プレリュード

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2007年05月21日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽 』     レオンカヴァルロ作曲 オペラ「道化師」

ルッジェーロ・レオンカヴァルロ(1857-1919)の最高傑作オペラ。 と言ってもこのオペラ以降はぱっとせずにほぼこの一作のみで、オペラ史上・音楽史上に名を残しています。

先日書きましたマスカーニと同じように一幕物オペラに応募したのですが、この「道化師」は二幕なので対象にならなかったのですが、演奏時間、ヴェリズモ・オペラということで、「カヴァレリア・ルスティカーナ」と共に一夜の公演として組まれることの多いオペラです。

このオペラの題材は、レオンカヴァルロの父が裁判官をしている時に、実際に起こった事件を基にして書かれており、台本はレオンカヴァルロ自身が書いています。

私がオペラ好きになった記念すべきオペラで、1961年イタリア歌劇団の来日公演で大阪フェスティヴァル・ホールで、マリオ・デル・モナコの「道化師」、シミオナートの「カヴァレリア・ルスティカーナ」の舞台公演を観てからでした。 その時のモナコの鬼気迫る熱演が昨日のように蘇ってきます。

「カヴァレリア・ルスティカーナ」同様演奏時間は70分~75分の短いオペラ。

プロローグ

座員トニオ(Br)が開幕前に登場して前向上を述べます。 

第1幕

1860年代後半のイタリアのある村が舞台。 村人が楽しみに待っていたどさ回りの旅役者一行がやってきた。 座長のカニオ(テノール)には彼が育て上げた美人の妻ネッダ(ソプラノ)がいる。 他の男と恋愛しないかといつも気にしている嫉妬深い男。 馬車から下りようとするネッダに手を貸すトニオにさえ怒って殴るほどの嫉妬深いところがある。



この村にはネッダが密かに恋するシルヴィオがいる。 そのことは誰も知らない。 ネッダは飛ぶ鳥を見て「小鳥たちは囀り合い、好きなところへと飛んで行ける」と、「鳥の歌」を歌っていると、座員のトニオがネッダに横恋慕して言い寄ってくる。 ネッダに鞭でこっぴどく叩かれてしまうトニオ。 「この恨みをきっと晴らしてやる。 高くつくぞ、ネッダ!」と吠える。 

そこへネッダの恋人シルヴィオがやってきて、しばしの逢瀬を楽しみ、駆け落ちを相談する二人。 その現場をトニオが見ており、座長カニオに知らせて現場へやってくると、二人は別れるところでネッダが囁いている。 「今夜からあなたのものよ」と。 取り逃がしたカニオはネッダに男の名前を言えと迫るが、座員ぺっぺに「衣装を着けて下さい。 開幕時間がきますよ」と言われて、この場はそのまま納まる。

「どんな不幸があっても、笑うんだパリアッチョ。 笑え、パリアッチョ!」とアリア「衣装を着けろ」を歌うカニオ。 第1幕はこうして幕を閉じます。

間奏曲

第2幕 (劇中劇)

待ちに待った旅芝居の幕が開くのを待ちかねている(さあ~、早く良い席を)。 ネッダが客から木戸銭を取りながらシルヴィオと今夜の駆け落ちの打ち合わせをする。
そして幕が上がる。

道化師(パリアッチョ)の妻コロンビーナ(ネッダ)が夫がいないことをいいことに恋人アレッキーノ(ぺっぺ)と恋を語り合っていると、召使のタデオ(トニオ)が道化師が帰ってきたことを告げる。 あわてたアレッキーノが窓から逃げ出す。 コロンビーナが「今夜からあなたのものよ」と囁く。 それを聴いた道化師カニオは芝居と現実がわからなくなる。 それでも必死に芝居を続けようとするコロンビーナ。 その対照が面白くて観客席が沸く。

とうとう現実と芝居が一緒になってしまったカニオは、「もう道化師じゃない」と現実に戻り、トニオからそっと渡されたナイフで彼女を刺してしまいます。 それでも男の名前を執拗に迫るカニオ。 助けを請うために「シルヴィオ」と叫ぶと、彼は舞台に上がってカニオに刺されてしまいます。 呆然と立ち尽くす道化師カニオが「これで喜劇が終わりです」と言うと、「衣装をつけろ」の旋律が奏されて幕となります。

