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人生朝露
荘子がいるらしき場所。
荘子であります。
今日は荘子のいる場所について。荘子というと、「道教の祖」としてしられていますので、その辺を。
道教って何だ?と問われると、非常に難しいんです。
中国の民間信仰の総称と大枠でとらえるのが普通かなと。
『論語』に有名な、
「子不語怪力亂神。」(『論語』 述而第七)
→孔子は怪異、暴力、變亂、鬼神について語ることはなかった。
「樊遅問知、子曰、務民之義、敬鬼神而遠之、可謂知矣、問仁、子曰、仁者先難而後獲、可謂仁矣。」(『論語』雍也第六)
→樊遅は知について質問した。孔子はおっしゃった。「民の義に務め、鬼神を敬いながらも遠ざける、これを知という」。ついで、仁について問うと、孔子はこうおっしゃった。「仁者はまず難事を先にし、後に報酬を得る。これを仁という」。
という言葉がありますが、儒学においてはオカルトや神秘思想というのは、まさに「敬遠」の対象であります。『魏志倭人伝』で「事鬼道 能惑衆」(鬼道を事とし、能く衆を惑わす。)と、魏の史書に卑弥呼の鬼道について否定的に書かれてあるのも、儒教的な姿勢の表れでしょうね。
とはいうものの、孔子自身がシャーマンの家系であるし、儀礼的な祭祀や、先祖崇拝は、孔子の思想においても重要なものでもあるわけです。で、道教と言われるものは、儒教によって除かれた民衆信仰や神秘思想の総称というような扱いが一番手っ取り早いかなと思われます。
日本の場合、道教の流入というのは古墳作っているころから明白にありまして、『日本書紀』の冒頭は『淮南子(えなんじ)』や道教の経典からの丸のまんまのパクリですし(ま、聖書の創世神話だって、もとはメソポタミアの神話のパクリ)、日本人の世界観には当然のごとく陰陽五行説が織り込まれているわけです。
参照:中国創世記と日本創世神話
http://www2s.biglobe.ne.jp/~t-sato/genbu.html
たとえば、
キトラ古墳に、青龍(東)・ 朱雀(南)・白虎(西)・玄武(北)の絵が描きこまれていましたよね?ああいうのも道教的なものです。
たとえば、最近発見がありました牽牛子塚(けんごしづか)古墳には八角形をしておりますが、
これとかは、
風水とかで使われる「八卦鏡」と同じ意味なんですよ。
参照:Wikipedia 八角墳
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E8%A7%92%E5%A2%B3
平安時代の陰陽道であったり、修験道であったり、日本では神道に属するものの中に多く見られるものも、道教がベースになっています。吉田神道とかは、モロ道教ですしね。こういった世界観というのは、見えないようでいて確実に存在していて、風水学的な見立てが日本において京都や東京の都市構造に反映されていることにも表れています。京都御所の鬼門に比叡山、裏鬼門に岩清水八幡宮、江戸城の鬼門には神田明神と、寛永寺があるとかいう、そういう話です。特に、江戸の都市計画に天海がからむとほとんどが陰陽道と風水ですね。この辺に詳しいのはなんといっても荒俣さんの『帝都物語』ですが、これは、そのものを読みましょう。
参照:Wikipedia 四神
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E7%A5%9E
四神相応
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E7%A5%9E%E7%9B%B8%E5%BF%9C
陰陽道
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B0%E9%99%BD%E9%81%93
・・・日本版のWikipediaでは、最近のアホナリズムの高揚の影響で、陰陽道も風水も日本で独自に発展した云々と韓国の二流紙のような記述になっておりますが、いつものように独自、独自というばかりでなんら根拠はありません。特に神道と道教で重複している部分はだいたいが、こんな感じですね。
今や、日本の自称保守に読むべき本は?と聞いて古典を答えるヤツがいない時代ですよ。原点に戻る前に原典を辿らない時代ですよ。目覚めたのがマンガ。最新の情報はネットの真実(笑)。神社で現世の利益を祈願すれば保守とか、靖国で軍服のコスプレすれば保守とか、もう何でもありです。むしろ違いを強調するばかりに基本をおろそかにするという、馬鹿の王道を走っているだけと思えますね。他人に迷惑かけないんなら、どうぞ走りぬいてくださいと申し上げておきます。道教というのは、インドの思想と同じようにまさにごった煮の状態なので(明治以前のまっとうな神道も)、とても今時の学者が一朝一夕には把握しきれるシロモノではないのですが。
これを見るだけでも、羅針盤を発明したのはやっぱり彼らだな、と思い知るわけですが、このベースにあるのは『易経』なんですよ。
参照:Wikipedia 易経
