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Romance夢紀行
Archangel's Prophecy/ナリーニ・シン あらすじ
2019.1.16 更新
Archangel's Prophecy【電子書籍】[ Nalini Singh ]
※ ※ ※
ネタバレ
あります ※ ※ ※
辞書で確認せず、記憶に頼っててきとーに書きなぐっていますので、内容が間違っていても
笑って読み流せる方
だけ読んでくださいね
ヴィヴィクとスクラブルゲームでお互いに悪態をつきながら楽しんでいるエレナにサラからハンター業務の要請の電話が入ります。同僚のヴィヴィクはヴァンパイアに転化されて5年、全身が麻痺していましたがヴァンパイアの再生能力によってゆっくりと身体機能が回復していて、いまでは上半身が動くようになり、車いすで移動しているようです。何十年後かには、下半身も動くようになるのではと言われているようです。エレナや同僚たちは、ハンターでもあるヴィヴィクを援護の業務に連れ出すようにしてハンターの本能を満たせるようにしているようです。
サラの依頼は、イマニという天使と契約していたヴァンパイアが逃走したので捕まえてほしいということです。どうやら高齢の天使で、難しい人物のようで、彼女を直接知っているエレナに頼みたいということのようです。
キャスケードの現象はこのところ治まっていましたが、鳥たちが集団で飛んでいるのをみたりすると、なにかの前兆ではないかとつい身構えてしまうエレナです。2年ほど前にハドソン川が赤く染まった景色は忘れられるものではないようです。
イマニ宅では慇懃無礼な執事がエレナが出迎えてくれ、客間へと案内されます。ヴァンパイアの匂いの残る衣類と彼の部屋を見せてほしいと執事に言いつけます。イマニは高齢の天使で、考え方が古く、お高くとまったタイプの女性ですが、病的な雰囲気はないようです。人間だったエレナのことは気に入っていませんが、最低限の礼儀は見せて、自宅に招待したこともあるようです。彼女が書いたマナーの本も礼儀上、厚意を示すためにプレゼントしてくれたようですが、ラファエルはその本がお気に入りで週に何回も寝室でそれを読みあげ、エレナが枕で耳をおさえて悪態をつくという楽しみ方をしているようです。
逃げたヴァンパイアはまだ若く、元は会社のCEOだったと話し、執事に部屋を案内させようとすると、客間からみえる庭園の赤い薔薇が雪のなか狂い咲きしていました。匂いをたどりながら追跡すると、別荘地でターゲットを見つけますが、突然地震が起こり地面が陥没し、彼がいる別荘を飲み込んでいってしまいました。エレナは危うく難を逃れますが、なぜか翼に痛みを感じ、飛ぶことに抵抗を覚えますが、何かの時に痛めてしまったのかもしれないと思い、仕事を続けます。
陥没した部分の底にはマグマがのぞき、ターゲットのヴァンパイアはマグマに落ちて死亡してしまったようです。他の建物にいたらしい人間たちも外に飛び出してきていて、ラファエルもエレナから連絡を受け、やってきました。エレナを癒そうとしますが、キャスケードが再開したとするなら少しでも力を保っておいて、私は治療師に頼むからと断ります。エレナの頭の中で「2人のうち一人が死ななくてはならない、それはお前だ」と自分ではない声が響いていました。
エレナがイマニに事情を説明しに戻ると、愚かな子、でも賢くなれるほど生きられなかったのねと寂しそうです。「コンソート、お疲れのところ、敬意をもって事態の経緯をご自身で伝えにきてくださり、感謝します。ご厚意忘れません」と頭を下げられます。
部屋に戻るとベッドに倒れ込むエレナ。インフルエンザをひきこんだときのような体のだるさと発熱、翼の痛みを感じますが、サラに報告の電話をします。サラからはハンターが自分を見失ってしまったときに暗殺する処刑人のチェイスが亡くなってしまって、いまは夫のディーコンが一部の仕事を肩代わりしているものの、本人はいま武器製造職人としての仕事も評価が高く、何よりも家庭人としていきたいということでハンターは引退している身のため、誰に処刑人の仕事を引き受けてもらったらいいだろうかと相談してきます。エレナにディーコンのバックアップをしてもらえないかと。エレナは以前自分のトレーナーだった人物が子供を殺そうとしたため処刑したことがあります。ギルドのなかで一番肉体的に傷つきにくく、タフなのはエレナなので、処刑人としての仕事を引き受けるとサラに言います。
エレナが外を見ると庭に白いフクロウがたくさん集まってきているようです。不思議に思いバルコニーに出てみると、白く、金色の眼をもつフクロウが静かに見つめてきます。触ろうとすると白い雪でした。ラファエルは陥没の箇所を立ち入り禁止にする作業の指示や手伝いを現地で行っていたようですが、全力でエレナのもとに向かい、途中リージョンに白いフクロウのことを尋ねたようです。リージョンは以前の記憶がないはずなのに、なぜか金色の眼の白いフクロウのことは記憶にあるけれど、その意味は覚えていないということでした。エレナの翼は筋肉が未発達の幼児が使い過ぎで痛めてしまったときの症状に似ていると治療師に言われたと拗ねたように話すとラファエルが手を当てて治してくれます。
エレナがラファエルと温室でくつろいでいるとイリウムがやってきます。和やかな雰囲気のなかで突然、エレナが心臓発作のような痛みに襲われ倒れます。心配するラファエルとイリウム。ラファエルは自分の新しい力で治そうとしますが、効き目がないようです。キャスケードの影響も考えられ、イリウムは領土の警戒と、アオドハンなど身近なひとを心配してその場を離れました。ラファエルはエレナを治療師のもとへ連れていきます。機能的には異常が認められず、原因がわからないので、詳しくスキャンしたいということで更に移動して詳しく検査しますが、ケルももう一人の治療師も原因がわかりません。また普通なら治っているはずの傷が、いまだに治りません。エレナが重要な傷から身体が優先順位をつけて治していっているんではないかとケルに言うと、そうかもしれない、でもそうだとしても、傷が治る速度はまるで人間のようだ。エレナはもう人間ではないのに・・・・。人間から天使になった存在の記録はまったくないようで、とにかく様子をみようということになります。
ラファエルはエレナを猛烈に心配していますが、過保護になりすぎると二人の関係がおかしくなってしまうと、エレナは今日だけは許すけれど、それ以上は駄目、と釘をさします。ラファエルは彼女に何かあれば自分はどうなるかわからないと思いながら、辛い思いを飲み込み、彼女の自主性を尊重しようと決めています。