「プロローグ」の田舎芝居を語るトニオのアリア。
「鐘の合唱」
「鳥の歌」(ネッダのアリア)

「もう道化師じゃない」

70分の短いオペラですが聴きどころいっぱいのオペラです。 特に「衣装をつけろ」は道化師でありながら辛いことも我慢して笑わせなければならない宿命を歌った壮絶なアリア。

1961年のイタリア歌劇団東京公演では、この第1幕の幕切れで歌ったモナコの詠唱に聴衆が舞台に殺到するほどの騒ぎになった、オペラ史上未曽有のモナコの名唱でした。

アメリカ1930年代にこの「道化師」を得意のレパートリーにしていたテノール歌手エンリコ・カルーソーの妻が、他の男と駆け落ちをします。 それでもその夜舞台で「道化師」を歌わねばならないカルーソー。 事情を知らない指揮者もオーケストラも鬼気せまるアリア「衣装をつけろ」に涙したという実話が残っています。

愛聴盤


モリナーリ・プラデルリ指揮 ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団・合唱団

UCCD3340 1959年録音
(DECCA原盤 ユニヴァーサル・クラシック UCCD3340 1959年録音)

「道化師」のCDはこれ1枚で充分ではないかと思われる「黄金のトランペット」と形容されたドラマティック・テノールのマリオ・デル・モナコ畢生の名演。 彼は声だけでなく演技も素晴らしく、「衣装をつけろ」で泣き崩れるアリアはまさに「空前絶後」と思える迫真の演技。 もう10年以上前になりますが、私の持っているCDをテープに録音して解説も付けたのを200曲ほど友人にあげたことがあります。 それらの中で何が一番好きかと問うたところ、間髪入れずに返った答えが「マリオ・デル・モナコ」でした。 舞台でこのオペラを観ていることもありますが、私にとって「永遠のモナコ」です。

1960年代はモナコに限らず、まさに伝説の名演奏家を輩出していた懐かしい時代です。


(2) マリオ・デル・モナコ、 ガブリエルラ・トゥッチ、  アルド・プロッティ(バリトン) ジュゼッペ・モレルリ指揮 NHK交響楽団

KIBM1015 1961年東京ライブ
(NHK音源 キング・インターナショナル KIBM1015 1961年東京公演)

伝説の1961年の東京公演をNHK保存の映像をDVD化したもの。

(3) プラシッド・ドミンゴ、 テレサ・ストラータス、 ファン・ポンス  ジョルジョ・プレートル指揮 スカラ座管弦楽団・合唱団

UCBG1100  1982年 12/07
(グラモフォン・レーベル ユニヴァーサル・クラシックス UCBG1100 1982年制作)

ゼッフィレッリ演出のオペラ映画。 「カヴァレリア・ルスティカーナ」とのカップリングです。

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今日の音楽カレンダー

1892年 初演 レオンカヴァルロ オペラ「道化師」
1895年 没  フランツ・スッペ(作曲家)
1933年 誕生 モーリス・アンドレ(トランペット奏者)
1937年 誕生 ハインツ・ホリガー(オーボエ奏者)

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ともの『 今日の一花 』       紫カタバミ


5/21撮影地 大阪府和泉市





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最終更新日  2007年05月21日 00時38分29秒
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Re:オペラ「道化師」/紫かたばみ(05/21)  
dolami77  さん
カヴァレリア・・の解説とともに、今日の「道化師」も ついこの間演奏したばかりなので、昨日のことのように蘇ってきます。

5月の5、6日。ともさんのお勧めくださった この2枚のCDを、この 二曲のオペラ公演のために、一体何回かけては、必死に練習したことでしょう? もう 両曲合わせて、100ページ近くに及ぶ、ファーストヴァイオリンのパート譜も、パッと開けば、大体弾ける・・くらい 覚えてしまいました。 

私には、全曲演奏するのは、両方初めての経験でしたが、素晴らしいアリアや、メロディーに溢れ、特に『道化師』は、練習する難所の連続だっただけに、公演の成功(満員御礼でした)は、素晴らしい思い出にもなりました。 ご紹介くださった ともさんには、本当に感謝しています。ありがとうございました。 (2007年05月21日 00時44分47秒)

