ヨカッタ探し

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September 9, 2007
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カテゴリ: 読書ろぐ

恩田陸  『蒲公英草紙』 (集英社、2005)
<あらすじ>


恩田さんの作品の中でも、 『光の帝国』 は特に大好きで、
何度も読み返しては、涙ほろりとしたり、
じーんとしたり、ハラハラする大好きな作品です。
不思議な能力を持ちながらも、権力を求めず、
ふつうの人々の中に溶け込んで暮らしている常野一族の話。

と思わせるような後引き度がたかーい作品もあって…
なので、続編が出る!と聞いた時は、ついついそちらの物語を
イメージしてしまいました。

常野の第2作は、膨大な記憶を「しまって」、それを「響かせ」る
ことができる、春田一族が出てくる物語、でした。
春田一族も好きなので、これはこれで楽しめたのですが、
第3作 『エンド・ゲーム』
「オセロ・ゲーム」の拝島親子は描かれているので、
わたしとしては、次はぜひ、「黒い塔」の亜希子の物語を
書いて欲しいなぁ、と思うのです。

「黒い塔」のラストに出てくる三宅篤は「二つの茶碗」での主要人物。
そして、「黒い塔」を読む限り、亜希子は常野の中で
大きな役割を果たすべき人物のようなのですから。
これは続きが気になって仕方がない。
でも、もしかすると、亜希子の物語は最後なのかもしれないなー。



本題の『蒲公英草紙』の感想です。
春田一族も出てきますが…あの戦争の前、時代のうねりを
どこかで感じながら、一生懸命に生きた人々を描いた作品。
人の優しさと強さ、そして、愚かさ…。
読んだ後、「今」をしみじみと考えてしまうような、そんな物語でした。
穏やかな物語なんだけど、悲劇に向かって進んでいくのが
はっきりとわかるので、柔らかい情景が描かれれば描かれるほど、
少女の聡明さ、優しさが際立つほど、切ない気持ちになりました。

「僕には分かる。君のような人間が、吾が国をこれから
世界の一等国に引きあげるだろう」
「けれども、同時に、君の一途さ、無垢さが、吾が国を地獄まで
連れていくに違いない。僕にはそう思えてならない」

おそらく、わかりやすく悪いものだけが、間違いを犯すのでは
ないのだろうな~と思います。
正しいものでも人を傷つけることがあることを知った今では。
それを知ったところで、いつも一番良い答えを導けるわけでは
ないのですが…。
わたし達は自由にどこまでも行ける、世界は確かに広がったけれど、
その分、誰かと一緒に生きている感覚を持ちにくくなったのかもしれない。
”みんな一緒に作っていく”ような何かが、本当にあるのだろうか??

…読み終えて、そんなことをぼんやりと考えてしまいました。





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最終更新日  October 5, 2007 11:48:09 PM
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