エレナは母や姉たちが血まみれになっている悪夢を見て、脳内に自分ではない声で「一人は生き、一人は死ぬ、お前は死ぬ運命だ」と宣告されます。
アシュウィニはエレナと出会うと、これから出かけるヴァンパイアが惨殺された現場のことを少しおしゃべりした後、「唐突に白いフクロウは恐れることはないわ、使者のさらに使者だから」と告げ、迎えに来たジャンピエールのバイクに飛び乗って現場に行ってしまいます。
ドミトリとおしゃべりしたい気もしたものの、機嫌のわるい今対面すると殺し合いになってしまう可能性があるため、リージョンたちに会いにいくことにしたエレナ。以前にもまして緑が茂っていて、そこの壁ではベテランのヴァンパイアのトレースと、ホリーが壁登りの競争をしているところでした。奇妙な組み合わせに感じたものの、面白く競争を見学して、リージョンたちの住処に入っていくと、エレナはリージョンたちに歓迎されます。見てほしいものがある、といってまた良い香りのするみたことのない植物や大きく育ったイチゴを見せてくれるので、一粒摘み取って口に入れると、甘い汁がしみでて、その付近もピンク色に染まります。驚くエレナ。その変化は私の悪夢が作ったの?と尋ねると、そうだとリージョンが返します。見たことのない植物をもらいたいと頼むと苗を分けてくれました。
自分の心臓発作のような症状は知っているか、キャスケードの影響だろうか、もしくは天使に変化したもののことを知っているのか尋ねますが、はっきりした答えは返ってきません。彼らたちはしばらく自分たちで話し合った後で、心臓発作の症状であなたは死ぬことはないでしょう、と答えます。住処の出口に置いてもらった苗を「誰か温室に運んでもらえる?」と頼んで出ていくと、再び激痛に襲われるエレナ。ラファエルは再度の戦闘に備えて実践的な戦闘訓練をイリウムや飛行隊たちと行うために出掛けています。心配をかけてもしようがないと本能的にラファエルに連絡してしまいそうになる自分をぐっとこらえます。
そこに父のジェフリーから硬い声で連絡がありました。義理の息子のハリソンが怪我をして危篤だというのです。治療師たちのところにいくと、そこにいたのはルミナリアで隔離されていた彼がいました。彼はケルのもとで治療師としての訓練も始めているようです。現場には秘密を守ってくれる家族の二人しかいないけれど、義理の弟を助けてもらえるかと尋ねると来てくれるというので、一緒に向かいます。
エレナは翼は意識していないと上がらなくなっていました。ベスとハリソンの家へ駆けつけると、瀕死のハリソンと、出欠をおさえるジェフリー、周囲を警戒している半分だけ妹のイヴリンがいました。ジェフリーたちはベスの誕生日プレゼントを届けにきたところ、応答がなかったので、プレゼントを家のなかに置いておいてあげようと入ったら、誰かが逃げていく気配がして、ハリソンが大怪我をしていたということのようです。
失血量が多すぎ、エレナが自分の血を上げてもいいと言いますが、天使になったものの血を与えるとどういう影響があるのか判断がつかないから危険すぎる、人間の血ではここまでの怪我を回復するには十分な力がないと言われ、ドミトリにエレナが電話します。すぐに誰かを向かわせると言われ、ジェイソンがすぐにやってきました。エレナは彼がシティにいることすら知りませんでしたが、どうやら任務から帰ってきたところに連絡を受けたようです。
彼の力強い血でなんとか命を取り留めることになりそうなハリソン。さらにドミトリが送ってきたタワーの人材たちがハリソンたちを搬送してくれることになり、どうやら祖父母のところにいるらしいベスと娘のマルガリーテの身の安全の確保と、事情を説明しに向かいます。ジェフリーは外は寒いからと言ってイヴリンにコートを着てくるように指示し、驚くべきことにエレナには彼の香りののこるマフラーを渡してくれました。その香りから、いまのようでなかった昔の父の思い出が沢山蘇ってきて涙があふれそうになるエレナでした。
祖父母たちは、自分にいっこうに打ち解けてくれないジェフリーに困っているようですが、彼しかしらない彼の妻であり、自分たちの娘であるマルガリーテの話を聞かせてほしいと願っているようです。ベスはハリソンのところに行きたいと言い、娘のマルガリーテは祖父母が見ていることになります。
ジェフリーたちは車でタワーに向かうことになりますが、エレナは危うい翼の状態をラファエルにばれないで戻るにはどうしたらよいだろう、歩いて帰るわけにもいかないしと思案し、近衛兵に指名したイジーのことを思い出します。彼なら頼めば自分の秘密をラファエルにも話さないでいてくれます。彼はすぐにエレナをエスコートしに迎えにきてくれ、エレナは自分の翼の状態を危ぶみながらも、なんとかタワーに戻ることができました。
ハリソンはタワーで治療を受けており、ベスは彼に付き添っています。ベスは全く違うタイプにみえるホリーと仲がよくなっているようで、ホリーは雑誌や差し入れのお菓子をもってお見舞いにきてくれていて、エレナと入れ替わりに帰っていきました。
ベスはマギーを守るために、今までなら聞かなかっただろうけれど、この数日ハリソンの様子がおかしかったので事情を聞いたとエレナに話します。何の気なしにやったことが誰かに危害を加えることになってしまったら、それは罪なんだろうかと言っていたようです。詳しく聞こうと思ったところでマギーの世話に手をとられて出かける時間になってしまった、と。
ベスを送りにジェフリーとグエンドリンが来てくれて、まずベスが車に乗り込みますが、ジェフリーも車に乗り込もうとする直前、身をひるがえして痛いほどにエレナを抱きしめて、去っていきました。ジェフリーとマルグレーテの残された子供は二人。ジェフリーはなんとしても失いたくないのに、エレナが命を失うかもしれない危険のある職業についていることにジェフリーが怒りを抱いていることをエレナも感じています。
エレナはベスの近所で聞き込みをしようとすると、防犯カメラがあることに気付きます。早速隣人の家のベルを鳴らし、ビデオを見せてもらうと、帽子やコートなどで人物の特徴は隠されてしまっていますが、不審者が映っていました。お願いして隣人に記録をもらい、偶然居合わせたランソムのバイクにタンデムさせてもらい、タワーに戻ります。ランソムはニーリーに頼まれて、将来子供ができたら家族で住むような家を探しているようで、下見でその地域を見に来ているようです。
