のんびり生きる。

のんびり生きる。

君は学がない。その割に頭がいい。そのくせ


 あるところは凍りつき、あるところは踏むと崩れる雪道と格闘しながら、葛城医師が言った。
「何の話です」
「その割に頭がいい。そのくせ、妙に勘が鈍い。困ったものだ」
「そりゃあすいませんですね」
 ムカッときて、孝史は足を止めた。・・・

「蒲生邸事件」第四章 戒厳令  P461


歴史の流れは変えられない―できるのは細部の修正だけ。

そう、自分は今、時代の転換点に立っているのだと孝史は思った。市電がパンタグラフを掛け替えるように、昭和の歴史もその進む方向を決め、今、転轍機を動かしたところなのだ。どれほど雰囲気が明るかろうと、青年将校を応援する空気があろうと、このクーデターに希望を託す市民がいようと、歴史は何も見ないし何も聞こうとはしない。
 寒さが身にしみてきた。

「蒲生邸事件」 第四章 戒厳令 P499


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