Re:オペラ「道化師」/紫かたばみ(05/21)  
たけぽ2001  さん
ムラサキカタバミは雑草にしておくには惜しいくらいきれいですね。
園芸品種のオギザリスも、かなり人気のようですが。
複数の花を撮るときは、ピント合わせが難しいです。
うまくピントの位置を持って来られていますね。
(2007年05月21日 01時25分15秒)

dolami77さん、ありがとうございます  
とも4768  さん
dolami77さん
>カヴァレリア・・の解説とともに、今日の「道化師」も ついこの間演奏したばかりなので、昨日のことのように蘇ってきます。

>5月の5、6日。ともさんのお勧めくださった この2枚のCDを、この 二曲のオペラ公演のために、一体何回かけては、必死に練習したことでしょう? もう 両曲合わせて、100ページ近くに及ぶ、ファーストヴァイオリンのパート譜も、パッと開けば、大体弾ける・・くらい 覚えてしまいました。 

>私には、全曲演奏するのは、両方初めての経験でしたが、素晴らしいアリアや、メロディーに溢れ、特に『道化師』は、練習する難所の連続だっただけに、公演の成功(満員御礼でした)は、素晴らしい思い出にもなりました。 ご紹介くださった ともさんには、本当に感謝しています。ありがとうございました。
-----

演奏するって大変なんでしょうね。私はただ聴くだけで、その演奏がどうだ、あ~だと批評めいたことを言ってますが大変な努力をされているようですね。

今度は「マイスタージンガー」「運命」それにモーツアルトのP協第21番だそうですね。 頑張ってください、近ければ聴きに行きたいのですが。

(2007年05月21日 07時05分31秒)

たけぽ2001さん、ありがとうございます  
とも4768  さん
たけぽ2001さん
>ムラサキカタバミは雑草にしておくには惜しいくらいきれいですね。


この写真は露出過度気味で、もう少し調整をすれば良かったのですが。

>園芸品種のオギザリスも、かなり人気のようですが。
>複数の花を撮るときは、ピント合わせが難しいです。
>うまくピントの位置を持って来られていますね。
-----

ありがとうございます。 どこにピントを合わすかで雰囲気も変わってきます。そればかり気になって露出まで頭が回りませんでした。 液晶画面で再生してもわからない時がありますね。


(2007年05月21日 07時09分16秒)

Re:オペラ「道化師」/紫かたばみ(05/21)  
いちき(おぺきち) さん
こんばんは
ドミンゴファンではありますが、デル・モナコを聞いてしまいますと、やはりモナコの魅力が上回っているように思います。
カラスにもいえますが、声に特徴があって一度味わってしまうと、病み付きになりますね。 (2007年05月21日 20時55分13秒)

いちき(おぺきち)さん、ありがとうございます  
とも4768  さん
いちき(おぺきち)さん
>こんばんは
>ドミンゴファンではありますが、デル・モナコを聞いてしまいますと、やはりモナコの魅力が上回っているように思います。
>カラスにもいえますが、声に特徴があって一度味わってしまうと、病み付きになりますね。
-----

ドミンゴの「アイーダ」「オテロ」「仮面舞踏会」「蝶々夫人」「トロヴァトーレ」「ローエングリン」「トリスタン・・・」など聴いていますと最高のテノールと感じますが、私の場合ドミンゴの前にどうしても壁が出来ています。 それがモナコです。 時々ドミンゴがかわいそうと思ってしまうほど、モナコはまさに「空前絶後」のテノールとなってしまっています。

(2007年05月21日 21時31分07秒)

Re:オペラ「道化師」/紫かたばみ(05/21)  
紀 健幸  さん
 紫かたばみ、きれいですね。 (2007年05月21日 22時54分44秒)

Re[1]:オペラ「道化師」/紫かたばみ(05/21)  
とも4768  さん
紀 健幸さん
> 紫かたばみ、きれいですね。
-----

ありがとうございます。

雑草の一種ですが、案外と撮りにくい被写体でこれもだいぶ手こずった覚えがあります。

(2007年05月21日 23時31分38秒)