あまりにもお腹が減るので、お腹に虫でもいるのかとタワーにいる治療師にエレナが聞くと、いまのことろ虫はいないと思うけど、あなたにはすばしっこくてふわふわ飛ぶちっちゃな寄生する存在がいてもおかしくないわね?と言われます。寄生?とエレナが緊張すると、この前の検査では陰性だったけれど、大天使の遺伝子をもった寄生する存在ともいえる胎児は、あなたのエネルギーを膨大に奪い取っていくわよと言われます。エレナは若すぎるのと、不死の存在には完全になり切っていないため、まだ妊娠しないだろうけれど、十分にエネルギーが身体にないと大天使の遺伝子を支えきれないだろうと言われます。子供のことは考えてもいないエレナは治療師のからかいにかなり驚かされていました。
ヴィヴィクに会いに行くと彼はリハビリのため不在でしたが、イリウムがやってきます。今日は彼の恋人だった人間の女性が天使の秘密を話してしまった罰として彼のことを忘れてしまった記念日なんだと沈んだ様子で、エレナ自身も母の悪夢を忘れたいと思っていて、最初はエロティークにでも行こうかと話していましたが、結局美しい夜空を楽しもうということになります。エレナは翼の状態がよくないため治療師に少しでも異常を感じたらそこが海の上であろうと降下するように、翼はしばらくの間身体をうかせてくれるけれど、海面に叩きつけられたらコンクリートに墜落するのと同じだからと警告されます。イリウムは君を墜落させるようなことはしないと約束し、時々自分の飛行技術を自慢しながら、エスコートしてくれます。噴火の跡地を通りかかると、警備の担当の天使がエレナとイリウムに敬意を表して挨拶にきます。タワー配下の天使ではない孔雀のような服装の天使のことを脳がアメーバだとけなしつつ、仕事に戻っていきます。噴火口に近づいていくと、着飾った天使が街で亡くなったヴァンパイアのことを口にしているのをエレナが聞きつけ、そのあたりを一緒に散歩することにします。
どうやら2名亡くなったうちの1名をよく知っていたようで、罪深いほどハンサムで、うぬぼれていて、女たらしだったと話してくれます。女性に恨まれていても驚きはしないけれど、彼の好みははっきりしていて相手は女性だけ、特に子供には興味のない人物だったそうです。現場は男性同士の痴情のもつれのようにも見えたため、そこに女性の嫉妬という要素が加わるのか、ハリソンとの事件との関連性はないのか、疑問は解消しませんが、その天使とはそこで別れ、
エレナが溶岩をながめているとボコボコと泡立つ溶岩にフクロウの姿が現れ、古い気配のする声が聞こえてきます。お前は死ぬ運命だ。ある人物を生かすためにお前は死ぬと言われます。エレナは私の運命は私が決めると話しますが、もしもラファエルを生かすという選択だったら自分は迷いなく死ぬだろうと気づき、その運命があるとするならどういう経緯でなるのだろうと考えこみます。そのメッセージは周りには聞こえていないようでした。
イリウムとの帰路、マンハッタンに近づくと、私がいない隙にイリウムとふざけっこかと海の香りの思考が話しかけてきます。ラファエルが帰還しました。ラファエルが急降下し、エレナを捕まえると、イリウムは手を振って離れていきました。ラファエルが彼を忙しくさせておくために国境の警備に向かわせたようです。
ラファエルはエンジェルダンスをしましょうと訴えるエレナの瞳に悪夢の名残を見て取ると、私は君を置いて行ったりしないと約束し、海の上でのエンジェルダンスに連れ出します。二人は空からオナー号と名付けたドミトリの新しい船をみかけ、私も何か新しいものを買ってハンターエンジェル号と名付けたほうがよいだろうかとラファエルにふざけられ、エレナは胸に軽くパンチで応酬しました。
大天使のグラマーで姿は隠され、上空に舞い上がった二人ですが、上腕の傷が燃え上がったように見え、エレナは腕が透けてしまったように感じます。ラファエルは即座に家に戻ろうとエレナを連れ帰ります。すぐに治療師に見せようとするラファエルですが、エレナはあなたを感じたいと譲りません。ひょっとして古の天使がまどろみのなかでエレナに干渉してきていようと、私に永遠をくれた約束からは絶対にきみを解放しない、とラファエルは宣言して衣類を脱ぎ捨て、二人で空に舞い上がります。
空で愛し合う二人ですが、愛しているわとエレナが伝えると上腕が再び燃え上がり、こめかみに爆発するような痛みが襲い、精神的につながりあっていたラファエルもそれを感じます。
家に戻った二人ですが、私のクロスボウが! モンゴメリーを赤面させたくないから早く私を隠して!と我に返ったエレナがラファエルに命じます。ラファエルは誰を恐れることもない大天使ではありますが、いけないことをしている若者の気分でいそいでエレナの宝物を庭から回収し、自分の書斎をこっそりとふたりで通り抜け、部屋へとあがります。
愛を交わした後、眠れないエレナは今日あった出来事を話し合いましょうと治療師のブラックユーモアの件やハリソンの事件の捜査の経過など話し合います。また頭の中に聞こえてくる声やフクロウのことも話します。古いふるい声だった、キャリエーンよりも、アレキサンダーよりも。それに今考えてみると女性らしい雰囲気があったとエレナが話します。伝言の内容が予言めいているから、ジェサミーに聞いてみようとラファエルが提案します。なにか言い伝えのようなものが伝わっているかもしれない。ハリソンのようにラファエルが襲われ死にそうになったらと考えると怖いというと、ラファエルは大天使を傷つけるものはほとんどないが、エレナを失うことがあれば、私は怪物になるだろうと思います。エレナが、あなたが少しだけ人間になったように、私も少しだけ不死になった。二人が力を合わせてリージャンをやっつけたように、今度の敵も二人で力を合わせて追い払いましょう、ふたりで。とラファエルに話し、ラファエルもふたりあわさることで特別の力が生まれていたことに改めて気づきます。
翌日エレナはハリソンを監督している天使であり、ラファエルの部下のアンドレアスの秘書からアポイントをとりつけ、アンドレアスの家を訪問します。以前彼がヴァンパイアを拷問して、裸で家の森に吊り下げたりするのをみたことがあるエレナは彼のことを苦手に思っています。イリウムが彼と交流があるようだったので不思議に思って聞いてみると、彼はもう一つの天使の飛行隊の隊長だから密に連絡を取り合っているよと聞かされエレナは驚いていました。
家に着くと、アンドレアスは大剣2本を使い、型を行っていました。一通り終わって汗をかき、目を輝かせている様子をみて、エレナはラファエルが見ている飛行隊の隊長として隊員から尊敬される戦士としてのアンドレアスに初めて会ったと思います。剣を褒めると見せてくれますが、古の大天使が鍛えたものだそうです。ディーコンにも見せてあげたいとエレナが言うと、もう彼はこの剣を握ったことがあり、彼が死ぬ前に一そろいの剣を鍛えてほしいと命令したそうです。アンドレアスが身ぎれいにする間、居間で待たせてもらい、戻ってくると歩きながら話しましょうと頼みます。
