹尾『非従順』であり、拘束や命令に「非同意的」である。つまり何かに積極的に反対するのではなく、拒絶し遁走することにおいて、メタメッセージを送るのである。それが資本主義構造をも食い破るかもしれないという可能性が述べられている。前田のシニカルな笑いが先の文脈でいうところの「イヤー」なものなのであるが、群れとなって凝り固まった生態をただ晒すだけでなく、このように生理的な揺さぶり以上に「大人」達にとって脅威とならなければ先述したように一蹴されるだけである。そうならないため、相手の懐に入って舌を出すくらいのしたたかさと行動力が必要である。それが、私達の世代の真摯な眼差しと戦略的な反-制度への一手となるのではないか。だからこそ、遁走という選択肢はまずいだろうと思うのだ。
『シアターアーツ』 2007年冬号