Re:オペラ「道化師」/紫かたばみ(05/21)  
nekovi  さん
モナコの道化師!これ一枚でOKです。
ところで道化師を演奏したことがあればわかるのですが、
何というか、ピアノで作曲したみたいな、、、。
楽譜の縦の響(和音)は凄くきれいですが、
横の動きが結構唐突です。
メロディー(主旋律)以外の音を取るのは難しいとまでは言いませんが、
予想した音に進んでいかない「落とし穴」がいっぱいです。 (2007年05月22日 09時42分03秒)

オペラ「道化師」  
okimi734  さん
こんにちは。デル・モナコのCDとドミンゴ、ストラータスのDVD持ってます!
デル・モナコの「衣装をつけろ」は結末の悲劇を予兆させる、嫉妬と絶望からの狂気におかされる熱唱に鳥肌が立ってしまいます。
ドミンゴのカニオは、映像とあわせてみると妻を寝取られる男の哀れさがひしひしと伝わってきて、役者だなあ、と思います。演出もいいんですよね。
でも歌はデル・モナコと比べると小粒なんでしょうかねえ。
地味ですが、ネッダの歌う「鳥の歌」。カラスが歌うと鬼気せまる情熱にあふれていて、他のソプラノが歌うのと同じ歌とは思えないくらいほどです。カラスが気性の激しい女性を歌ったら、右にでるものはいないでしょう! (2007年05月22日 10時22分16秒)

nekoviさん、ありがとうございます  
とも4768  さん
nekoviさん
>モナコの道化師!これ一枚でOKです。

「衣装をつけろ」まで来ますとほんとに鳥肌が立つ思いで聴いています。 こんなに興奮させてくれるモナコはやはり凄いと聴くたびに感じています。

>ところで道化師を演奏したことがあればわかるのですが、
>何というか、ピアノで作曲したみたいな、、、。
>楽譜の縦の響(和音)は凄くきれいですが、
>横の動きが結構唐突です。
>メロディー(主旋律)以外の音を取るのは難しいとまでは言いませんが、
>予想した音に進んでいかない「落とし穴」がいっぱいです。
-----

他のイタリア・オペラと少し音楽が違っていて、ヴェリズモの雰囲気を出しているのかと思っていたのですが、やはり演奏するとそういう細かい面まで気がつくのですね。 


(2007年05月22日 23時22分09秒)

okimi734さん、ありがとうございます  
とも4768  さん
okimi734さん
>こんにちは。デル・モナコのCDとドミンゴ、ストラータスのDVD持ってます!


この映像はまさにゼッフィレッリ演出の妙なるマジックというか、まるで映画を観ているようで、田舎周りのイタリアのわびしい旅回り一座に起こってある日の出来事といった感じで、切なさが伝わってきます。

>デル・モナコの「衣装をつけろ」は結末の悲劇を予兆させる、嫉妬と絶望からの狂気におかされる熱唱に鳥肌が立ってしまいます。


「笑え、パリアッチョ!」と歌うところまでくると、鳥肌立てて、涙をこらえて聴いています。

>ドミンゴのカニオは、映像とあわせてみると妻を寝取られる男の哀れさがひしひしと伝わってきて、役者だなあ、と思います。演出もいいんですよね。


ゼッフィレッリ演出が冴えわたった映画ですね。 イタリアの旅回り一座のある日の出来事を語っていて、ドミンゴにはモナコのような鬼気迫るところがないかわりに、切なさが伝わってくる演技ですね。

>でも歌はデル・モナコと比べると小粒なんでしょうかねえ。


どうしてもモナコと比較をしていますね。 ドミンゴが悪いというのではなくて、モナコが凄すぎますね。

>地味ですが、ネッダの歌う「鳥の歌」。カラスが歌うと鬼気せまる情熱にあふれていて、他のソプラノが歌うのと同じ歌とは思えないくらいほどです。カラスが気性の激しい女性を歌ったら、右にでるものはいないでしょう!
-----

カラスは決して美声ではありませんが、仰る通り激情に駆られたヒロインをやらせると極上の巧さがありますね。 それが耳について離れません。 やはりカラスは凄いですね。

(2007年05月22日 23時31分45秒)

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