庭を歩きながら、ラファエルよりも年上の彼のさらに高齢の両親の話が話題に出て、エレナは私は伴侶としてあなたの両親の訪問を知っていないといけなかったの?と緊張しますが、大丈夫です、彼らはもう少しあなたに立場に慣れる猶予を与えようと思っていますからと話します。ラファエルがキャリエーンの乱心のあとに行動があれたことがあって両親が心配していると聞かされ、エレナは好奇心にはちきれそうですが、内なる大きな怒りや悲しみが極端な行動に走らせることは自分自身を顧みても理解できると思います。アンドレアスはエレナをからかっていただけで、今では両親はラファエルのことを心配していないそうですが、本宅への食事の招待は喜んで受けるだろうとのことです。アオドハンの姉が12000歳で子供を産み、周りは赤ちゃんに夢中ですが、エレナがめったに子供が生まれないことを考えると無理もないということを言うと、赤ん坊が赤ん坊を生んだようなものですとアンドレアスが言い、それは本心からの言葉だろうとエレナは思い、妊娠について治療師にからかわれたことを思いだします。
社交辞令がすんだところで、彼に聞きたいと思っていたヴァンパイアの件を切り出したところで、エレナは激痛に襲われ、リージョンたちが頭の中で「エレナ、アクエアリ、エレナ、アクエアリ」と呼びかけてきて、ぴたっと止まります。なんらかの方法でリージョンたちが痛みを止めてくれたようです。アンドレアスはラファエルに信用されていないからリージョンという警備がついているのかと言いますが、エレナは誉め言葉かどうかはわからないけれど、リージョンたちはエレナが稀な者だと言っていて、だから始終ついてくるの、と言って安心させます。
アンドレアスはハリソンや自分が監督するバンパイアたちの記録を管理している係を呼び、自分の記憶している限りでは一度契約から逃げ出して罰を与えた後はハリソンは自分の仕事を行っていて、今回の事件には自分も驚いていると話します。見せてもらった記録にも目立ったところはなく、ハリソンがヴァンパイアになったばかりのころに交流があったと思われるアンドレアスの屋敷の使用人たちにエレナは話を聞くことにします。アンドレアスは自由に話を聞いてもらって構わないと許可を出して、イリウムとの訓練に飛び立っていきました。
若いヴァンパイアたちに話を聞こうと台所に顔を出すと固まられてしまいますが、料理版からハリソンとはもっと若いヴァンパイアたちが交流があったと言われ、彼らが雪かきしている庭に出ていくと、3人が楽しそうに雪かきしていて、一人はエレナの顔見知りでした。残りの二人に紹介してもらい、ハリソンのことを聞くと、一人が青ざめ、その場から逃げ出そうとしますが、白状します。ハリソンは他人の告げ口をして、アンドレアスのポイントを稼ごうとしていたというのです。告げ口された人物が彼を恨んでいるということは十分あり得ます。
若いヴァンパイアたちによると、ジェイドというのが問題の人物で、いまはどこにいるかわからないようですが、アンドレアスからお金を盗んでいたことをハリソンに告げ口され、罰として生皮をはがれ、木に吊るされていたそうです。その事件のあとにハリソンが逃亡を図ったため、ひょっとしたらサイコパスのジェイドが怖くて逃げだしたのかもと思ったけど、アンドレアスに言えば対処してくれるだろうし・・・と教えてくれました。ハリソンは罰のあとは他の使用人たちとは交流せず、家にすぐ戻っているようで、妻も幼い子供もいずれは彼を残して死んでいくことを考えたら一分を惜しんで一緒にいたがるのも不思議はないと同僚たちは考えて彼をそっとしているようです。
ラファエルはリージャンのあと中国を治めているファヴァシが軍隊を集めているとの報告をジェイソンから受け、キャスケードの影響か、侵略戦争をもくろんでいるのか、警戒を強めています。さらにイライジャと話し合いをするべくお互いの領地の境目まで飛んでいきました。キャスケードによりラファエルの領土にリージャンがやってきたように、イライジャは猫や鳥などの動物を魅了する力が強まっていて、話している間にもイライジャの腕にハヤブサが止まったり、肩に飛び移ったりしています。ラファエルがファヴァシが中心部に軍を集めているという情報を伝えると、イライジャは感謝して、自分のところのスパイマスターが帰還したら、わかったことを伝えようと約束します。どうやらファヴァシの領土内で村人が忽然と姿を消しているようで、リージャンに心酔した信仰者なのか、それともエネルギーを吸い取られたのか、領土に深く潜入してどのような事情なのか探っているところのようです。イライジャは平和ができるだけ続いて欲しいと願っていますが、ネハからの電話でファヴァシの宮廷に派遣していた彼女の大使を召還したとの報告があり、戦争一歩手前の状況だということを危惧しています。お互いの領土不干渉というのが大天使衆の暗黙の了解であり、勝手に領土に入れば即座に戦争となるため、なんとかしてファヴァシに自分たちを招待させようとイライジャは提案していました。
エレナの身体の状態はどんどん悪化しています。動けなくなる前に、ベスとマギーの身辺の危険をつぶしておかなければとますます精力的に事件の調査に動き回っています。
サンティアゴ警部に電話するとハリソンの昔の仲間ふたりが黒焦げになって数か月前に亡くなっていて、火事の前には非難するようにという男性がアパートメントに訪れていて二人以外の被害はなかったということです。この二人については、路上の娼婦から彼らが薬物でハイになり、自分たちが意識が戻ると身体はびしょびしょで、強●の調査に備えて体内の遺留物を水で洗い流されたことがわかったということです。捜査はしたものの、被害者が札付きのワルだったために、何か知っていたとしても誰も警察に協力しようとしなかったかもしれないとのことです。そして別の麻薬ディーラーの二人の事件、そしてハリソンの事件。事件の起こる間隔が短くなってきて、エスカレートしているようです。ヴァンパイア用のドラッグが絡んで繋がっているのではないかと思われます。事件に関係しているかどうかわからないですが、いまクオーターにはヴァンパイアのヤクザグループがいると警部は教えてくれました。
ラファエルのセブンのひとりナージルの妻であり、ジェサミーの弟子でもある歴史家のアンドロメダからエレナに連絡が入りました。白いフクロウと一緒にいるライラック色の髪をした大天使といえば、カサンドラではないかと。古代の天使というより実在を疑われている伝説の大天使で、いわば天使の起源に近い存在だそうです。彼女は予知を見なくなるように自分の眼をえぐったそうですが、それでも予知を止められなかったそうです。
