プレリュード

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2006年01月21日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽

リヒャルト・ワーグナー(1813-1893)のオペラはどれも演奏時間が長く、いかに音楽に魅惑されると言っても全曲を一気に聴き通すのは難しいのが、私の常なるこの人のオペラ・楽劇作品の体験の最初の難関です。 音楽に浸っている最中に電話がかかったり、宅配便が届いたり、来客があったりすると緊張の糸が切れてしまうことが、過去にも随分とありました。聴き直すことが難しく、途中でやめてしまうことが何度も何度もありました。

買ってきたばかりのCDを一気に聴き通したのはフルトヴェングラー盤のみで、それも真夜中の12時頃からヘッドフォンで聴いて出来たことでした。真夜中なら邪魔をするものがないだろうと思ってやったことでした。

手許にはこの「トリスタンとイゾルデ」のCDが、フルトヴェングラー、ベーム、バーンスタイン、カラヤン、それに2004年発売のティーレマンとスエーデンオペラ(Naxos)とあり、これらの中から選んで、この楽劇の初演記念日に聴くというサイクルを繰り返してきました。

そんな手許のCDの中でもフルトヴェングラーの古い52年録音盤の演奏を最も気に入っており、音質の悪さを我慢して聴くだけの価値のある、大げさな表現をすると「人類の遺産」と呼べるほどの、まるで麻薬患者になったようなフルトヴェングラー体験を繰り返してきました。

謂わば、「フルトヴェングラーの呪縛」状態があの真夜中に聴いた体験以来続いていました。

その「呪縛」を解き放ってくれる演奏・録音盤が昨年リリースされました。2004年11月から2005年1月にかけて録音された、プラシド・ドミンゴがトリスタンを歌ったEMI盤がそれです。

昨年の9月にリリースされて以来、今日まで何度も聴き直すほどの演奏で、とりわけドミンゴのトリスタンが素晴らしい!



64歳のイタリアオペラ歌手のワーグナーへの挑戦! 発売当日に買い求めて、やはり真夜中に全曲を通して聴きました。

ドミンゴの歌唱は、今までに聴いていましたフルトヴェングラー盤のズートハウス、カラヤン盤・ベーム盤のヴィントガッセン、バーンスタイン盤のホフマンとは明らかに異質のヘルデン・テナーで、まさに輝かしい、青春真っ盛りの若いトリスタンを歌い上げており、全曲を通してドミンゴの気迫が伝わってくるような歌唱には驚いたのと、深い感銘を覚えました。

2005年1月の録音ですから、すでに64歳になっているドミンゴの歌手としての歌唱の結晶がこのトリスタンに凝縮されているように感じます。力のある声と輝き、柔軟で繊細な表現などで魅了してきたドミンゴは、このトリスタンでも独特の楽劇世界を作り上げています。

彼の独特の透明な声の響きで、トリスタンの喜び、陶酔と快楽、失意と怒りなど変化する若い男性の感情を見事に表現しています。

この録音までに10年がかりで、ドミンゴは「トリスタン」を研究してきたと伝えられています。これまでに彼のワーグナー歌唱はオペラ「ローエングリン」(ショルティ盤)で素晴らしい「白鳥の騎士」を聴いて楽しんでいましたが、「ローエングリン」とは明らかに歌唱が異なる「トリスタン」で、これほどの若さ溢れるトリスタンを聴いた体験はありません。

イゾルデを歌うニーナ・シュテンメ(S)も素晴らしい歌唱で、これまでビルギット・ニルソンやベーレンスの歌唱に親しんできました私には、とっても新鮮な歌唱に感じて、それまで熟年のイゾルデといったイメージが払拭されて、実に若々しいイゾルデが出現しています。

それにアントニオ・パッパーノの指揮も素晴らしい。 この楽劇は指揮者の力量が問われるというか、この長丁場の楽劇をどう聴かしてくれるのかという楽しみが、歌手とは別の楽しみもあるのですが、これまでの「巨匠」たちの演奏の薄いヴェールをかぶせられた無限旋律の魅力とは、一線を画す実に見晴らしの良い音楽を展開しています。

しかも音の響きが実に明快で、波のうねりのような無限旋律をドラマティックに語る様はとても新鮮な感じを受けました。

これは昨年購入しましたCDの中でも、ミンコフスキーのラモー管弦楽曲集、ムター(Vn)のモーツアルト協奏曲集、ハーン(Vn)の同じくモーツアルトのソナタ、キーシン(P)のロシア音楽と共に、もっとも印象に残った後世に語り継がれるべき演奏で、私からフルトヴェングラー盤の「呪縛」から解き放ってくれた、現代の望み得る最高の「トリスタンとイゾルデ」だと思います。

ドミンゴはこの録音セッションに臨み、こんな言葉を残しています。

「トリスタンとイゾルデの役作りは、他のオペラは全く違います。これはとてつもない作品であり、取り組めば取り組むほど、自分の中でどんどん大きなものに育っていくような作品なのです。トリスタンは最も挑戦的で最も困難な役ではありますが、とても好きな役です。 自分にとってこの録音は、唯一絶対的なものです」

5580062 1/21


1941年の今日(1月21日)、プラシド・ドミンゴはスペインで誕生しています。

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今日の音楽カレンダー

1930年 初演 ショスタコービチ 交響曲第3番「メーデー」

1948年 没  エルマンノ・ヴォルフ=フェラーリ(作曲家)

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ともの『 今日の一花 』       胡蝶蘭

昨日の水仙と同じく、一昨日に訪れた長居植物園内の緑化センターに鉢植えで咲いていた胡蝶蘭です。 4鉢がそれぞれ淡い色や濃い色で楽しませてくれました。園内の他の花といえば昨日掲載の水仙と寒咲き花菜くらいでしたから、これらの胡蝶蘭をすべてFAマクロで色々な角度から撮ってみました。ある意味では撮影の勉強を兼ねて撮っていたようなものですが、案外満足できる画像が多く、これからの1週間を「胡蝶蘭シリーズ」にして毎日アップしようかと真剣に考えています。

1/21撮影地 大阪市長居植物園 2006年1月19日





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最終更新日  2006年01月21日 13時59分27秒
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