プレリュード

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2007年05月13日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽

アメリカ・ニューヨークのジャネット・サーバー夫人から、彼女が経営する「ナショナル音楽院」の院長という職への要請が、チェコのアントニン・ドヴォルザーク(1841-1901)に届いたのは1891年の春で、その頃のドヴォルザークは既に8つの交響曲、ピアノ曲、室内楽作品、オペラなどを発表しており、ヨーロッパでは大作曲家の一人でした。

受託までは紆余曲折がありましたが、ドヴォルザークは1892年9月15日にニューヨークに向けて旅立ちました。 ニューヨークには9月26日に到着しました。 それから約2年半彼はアメリカに留まります。

その頃のアメリカは、すでに大陸横断鉄道が完成しており、1793年に独立を果たして109年目を迎えていました。

ドヴォルザークがアメリカについて驚いたのは、活気にあふれた街並みでした。 まだエンパイア・ステートビルは建っていませんが、大きな建物がブロードウエイに立ち並び、行き交う群衆の活気あふれる姿に驚いたそうです。 祖国の田舎町とは比較にならない活気ぶりでした。 

もう一つは「黒人霊歌」や純朴なアメリカ民謡に大きな感動を受けたそうです。 アフリカから奴隷として売られてきた黒人たちの歌う「黒人霊歌」は、虐げられた人々の救済への祈りと願いを込めた歌ですが、ドヴォルザークはその歌にいたく感銘を受けて、自宅に黒人歌手を呼んで彼らの歌に耳を傾ける機会が非常に多かったそうです。

ドヴォルザークは、それまでアメリカ人には不当に低く見られていた「黒人霊歌」の価値を高く認めた、最初の大作曲家であったそうです。 彼は美しく変化に富む黒人霊歌を「土の産物」として評価していました。

「ナショナル音楽院」の忙しい職務のかたわら、1893年の約半年間新しい交響曲への構想をまとめて草稿を仕上げています。 その年(1893年)の夏に休暇を取ってニューヨークから遠く離れたアイオワ州の町へと旅立ちます。 この時にはドヴォルザークはかなりひどいホームシックに陥っており、音楽院の弟子の勧めでわざわざ遠いアイオワまで出かけたそうです。



こうして新しい交響曲は短期間で書き上げられています。  それが交響曲第9番ホ短調「新世界より」なのです。 初演はその年(1893)の12月16日にニューヨークで行われており、大成功に終わったそうです。

「新世界より」はドヴォルザーク自身が付けた副題で、当時ヨーロッパでは「新大陸」と呼んでいたアメリカを指す「新世界」ですが、音楽にはアメリカ・インディアンの民謡と思しき旋律や、黒人霊歌の旋律らしいものが使われていますが、彼が何故「新世界より」と「より」を付けたを考えると、決して「新大陸」を表現した音楽ではなくて、遠くアメリカからボヘミアを望郷の想いで書いたことは容易に想像できます。 

この「新世界より」は、ドヴォルザークが故郷ボヘミアを想って書き綴った「手紙」のような音楽でしょう。 アメリカ的な匂いがすると感じれば、その「手紙」をアメリカで書いたからと思えばいいのではないでしょうか。

この作品中、最も有名なのが第2楽章「ラルゴ」です。 イングリッシュ・ホルンによる郷愁を誘うような美しい旋律は一度聴けば忘れられない、ほのぼのとした哀愁を誘う旋律で、今では「家路」という名前で合唱曲にさえなっている有名な旋律です。 小学校の下校時の音楽もこの旋律を使っている学校が一体何校あるでしょう。 ほとんどの学校が使っているほど家路に着く旋律にぴったりです。

1957年、私がクラシック音楽に興味を持って聴き始めた時に、小学校の恩師が貸してくれたLPがこの「新世界より」でトスカニーニ指揮 NBC交響楽団の演奏で、何度も何度も第2楽章「ラルゴ」を聴いていました。

私がクラシック音楽を聴く原点の一つでもありました。 今日はこのドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」に、じっくりと耳を傾けて聴いてみようと思います。

愛聴盤

(1) アウトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団

BVCC38037 1953年2月2日録音
(RCA原盤 BMGジャパン BVCC38037 1953年2月2日録音)

今聴いてもちっとも色褪せない、早めのテンポで推進力のある演奏で、トスカニーニ特有のカンタービレの美しさに酔える演奏です。 録音の古さも気にならない名演奏です。

スメタナの「モルダウ」とのカップリングで1,500円です。




UCCD7005 1960年録音
(DECCA原盤 ユニヴァーサル・ミュージック UCCD7005 1960年録音)

トスカニーニの演奏をインターナショナル的なものとすれば、ケルテスはボヘミアの情感をたっぷりと焙りだして、堅固な造形をも作り出しており、しかもウイーンフィルの弦楽器やホルンなどの極上の美しい響きを醸し出した稀有の名演。  1968年にこの曲をケルテス指揮 読響の演奏会で聴いた感動は今もって忘れえない感激の一つです。 スメタナのオペラ「売られた花嫁」~序曲がカップリングされていて、1000円盤です。

(3) サー・ゲオルグ・ショルティ指揮 シカゴ交響楽団

UCCD5018 1985年録音
(DECCA原盤 ユニヴァーサル・ミュージック 1985年録音)

ショルティの鋭利な刃物で切り裂くような、精緻な音楽作りとダイナミックな表現が素晴らしい演奏で、録音も恐ろしくなるほどの超優秀録音盤です。 シューベルトの「未完成」がカップリングされて1800円です。



PCCL00273 1995年1月録音
(CANYON CLASSICS PCCL00273 1995年1月録音)

ノイマン最後の「新世界より」の録音。 適度なテンポで歌われ、ボヘミア的郷愁がどの楽章にもただよう、弦楽器が豊かに響く、まるでノイマンの「遺言」のような色彩豊かな情感のこもった名演奏盤。(ジャケットはSACD盤ですが、商品番号は通常のCDです)

通常のCDも3000円。 このSACDも3000円です。 カップリングはドヴォルザークの「交響的変装曲」です。

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今日の音楽カレンダー

1833年 初演 メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」

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ともの『 今日の一花 』          麦撫子(ムギナデシコ)


5/13撮影地 大阪府和泉市 2006年5月





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最終更新日  2007年05月13日 00時12分52秒
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