でかけようとバルコニーに出ると白いフクロウがいて、エレナはそっと撫でてみます。大天使の姿が現れ、予言を繰り返します。フクロウが消えると、リージョンがやってきて、彼女のことを思い出したと話します。彼女はアクエアリを愛していたと。エレナがキャスケードの影響でカサンドラは進化して予知力を得たのかと確認すると、そうだと話します。そしてその時はわからなかったけれど、カサンドラはエレナのことを予知していたと。人間生まれ、墜落、アンブローシアの甘いキス、夜明けの翼。
ドミトリのところに行くと、大天使の血を吸ったらいいんじゃないかと提案されます。からかわれたのかと思いエレナはカっとしますが、存外ドミトリは本気でした。ラファエルが帰ったら相談してみることにします。
事件の情報を共有するためにアッシュとジャンピエールを探すと、地下のトレーニングルームにいました。わかった情報を交換すると、ハリソンの元仲間たちが襲った娼婦たちも1か月ほど前に薬物の過剰摂取かなにかで脳みそが破壊されてしまい、情報が取れなくなってしまったとアッシュが教えてくれます。今回のヴァンパイア用薬物はニューヨークの高位のヴァンパイアたちはドミトリとラファエルに厳しく統制され、まったく浸透していないようですが、見境ない低位のヴァンパイアに数人被害が出ている程度のようです。合流してきたドミトリが、ハリソンは強●や薬物の販売に関わっていないのかと尋ねますが、今のところは事件にかかわっている証拠は出てきていないけれど、もしも犯人の一人ということになれば、私自身で処刑するわとエレナが断言し、ドミトリも小さくうなずき了承します。
エレナの腕に激痛が走り、本能的にラファエルに助けを求めてしまいます。助けて!今どこにいるの?と聞くとニューヨークから2時間のところだ、今どこにいるんだ、エレナ! 治療師を向かわせる、今どこだ! 寝室のそばの通路・・・。エレナが倒れて丸まっているとラファエルが扉をあけて入ってきます。幻かと思われますが、エレナを抱き上げると寝室へと運び込み、すぐにその場に治療師が飛び込んできます。
ラファエルの身体は燃え上がり、光り輝いていますが、治療師は一瞬ラファエルの姿に驚いたものの、すぐにエレナを診察し、身体の中のエネルギーが枯渇している状態だと説明します。自分の血は役立つだろうかとラファエルが聞くと、試してみてもいいでしょうというので、手首を切り、自分の血を自分の口に含むとエレナの口に流し込みます。エレナ、君なしでは永遠を生きられない、と語り掛けると明らかにエレナの状態がよくなり、アンブローシアの味がすると言って目覚めますが、開いた目をみると不死の存在となってからあった銀色の輪が消え、人間のグレーに戻っていてます。治療師を下がらせると、エレナの羽は傷もなく、引きずらなくなり、回復したようですが、何枚かの羽がはらりと床に落ちていてエレナはラファエルと心話を使えなくなっていました。
翌日ラファエルは自分に強いて仕事に出掛け、エレナはリージョン何人かをエスコートにしてヴィヴィクが見つけ出してくれたジェイドのリッチなアパートメントに正面から乗り込みます。タワーがエレナの家族については厳しい情報統制をおこなっているため、ジェイドはハリソンがエレナの義理の弟であるということは知らず、単にハリソンの事件の捜査にハンターとして来たのだと思っています。ジェイドはアンドレアスに罰を与えられた後、困窮しつつ、ゲーム作りで成功し、ゲームの課金や年会費などで苦労してお金を生み出してきた、金は力だ。ハリソンが憎くないとは言わないが、時間をかける価値もないし、しっかりとしたアリバイもあると言います。エレナは彼が自己愛の強いソシオパスなのははっきりとわかったものの、事件にかんしては正直に話していると感じ、念のためヴィヴィクに追跡調査を頼むつもりではあるものの、その場を離れます。
エレナはハリソンを見舞い、付き添っているラリックからいつ昏睡状態が冷めるかは本人次第という話を聞いて、ベスとマギーに会いに行きます。公園で遊んでいたマギーや他の子供たちと鬼ごっこをして遊び、ベスを出し決めると、また羽が抜け落ちていました。
ラファエルがエレナが心配な気持ちを押さえつけ、領土内の仕事に飛び回り、本宅に戻ってきました。エレナがいそうな場所に着地しようとすると、そこにはガレンや、イリウム、ヴェノム、ドミトリ、ディーコンやジャンピエールなど彼が信頼する部下たちが集まっていました。エレナはガレンと一緒にきたジェサミーをつれて親友のサラの家に行ったようです。セブンはそれぞれが重要な仕事を担っていて、なかなかこれだけのメンバーが一か所に集まることはありません。エレナから心配事は置いておいて、この瞬間を楽しみなさいというメッセージを感じ、ラファエルは部下たちと和やかな時間を過ごします。ディーコンがガレンに依頼されていた大剣を仕上げて持ってきていて、早速剣をふりまわし、使い心地を試していました。
ラファエルのところにやってきたヴェノムが、リージョンはなんだか気味が悪いと言うので、ラファエルは自分こそ周囲を怖がらせているのにと内心愉快に感じていると、自分は一人だけれど、それが700倍ですよ?と言いラファエルもそうだなと思ったようです。その場にいたイリウムが、一緒に飲まないかと誘いに杯をあげると、リージョンの隊長が寄ってきて、受け取り、一気に飲み干し、この味には覚えがあるといって、また他のリージョンたちの待機しているタワーの低い建物の屋上へ戻っていきます。
リージョンの羽のない独特の翼を明るく照らす月夜で、空が金色に光りました。ラファエルは翼をもつセブンには待機するように言い置いて空に高く飛び立ちますが、エレナだけはそばに迎え入れます。空を切り裂く稲妻は、何度もなんどもラファエルへ向かっていき、ラファエルの身体が黄金に光ります。イリウムの身体にパワーが集まり破裂しそうになったときと同じようなことが起こっているようですが、ラファエルには受け止める力があるようで、痛みなどはなく、ただエネルギーがチャージされていきます。不思議とそばにいるエレナには何の影響もありません。
ラファエルはこの力でエレナを癒そうとしますが、効き目はありません。エレナは自分の身体が人間に戻り過ぎてしまって大天使としての力は身体が受け付けなくなってしまったのではないかと話します。そしてジェサミーとエリックを癒せるようだったら癒してみてほしいと頼みます。エレナの胸に突然痛みが走り、ファスナーをおろしてみてみると、ラファエルの額のマークとそっくりな柄が現れていました。
