プレリュード

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2010年02月22日
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今日のクラシック音楽 』   チャイコフスキー作曲 交響曲第4番ヘ短調

作曲家と女性の交際が生んだ名曲が音楽史上に多く残されています。 ロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキー(1840-1893)にもそんな1曲があります。 交響曲第4番ヘ短調 作品36がそれです。

チャイコフスキーを語る時にいつも見え隠れするのが当時のロシア鉄道王カール・オットーの未亡人ナジェージダ・フォン・メック。 夫亡き後の莫大な資産を抱えたこのメック夫人は、チャイコフスキーには破格の経済援助を与えていました。 二人の接触は夫人の家に出入りしていたコチェークというチャイコフスキーの教え子であるヴァイオリニストの紹介でした。

当時のチャイコフスキーが経済的には苦しい状況にあったことをコチェークはよく知っていました。 それでメック夫人に援助の話を持ちかけたと言われています。 メック夫人の夫亡き後の楽しみは6男6女の子供たちの成長を見守ることと、好きな音楽を楽しむことであったようです。 

かねがねチャイコフスキーの非凡な音楽才能を買っていたメック夫人は、コチェークからの依頼に二つ返事で答え、チャイコフスキーに小品の作曲を委嘱して、二人の交際が始まったのです。 法外な謝礼によってメック夫人に興味を持ったのが1876年の冬のことだと言われています。

交際と言っても二人は生涯顔を合わせることがなく、手紙だけでの付き合いであったようです。 1200通余りの手紙がチャイコフスキーからメック夫人に書かれているそうです。 法外な謝礼はやがて月額となって決まった金額の援助がなされました。 チャイコフスキーのモスクワ音楽院教授就任の初任給が50ルーブルで、「白鳥の湖」への謝礼が800ルーブルだったそうです。 それに比べてメック夫人の援助が月額6000ルーブルだったそうで、まさに破格の法外な謝礼と言えるでしょう。

経済的に落ち着いた環境でチャイコフスキーは、精神的に随分と余裕を得て作曲活動を行っていたようです。

そんな彼にとんでもない女性が現れてチャイコフスキーを悩ませます。 1877年のことです。

彼の教え子にアントニーナ・ミリューコヴァという9歳年下の女性がいて、彼に熱烈な恋文を書いて結婚を迫ってきました。 押し切られる形で結婚を承諾したチャイコフスキーは彼女に失望したのは結婚後すぐだったようです。 メック夫人に宛てた手紙には妻となった女性は、彼の仕事が何たるかを理解しないどころか、彼の音楽の楽譜の1枚すら知らなかったようです。 結婚3か月で別れてしまい、それがチャイコフスキーに深刻な精神的ダメージを与えたようです。

弟の提案でチャイコフスキーはスイス・イタリアへ旅行をして、徐々に回復していったようです。 そこで書かれたのが交響曲第4番でした。 メック夫人からの経済援助を受けた後の初めての大作でした。

この曲はよく「人生と運命」を表現した音楽と言われています。 チャイコフスキーはこの曲をフォン・メック夫人に献呈しており、この曲の作曲の動機・内容について、細かく手紙に書いています。 手紙にはこう書かれています。 「この交響曲を書いていた冬の間中、私はひどくふさぎこんでいましたが、この曲は当時私が経験したことを忠実に反映しています」と。

第1楽章 

冒頭の旋律は、この交響曲全体の精髄であり、生命であると述べており、第1主題は、幸福を妨げ、魂の毒を注ぎ込んでくる力で、絶望して諦めを余儀なくされるが、それでも夢に浸りたくなる。 「運命」と「夢」が交錯する激しい音楽。

まるで激しいドラマが開始するかのような、第1楽章冒頭のホルンとファゴットによる劇的・熱烈な旋律が奏されると、聴き手はもう激しいこの曲のドラマの中へと引き込まれていきます。 この旋律は「運命の動機」と呼ばれています。 この動機がベートーベンの第5番のシンフォニーのように、他の楽章の楽想にも表れ、この曲の中心的な動機となっています。

まるで情熱と嘆きの交錯するような、激しさと哀愁が同居しているような、チャイコフスキーが自分の人生を語るかのようなドラマティックな展開をみせて壮烈なコーダへと進み、たたみかけるような激しさのクライマックスを迎えます。

第2楽章

「悲哀の楽章」とチャイコフスキーが書いています。 「仕事に疲れ果てた人が放心したように座っている時の憂鬱な気分の状態」と書かれています。 「いっとき過ぎし日を懐かしむ気分になるが、新しいことに挑戦する勇気がない」とも書かれています。

オーボエの寂しさから始まり、それがとても印象的です。 まるで今までの人生を思い出しているかのような風情が楽章を貫いています。 寂しさ、悲しさ、切なさが同居する音楽です。

第3楽章



弦楽器によるピッチカートで始まり、主部はこれのみ。 三部形式のようで、2部はロシアン・ダンスのようなリズムで軽快に管楽器で刻まれ、またピッチカートに戻ってマーチ風に展開して終わります。 まるで人生の、つかの間の「うたた寝」のような楽章です。

第4楽章

「人生を楽しんでいる人たちに飛び込んで行こうとすると、あの運命の動機が現れます。 しかし生きる希望を持てるまで、人生を楽しむ人たちの幸せを喜んであげたい」と書かれています。

この曲のクライマックスだと私は思います。 3つの主題ー激しい第1主題、ロシア民謡風の優しい感じの第2主題、力強く明るい第3主題、これらが交互に現れるロンド形式です。 

この楽章に、チャイコフスキーがイタリアの燦燦と明るい陽射しに触れて、生きる喜びを熱烈に表現しているのではないかと感じられます。 激しさを加えて豪快にクライマックスを迎えて明るく曲を閉じます。



交響曲第4番は、1877年にこうして対照的な女性との接触・交際、結婚・離婚から生まれた曲と言えるでしょう。

1878年の今日(2月22日)、この交響曲第4番が初演されています。

愛聴盤  

ピエール・モントー指揮 ボストン交響楽団

BVCC37166 1959年録音
(RCA原盤 BMGジャパン BVCC37166 1959年録音)

カラヤン/ウイーンフィル、 ムラビンスキー/レニングラード、 ザンテルリンク/ベルリン放響、 ゲルギエフ/ウイーンフィル、 ロジェストヴェンスキー/レニングラードフィル(BBCライブ)など名演目白押しの曲ですが、熱い情熱と生命力豊かなモントー盤に最近ははまっています。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウイーンフィルハーモニー管弦楽団

POCG20005 84年録音
(グラモフォン原盤 ユニヴァーサル・ミュージック POCG20005 1984年録音)

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮 レニングラードフィルハーモニー

4197452
(グラモフォン レーベル 4197452 1960年ロンドン録音 ユニヴァーサル・ミュージック)

クルト・ザンテルリング指揮 シュターツ・カペレ・ドレスデン

TDKOC009 1973年東京ライブ
(TDK FM東京音源 TDKOC009 1973年東京ライブ録音)







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最終更新日  2010年02月22日 14時03分03秒
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