おっさんが鞄に入っていた理由は分かったけれど、どうして私に付いて来たのかもよく分からないし、おっさんが何者なのかについては、見ての通りこういうモンやと言われても皆目見当がつかない。
「だからね、見ての通りってのが訳分んないんだけど。とどのつまりあなたは何?」
「だからこういうモンや言うてるやないかっ」
おっさんは少しキレ気味だった。
「こういうモンって言われても・・・人間じゃないよね?」
「当たり前や、どこをどう見たらワシが人間に見えるんや。お前、大丈夫か?見た目は人間に似とるか知らんが、サイズが全然ちゃうやろ」
「じゃあ、妖怪? それとも宇宙人?」
するとおっさんは呆れた顔でこう言った。
「出たー、人間の分類グセ。お前らは何かつーとすーぐ分類したがる」
「分類? そんなんじゃなくて、私はあなたが何者なのか知りたいだけなの」
「だから、こういうモンや言うてるやないか」
埒が明かない押し問答に、私も少しイラついてきた。おっさんが何者なのかハッキリしないことに腹が立つ。というか、あれ? 最初はおっさんが不気味で怖かったのに、今はその気持ちが薄れている。いつの間にか、何者か知りたい好奇心の方が恐怖に勝ってしまったらしい。
「だからー、こういうモンじゃなくて、私は人間、じゃあ、あなたは何?ってこと」
「それを分類つーんじゃ、ボケェ。じゃあ、お前に聞くけどな、アフリカのサバンナでライオンがゾウを見たとしよう。ライオンは『自分はライオンだが、あれはゾウだ』とか思うか?」
「え、思うんじゃ・・・ない?」
突拍子もない問い掛けに戸惑う私に、おっさんは間髪入れずに突っ込んだ。
「アホかぁ、思うわけないやろ。ライオンの頭ん中に『ゾウ』なんて単語あるか? そんなん、ないで。言っとくが、『エレファント』もないし、哺乳類だ、草食動物だなんて分類もない。ライオンは見たまんま、あれはあれだと判断するだけや。いちいち見たモンを言葉に変換して分類したりせぇへん。お前らだけや、これはライオン、あっちはゾウ、ここは日本で、アフリカはよその国とか言うやつはな。だいたい人間ちゅうんは、この星に勝手に線引いて切り刻んで、土地や海に名前つけるだけならまだしも、ここは俺のとこだとか、欲しいから戦って奪うとか金と交換だとか訳分らん。全部、誰のモンでもない。陸も海もただそこにあるっていうだけのモンやろが。それが見たまんまゆうこっちゃ。なんや、話がずれてしもうたが、要はいちいち名前つけて分類せんでええねん。見たまんまを受け入れろっちゅう話や。お前らは目に見えんモンも信じようとせんし、見えとっても自分の知識で判断できんモンは信じようとせん。悪い癖や。ワシはワシ。ワシは見たまんま、こういうモンどすぅえぇ」
おっさんは思い切り語尾を伸ばしながら、人の神経を逆撫でするような甘えた声で言った。
私はおっさんが何を言っているのか良く分からず、ますますムッとした。 (続く)
※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。
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ご訪問、ありがとうございました^^
珍しく、今回はちょっと早めのブログ更新できました~w
それはともかく、
横浜生まれの横浜育ち、基本的には標準語の私。^^
おっさんの関西弁もどきに、妙な所があってもどうかご勘弁くださいませ。
あ、今は私、愛媛に住んでいるので伊予弁が混ざることもあろうかと。^^;
物語に出てくるおっさんは、関西出身ではなく
各地を旅してさすらううちに大阪の水が合ったのか
居心地よくてしばらく大阪に居付いていたという設定。
なので今後行った先の言葉があれこれ混ざることもあるでしょう。
(なんて都合のいい設定!笑)
緑のおっさん=尼崎のゆるキャラ ちっちゃいおっさん
(※尼崎市非公認)という
イメージの方もいるようですが、それも「アリ」、そうでなくても「よし」です。
「小さいおじさん」等で検索すると、都市伝説的なものを始め様々な情報がヒットしますが
それらは私が書く「おっさん」でもあり、そうでもなかったりww
みなさんも自由に発想してください。
それぞれのイメージする「おっさん」をお楽しみいただければ幸いです
それではまた次回、お時間がありましたら、お付き合いくださいね。(*^^)v
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