帰宅後にリージョンに確認すると、エレナのマークはラファエルの印と同じではなく、暗い印だと言います。エレナは、自分たちが鏡合わせだという予言を考えると、エレナの印の位置がラファエルの印と鏡合わせになっていることと符丁があう、どちらかが死ななければならず、それはお前だという予言の声がエレナの頭の中に蘇ります。ラファエルがキャスケードの影響で強大な力を蓄えることで変わってしまうことを心配してエレナが少しだけ人間でいてね、と頼むとラファエルは私の心の一部はずっと人間でいると約束する、と彼女の手を金色の輝きと共に握りしめます。
エレナの不具合はラファエルのあたらしい力で治せませんでしたが、回復しつつあるヴィヴィクの状態を考えると、片翼の萎えたジェサミーには効果があるのではないかと考え、ラファエルはガレンとジェサミーに治療を申し出ます。
ガレンが見守るなか、ラファエルが治癒の力を送りはじめます。次第に光は大きくなり、直接患部がみえないほど明るく光りました。ジェサミーははじめ変化を感じず、触られても感覚がなく、がっかりしていましたが、「痛いわ」といいはじめて、ガレンが殺気立ちます。数千年伸ばされていない筋肉が固まり過ぎてしまったため、すぐに普通に使えるようにはならないようですが、よじれていた翼の部分が正しい位置になり、筋肉の存在を感じられるようになっていました。リハビリを必要としているヴィヴィクのように、ジェサミーも実際に使えるようになるためには訓練したほうがよいとエレナが提案すると、彼女はリハビリ療法士の援助を喜んで受け入れ、取り組むことになります。
エレナは翼を治療師のニーシャに診てもらうと、まだ墜落することはないだろうと言われます。動けるうちに、ハリソンの件を解明して、ベスを安心させてあげたいと強く思うエレナ。ベスは幼いころに愛してくれた家族を沢山失い、残された家族はジェフリーとエレナの2人だけ、その上自身も先が見えない今、ベスをできるだけ助けてあげたいと思う気持ちを理解するラファエルは、私が君の翼になる、大丈夫だと伝えます。
エレナは私たちがした約束はわかっているけれど、私がもし堕ちたら、あなたには生きてほしいと頼みますが、ラファエルは君なしでは永遠には生きることができないと言います。リージャンに対抗できるのはあなただけだから。ラファエルがエレナを抱きしめると、彼女の声ですが違う人物が「そなたは燃える剣、ラファエル、永遠の光の生き物 そなたが堕ちれば、世界は蘇るリージャンの前に持ちこたえられない」「死の大天使 悪夢の女王 影のない激怒 そなたの領土に死は蘇る」「そなたの終わりは来るだろう 新しいものと古いものの手によって 定命にキスされた大天使 眠りを妨げられた銀の翼の大天使 炎の目がある壊れた夢 」と話します。エレナは頭の中にたのはカサンドラで、これがむかし昔にカサンドラが得た予言だとわかります。
自分に人間性を与えてくれるエレナが死ねば、自分から人間性を奪おうとするキャスケードの力は強力すぎて人間性を保てないとラファエルが話すと、エレナは何があっても今のあなたでいると約束して、と強く迫りますが、守れない約束はできないと拒みます。運命を自分たちでかえて、私たちは生きよう。それしかない。とラファエルは宣言します。エレナは諦めるつもりはないと話します。数分後、溶岩の湧き出た地域で異変が報告され、ラファエルが対応に出掛けました。
エレナは、リージョン3名を伴って、なじみの屋台のベーグル屋へ行き、店主のピエロと雑談します。ピエロはエレナに資金援助してもらい、正規の自営業者になれたようで、路上で聞こえてくるアンダーグラウンドの情報を伝えてくれます。クオーターの被害者の女性の同室の名前がチャイナで、黒髪を前髪を額で切りそろえ、肌がきれいで青い目をしている人形みたいな印象からそのような名前だということのようです。ピエロは彼女の居場所のメモを見せてくれたため、ヴィヴィクに調査を依頼します。タワーのヴァンパイアで2番目の地位にいるヒラズという人物の不動産という結果でした。ヒラズのアパートに向かうと、そこにはナイトガウンをはおったチャイナがいました。
エレナはキッチンでゆっくりと話し合い、事件の日のことを聞き出します。事件があり、チャイナは怖くなって逃げ出し、走りに走っていた時にヒラズの車にぶつかりそうになったそうです。事情を聞いたヒラズは一緒に現場に戻ってくれましたが、意識不明のエリックだけがそこにいて、サイモンを殴り倒した男がルーシーを連れ去ったと隣人が言っていたそうです。
ルーシーとは路上で知り合ったルームメイトだったらしく、ドラッグの常習者だったそうです。ドラッグ供給者はヴァンパイアのニッシュとテリー。彼らはルーシーの動画を撮影して、インターネットでばらまいていて胸が悪くなるとチャイナは教えてくれます。彼らがサイモン・バークレーにルーシーを渡したようです。最初はサイモンもいい人のふりをしていて、同棲するようになり、深みにはまってしまったのがわかってきました。
ルーシーの父親が踏み込んできたとき、ルーシーたちは寝室にいましたが、チャイナは温かい場所で空腹を癒そうと居間でカップラーメンを食べていて、父親は顔を真っ赤にして横でトリップしていたエリックの喉首を掴みあげたそうです。驚いたルーシーが下着姿で寝室から出てくると、サイモンを殴り倒したので、ルーシーは父親につかみかかりましたが、父親は彼女のことは傷つけなかったそうです。チャイナは父親はルーシーのことを愛しているのだと感じたそうです。隣人が警察を呼んだよと騒いだので、チャイナはルーシーに声をかけてその場を逃げ出したそうです。
その様子を聞いて、エレナはサマリアという娘のいる同僚のアーチャーのことを思い出します。壊れた剣、悼む人。
エレナはタワーに戻ると、ヒラズを見つけ、チャイナの話の裏を取ります。ヒラズはチャイナから血を飲んでいるわけではなく、彼女のことを大切に思っていることがわかり、こんな状況ですが一人の女の子が幸せをつかんだことを嬉しく感じます。2か月前にクオーターで起こった火事の被害者はニックとエリックでしたが、そのことについてなにか噂を聞いているかと確認すると、彼はチャイナと一緒に戻った部屋の壁に留められたルーシーを囲む男たち5人の写真を見たことを思い出します。男は、ニック、エリック、サイモン、リー、そしてあなたの義理の弟でした。
アッシュに連絡すると、ルーシーは死んだわと言われます。
ピエロと雑談していたときにも、アシュウィニと話していたあとにも、エレナの翼から抜け落ちている数枚の羽。今日にも飛べなくなるかもしれない、飛べる気持ちを思い切り感じたいと思うエレナ。バルコニーでそばにいた白いフクロウたちは空へ飛び立っていきました。