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%93%E7%B5%8C
今でもその名残をとどめているのは囲碁でしょうね。
将棋はインド発祥だと思われますが、囲碁は中国です。もとをただすと陰陽の調和の変化の乱れを占うものが、ゲームとして残っているものなんですが、実際にやってみると将棋とはまた別次元のものです。実際、チェスや将棋の場合、コンピューター戦では人間が負けるということがままあるんですが、囲碁だけはなかなか人間に勝てないんです。なぜかというと、人間の直観に依存するゲームだから。でして、コンピューター囲碁がモンテカルロ法を導入してやっと人間の有段者と同レベルを維持していることにも、如実に表れています。頭の使い方が違うんですよ。
参照:Wikipedia 囲碁の歴史
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%B2%E7%A2%81%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2
コンピュータ囲碁
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E5%9B%B2%E7%A2%81
ユングが、『易経』に魅せられたり、『老子』『荘子』を熟読したりしているのも、東洋思想のなかにある内的世界と外的世界における対立と総体的な均衡に対して強く惹かれたことが起因しているのだと思われます。易経を単なる占いの本として読むと、思いっきり足をすくわれますよ。
参照:ユングに易を伝えた宣教師・ヴィルヘルム
http://www.moritaken.com/goroku/goroku01/02.html
当ブログ 荘子と進化論 その45。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/diary/201004060000/
易経(I Ching)に対する興味は、いまだに継続しています。
参照:YouTube iching
http://www.youtube.com/watch?v=Al79CyXGT8U&feature=related
ユングの『黄金の華の秘密』というのは、『太乙金華宗旨』という道教の書物ですが、内丹法という呼吸、瞑想法を中心に描いたもので、秦の始皇帝が不老長寿の霊薬を求めたり、墳墓に水銀の湖があったりするという錬金術のような、いわゆる疑似科学的なものもあります。道教関連の書物をむやみに触れることはおススメしませんが、道教のなかにある東洋の神秘思想のコアの部分にユングがどう触れたのかというのを見るには面白いものだと思います。ちなみに著者は呂洞賓(りょどうひん)と言います。今では酔拳でも筆頭にあげられる仙人として有名になってしまいました(笑)。
参照:ジャッキー酔拳演舞
http://www.youtube.com/watch?v=90rYTv2tuVU
・・・東洋の神秘思想に関する書物では、インドの『ウパニシャッド』、『バガヴァッド・ギーター』、チベットの『死者の書』、中国で言うと『易経』『老子』『荘子』あたりが突出して評価の高いものなんです。
たとえば、老子の『道徳経(Tao te Ching)』とかは、西洋で読まれる場合は、モロ神秘思想です。
参照:Tao te Ching (pt.1)
http://www.youtube.com/watch?v=1BSiZQqlg5E
The Tao te Ching (pt. 2)
http://www.youtube.com/watch?v=lPWY-fFCbRc&feature=channel
The Tao te Ching (pt. 3)
http://www.youtube.com/watch?v=hyzAmP3B8vU&feature=channel
漢文でも習うものなんですが、西洋ではこう読むんですよ(笑)。
で、荘子はどうなのか、というと、神秘思想としての側面は多分にありますが、宗教的迷妄であったり、オカルト的な解釈はできそうにないですね。「試しに妄言を言ってみよう」とか「世迷言だと思って聞いてくれ」とかいちいち入れていますからね。夢とうつつのあわいでないと読める構造になっていませんし。老荘思想という呼び名も、道教と一線を画するためには必要な呼び名だと思います。もちろん、荘子が後の道教に影響を与えた人物であることは間違いないですが、道教に関連する思想家の中でも、抜群に優れた書物だから荘子が座らされていると考えるほうが自然だと思われます。
参照:Zhuangzi shuo Chuang Tzu Part 2c
http://www.youtube.com/watch?v=mW3OvQu-pxc&feature=related
このへんでふらふらしているのがこの人ですよ。そういう態度で今後も進めます。
今日はこの辺で。
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