プレリュード

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2007年05月12日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽

リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)の書き遺したロマンティック・オペラの最後の飾る作品で、このオペラ以後ワーグナーは文学と音楽と造形芸術を総合した「楽劇」の世界へと取り組んでいきます。 ワーグナー音楽としては当然のちの楽劇のような難解なところがなくて、非常に親しみやすい、美しい旋律が全曲中に散りばめれられているロマンティックなオペラです。

ヨーロッパには昔から色々な伝説があります。 ワーグナーはこのオペラでもヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの叙事詩「パルジファル」、コンラート・フォン・ヴュルツブルクの「白鳥の騎士」、バイエルン地方の吟遊詩人の叙事詩、グリム兄弟の「ドイツ伝説集」などを題材にして自ら台本を書いています。

あらすじは簡単に書けばこんな風です。

物語の舞台は10世紀、アントワープ近く、スヘルデ川のほとり。

ドイツ国王ハインリヒ1世が、ザクセン軍を率いてブラバント公国を訪れると、ブラバント公が亡くなってから、世継ぎのゴットフリート公子が行方知れずとなっているが、それは公子の姉エルザ公女の仕業に違いないと、テルラムント伯爵から聞かされます。

ハインリヒ王は、エルザ公女に真偽を問いただすが、彼女は夢に見た白鳥の騎士が自分の無実を証明してくれると弁明します。 それではとテルムラント伯爵がその白鳥の騎士と決闘をすると言い出します。 決闘による神明裁判です。

エルザ公女が一心に祈り始めると、白鳥の引く小船に乗り、銀色に輝く甲冑に身を固めた見知らぬ騎士が現れ、エルザ公女の決闘の代理人を努めようとと名乗り出ます。 ただし、決して彼の名前と素性を尋ねてはならない、とエルザ公女にそれを誓わせて、決闘が始まりますが白鳥の騎士の圧勝で終わり、エルザ公女の潔白が証明されます。



白鳥の騎士は、ブラバント公の地位を提供されますが辞退して、「ブラバントの守護者」になり、エルザ公女と結婚することになります。 

婚礼のために、エルザ公女が聖堂に向かっている途中で、オルトルートは、白鳥の騎士が名前も素性も明らかにしないのはおかしいと言い出します。 一同は、そんなオルトルートを非難しますが、エルザ公女は、名前を訊いてはならないという白鳥の騎士との約束を守れるか、不安を覚えます。

そして、白鳥の騎士と二人きりになったエルザ公女は、とうとう我慢しきれなくなり、禁断の彼の名前と素性を教えて欲しいと言ってしまいます。

白鳥の騎士は、自分こそ、聖杯騎士のローエングリンであると名乗りますが、聖杯城の掟により、素性を明かしたからにはローエングリンは立ち去らなければならない。
白鳥の騎士は、放心状態のエルザ公女に別れの言葉を告げます。

するとオルトルートが現れて勝利を叫びます。しかし、ローエングリンが祈りを捧げると、そこにいた1羽の白鳥が行方不明になっているゴットフリート公子の姿に戻ります。 

ゴットフリートは、オルトルートの魔法で白鳥に姿を変えられていたのでした。 自らの魔法が破れたことを知ったオルトルートはその場に倒れ、ローエングリンは姿を消し、一同が嘆く中でエルザ公女は息を引き取ります。

これは超人間的性格男性と人間女性の何とも悲しい恋愛物語です。

日本にも民話「鶴の恩返し」があります。 これと似たような悲恋物語です。

尚、「聖杯騎士」とは、キリストが十字架に架けられた時に、その血を受けたとされる伝説的聖杯の守護者という騎士のことです。

随所に美しい音楽が散りばめられており、序曲にあたる「第1幕への前奏曲」はこの聖杯騎士ローエングリンの降臨を象徴するかのような、神々しさに溢れた旋律と情緒が素晴らしく、単独で演奏会や「ワーグナー管弦楽曲集」などのディスクに収録されている、このオペラの根幹を成す音楽となっています。



最も有名なのは「婚礼の合唱」でしょう。 どの結婚式場でも鳴り渡る壮麗な結婚式の合唱で、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」共に超有名曲のなっています。

また第1幕の「エルザの夢」、第2幕「そよ風の歌」、第3幕「花の香りの歌」、「名乗りの歌」、「白鳥の歌」など聴きどころ満載のオペラです。

全曲通して220分という長大なオペラですが、オペラ好きなら一度は聴いておきたいワーグナー畢生のロマンティック・オペラです。

今日はドイツの名指揮者ルドルフ・ケンぺ(1910-1976)が亡くなった命日です(5月11日説もあります)。 彼が1963年にウイーンフィルと遺した名演でこの曲を聴いてみようと思っています。

愛聴盤


ジェス・トーマス(T)、 エリザベート・グリュンマー(S)、クリスタ・ルードヴィッヒ(Ms) ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)

49017 1963年録音
(EMIレーベル 49017 1963年録音 海外盤)

リズム感が素晴らしく、非常に透明な響きでこのオペラの美しさを見事に表現しており、220分の長さを感じさせない素晴らしいロマンの世界を表現しています。
東芝EMIからも日本盤プレスが発売されています。


(2) ゲオルグ・ショルティ指揮 ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 ウイーン国立歌劇場合唱団 プラシッド・ドミンゴ(T)、 ジュシー・ノーマン(S)、エヴァ・ランドヴァー(Ms)、ジークムント・ニムスゲルン(Br)

470795 1985-6年録音
(DECCAレーベル 470795 1985-6年録音 海外盤)

何と言ってもドミンゴのローエングリンとノーマンのエルザがずば抜けて素晴らしく、またショルティ指揮も透明な響きの白鳥表現や、第3幕の圧倒される厚い金管群の響き、精緻に掘り下げた音楽表現と超優秀録音が素晴らしいディスクです。

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今日の音楽カレンダー

1832年 初演 ドニゼッティ オペラ「愛の妙薬」
1842年 誕生 ジュール・マスネ(作曲家)
1845年 誕生 ガブリエル・フォーレ(作曲家)
1884年 没  ぺドルジーハ・スメタナ(作曲家)
1976年 没  ルドルフ・ケンぺ(指揮者)

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ともの『 今日の一花 』      躑躅(つつじ)


5/12





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最終更新日  2007年05月12日 00時25分51秒
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