ドミトリから義弟ハリソンの目が覚めたと連絡が入ります。5分だけ面会が許され、エレナが事情を聞きます。
どうしてハリソンへの傷害事件にルーシーが関係しているのかわかったのかハリソンにエレナが聞くと、犯人が自分の首を斬るときに「ルーシーのために。ルーシーがいなくなってしまったのに、どうしてお前はベスやマギーと一緒にいられるというんだ」と言っていたそうです。
ハリソンはベスの命にかけて、ルーシーと関係を持ってはいないと釈明します。仕事帰りに一杯というタイプのバーに立ち寄ったら、ルーシーからモーションをかけられたけど、愛する妻と娘がいるからと断り、偶然あとから来た顔見知り程度のニックたちに彼女を紹介したそうです。バーの店員にルーシーが頼んで一緒に写真を撮られたことは覚えているが、アンドレアスの急な呼び出しで帰ったのでその後のことはわからない。次にルーシーに会ったのは、サイモン主宰のパーティで、彼女は体重が半分ぐらいに減っていて、入れ墨だらけになっていて、あの笑顔も消えていたので、どういうことだとニックに言ったら、負け犬めとののしられたそうです。
ハリソンは、このまま放っておけば彼女の命はないと感じて、自分がエレナに話して、彼らから助けてやると申し出たそうですが、サイモンは彼女のことを愛していると信じさせていて、逃げようとしなかった。だから・・彼女の父親を呼んだ。彼はバーでの会話で、彼女の父親がヴァンパイアハンターなのに娘がヴァンパイアの恋人を求めているのを皮肉だと考えて、記憶に残っていたそうです。それで父親を探し出し、娘を心配していた父親にどこに行けば娘を見つけることができるのか情報を伝えたそうです。
ルーシーがリハビリから退院したあとに薬物過剰摂取で亡くなったときには、父親からお葬式の案内がきて、ハリソンはアンドレアスの仕事でアラスカにいたため、お悔やみの手紙を送り、父親からは3か月間親子の時間を持てたことを感謝する連絡が来て、その際にハリソンはニシとテリーにルーシーを紹介してしまい、申し訳ないと伝えたそうです。
エレナは、その父親が誰なのか分かった気がしますが、間違いであってくれたらと思いながら、「ハリソン、父親の名前は?」と尋ねました。
エレナはハリソンから聞いた内容をサラに連絡し、サンチャゴ警部にアーチャーの死亡状況の確認を依頼します。サンチャゴ警部との3人での電話会談になり、警部の説明によれば、当時大雨で車がスリップしてガソリンスタンドに突っ込んだから、アーチャーの車に乗っていた死体は火災で誰だかわからない状態になっていたそうです。死体は背格好などから本人とされたものの、今回再捜査の依頼を受けて警部は当時モルグから遺体がひとり分、行方不明になっていたことを思い出し、その遺体の記録を確認したら、アーチャーと背格好が一致したと説明を受けます。アーチャーが生存している可能性は高まりましたが、ファントムと呼ばれる彼を見つけ出すのは簡単なことではありません。ひとまず電話を切り、エレナはラファエルと共に最後の飛翔を楽しもうと考えていると、アッシュから2名の遺体が見つかったと連絡が入ります。
エレナが現場に駆け付けると、アッシュとジャンピエールがその場にいて、被害者はルーシーが質入れをした質屋の店主と、その妻でした。本名から追跡すると記録がヒットしたそうです。公正な価格での取引だったことも確認されました。殺される理由のあった男たちと違い、この件は、特にたまたま顔を見られてしまって殺されてしまったと思われる店主の妻については、アーチャーが怒りを抑えきれず理不尽な殺人衝動を覚える域に達してしまったことがうかがえます。エレナは自分の装備を確認すると追跡を始めます。アシュウィニがバックアップについてくれ、リージョン3人がガードとしてついてきています。走りながら携帯を出しますが、充電したばかりなのに切れていて、アッシュから携帯を借りると、エレナの手から強風に攫われてぶつかって壊れてしまい、エレナは頭の中の古い声に「ラファエルに梟を送って応援を要請して!」と命令します。ルールでは・・・と言い出す声にあなたは何も悪いことをしていない人を助けようとは思わないのというと、エレナの近くにいたフクロウが飛び立ちます。
翼が地面から持ち上げられなくなり、人間だったころよりも更に身体が重く感じられていますが、アーチャーについた返り血の匂いを追いかけて走ります。キャスケードなんてくそったれ! 私たちの未来は私たちが決める。途中、捨てられたジャケットとセーターを発見し、匂いを見失いかけますが、肉屋から出てきた店主が抜身の刀を持った男はあちらに走っていった!と教えてくれ、さらに走ります。雪がはらはらと舞い始め、羽も同じように落ちていきます。横に並んだアッシュが、エリー! 翼から血が出ているわ!と教えてくれますが、もう痛みも、翼自体の感覚もありません。
「エリー! 」弾丸がエレナとアッシュの間を抜けていきました。エレナは足首から銃を抜くと、引き金を引きますが、動きません。更に銃弾がとんできて、リージョンに押し倒され、二人のリージョンの頭部にヒットします。彼らは数分で再生しますが、エレナはここでアーチャーを捕まえなければ、取り逃がすと判断します。
見回すと、ゴミ箱など隠れ場所の多い20ヤードほどの狭いスペースで、スレイヤーにとっては迎え撃つには十分なスペースがありますが、動かない翼をもつハンターには不利な立地です。
アッシュは手裏剣を手に持ち、エレナはクロスボウを構え、ゴミ箱を盾に進んでいきますが、3発の銃弾がこちらに向かってきて、アッシュが被弾してしまいます。
ゴミ箱の後ろにアッシュを動かすと、撃たれたのは腿で致命傷ではないから、追いかけて! このあたりの人のことは知っているから、と言われエレナは追跡を再開します。銃弾が飛んできた入口に向かうと、リージョンが自分が先に行きますといい、エレナも譲りますが、アーチャーは店の別の出口から出てしまい、慌ててエレナたちが戻ると、リージョンを狙ってまた銃弾が発射されます。先ほどの銃撃で学習していたリージョンは剣で防ぎます。クロスボウで反撃しようとすると、どこかの段階で落としたようで、アッシュに銃があるか聞くと、壊れてしまって使えないと言われ、手裏剣を4つ貸してくれます。失血が多く気絶してしまいました。
アーチャーが攻撃に出てきて、切りつけたリージョンの両目に手裏剣を投げ込み、両目をつぶしたあとに首を斬り飛ばします。エレナがアーチャーの進路をふさぎます。先に撃たれた2人のリージョンがもうじき回復してくるはず。エレナとアーチャーは剣を切り結びますが、狭いスペースだけでなく、リーチの差も相手に有利です。隙をみてナイフと手裏剣を投げると、1つがガードをすり抜け当たりました。
最後の手裏剣をアーチャーに投げるとヒットしますが、剣を振りかぶってきたアーチャーをよけようとすると、エレナの足の腱のどこかが切れ、もつれてしまい、アーチャーの剣はエレナのおなかに突き刺さり、剣先は背中からつきでています。
エレナが冷たい地面に膝をつくと、「エレナ!」というラファエルの声が聞こえ、次の瞬間アーチャーは灰になっていました。ラファエルはフクロウに導かれ、限界のスピードで駆けつけてきたようです。「ごめんなさい・・・追跡を始めたときにはもう羽がだいぶなくなってしまっていたの・・・。戦いは運命だったのかも」「運命なんてくたばれ。未来は私たちが決めるんだ」
彼はニーシャに治療の準備をさせ、エレナを急いで本宅へ連れ帰ります。「ラファエル、私の翼が・・・」「翼は治る」ラファエルは何としても実現させるつもりでしたがエレナは翼が死んでしまったから切り落としてほしいと頼みます。エレナは正しいことを言っていると頭ではわかり、ラファエルの身体に怒りが駆け巡ります。力を失ってしまっている今、翼は彼女の身体に過大な負担をかけつづけています。でも彼女の身体から翼を切り取ることは・・・「ハビビ?」「ごめんなさい、大天使」「お願い」
エレナが彼を何度撃ったとしても、これほどの痛みは感じることはなかったろうと考えながらラファエルは彼の腕の中でエレナの身体を立たせるようにして、体内の血を下におろし、彼の力を研ぎ澄まして、翼を地面に切り落とし、傷口をすぐさまふさぎます。彼女をすぐさま抱き上げると、家の中に駆け込みます。
モンゴメリは顔に恐怖を浮かべますが、すぐに救護品をおもちしますと申し出ます。ニーシャがすぐに来る、と言い置き寝室へ運びます。人間の医者を呼ぶべきだった!とラファエルが気づきますが、エレナが血まみれの指をラファエルの頬にあて、見て、というと厚い白い皮が皮膚を覆い始めています。ラファエルがぬぐっても、ぬぐっても、葡萄の蔓が地面を覆うように再生されてきます。キャスケードは人間の営みとは別のこと。
ラファエルは手首を裂き、血を彼女の口のなかへ注ぎますが、お腹の傷から金色の光が流れ出てきてしまいます。彼女の瞳は人間の灰色に戻っていました。なぜ私の力を受け付けないのだ? 私は人間なの、とエレナはせき込むと血を吐きます。
時間だ、炎の子よ 彼女は生きねばならない者のために死なねばならぬ
生きねばならない者とは誰だ? そのものを殺せば、エレナは生きられるのか。彼女が生きねばならない者だと言われますが意味が通りません。ニーシャが部屋に飛び込んできました。
エレナの血で寝室のベッドが深紅に染まっています。エレナの「変化のとき」という呟きを聞いて、ラファエルに希望がわいてきました。これは彼女の進化のステージだろうか。例えば蛹の過程を経て蝶に変身するような? それで全身を覆うようになってきた白いものの存在が理解できる。
頭の中のカサンドラの声が「その通り」と答えます。ただし、目覚めるのはもう一人の彼女。ラファエルが辛抱強く、エレナに何が起こるのか、と尋ねます。記憶、思考、笑い、涙、これらは生き延びられないだろう。もう一人の彼女は新しく生まれ変わる。
恐怖が彼をわしづかみにします。エレナ、よく聞いてくれ。ハビビ、私はあの約束を覚えている。「私は影として生きるより、エレナとして死にたい」
キャスケードはなぜエレナを殺そうとするのかとカッサンドラに尋ねます。彼女は私の心の鼓動で、リージャンと戦える理由でもある。リージャンに対抗できるワイルドファイヤーを作り出せるのは、彼女の死にゆくものとしての心だ。カッサンドラは、あなた自身の肉体には十分なワイルドファイヤをため込めないため、器としての存在が別に必要なのです、と答えます。
彼の激怒は冷たいものへと変化しました。私はリージャンのように他人からエネルギーを奪ったりしない。自分の伴侶をエネルギー庫にしたりしない。私には彼女が必要なのだ。
いつも冷静さを失わないニーシャが、強くすすり泣きながら、「サイア、どうしても傷を閉じることができません、私の力が拒絶されてしまうんです」というと、ラファエルは自分たちは決断を下さなければならないから、席を外すようにと命じます。
エレナはかろうじて意識を保っていました。ラファエルが事情を説明し、第3の解決策を模索しなくてはと言いますが、エレナの手は丸まり、瞼は痙攣しています。ラファエルの思考が突然冴えわたりました。
エレナ、私は君の記憶をすべて受け取ることができる。君の身体が戻るまで、私の体の中に君を保ち続けよう。信じてくれ。君自身を損なったりしない。私の奥深くで守ってみせる。
「しんじてる・・・いつも」
エレナの記憶を取り出そうとしますが、ラファエルの力がすり抜けてしまいます。大天使さえも一つの身体に二つの心は保てないのかもとエレナが言いますが、ラファエルはキャスケードに君を奪わせたりしない、と言い何度も試み、そのたびにエレナは消耗していきます。
「クベクベク、愛してる、ラファエル」彼女は息だけで伝えてきました。
彼女は彼の腕の中で死にかけ、翼は奪われ、未来は消し去られました。ラファエルは背中をのけぞらせ、痛みと怒りで絶叫しました。彼が視線を戻すと、プライマリーがバルコニーの外にいることに気付きます。他のリージョンたちも一緒です。なぜキャスケードはリージャンと戦える力が私にあることにこだわるのか、と誰ともなく聞きますが、カッサンドラは応えません。ところがプライマリーが、キャスケードはただ混沌を求めているだけなのです。ひとつにまとまった力のなかに混沌はありませんと返事をします。
君なしでは私は生きていけない。死んだも同然だろう。善だろうが悪だろうが、かまうものか。
エレナの息は途切れがちになり、浅くなってきましたが、意志の力で目を開けると、「少しだけ・・・人間のままでいて、お願い、大天使」「君自身が、私の人間の心なんだ」とたった一つの真実を伝えます。ラファエルの力は彼が不死者そのものだから人間そのもののエレナに拒絶されました。でも彼の心臓は・・・彼の心臓は少しだけ人間だ。彼の心臓が新しい黄金のパワーの源だとするなら、心臓が変化のフィルターの役割をしてくれるかもしれない。ワイルドファイヤーはエレナなしでは生まれなかった。
危険を伴う。彼が間違っていたら、エレナは死ぬだろう。しかし彼が何もしなければ、彼女は死ぬ。
彼は自分の服を引き裂き、自分の拳で鼓動を打つ心臓を取り出し、ベッドに置くと、胸には真夜中と夜明けの色に囲まれた白いワイルドファイヤーが生まれました。君の身体は大天使の心臓には耐えられない。でも一片のかけらであれば、君の体の中でキャスケードの力に抵抗するよりどころになってくれるだろう。エレナの心臓が止まり、ラファエルは躊躇なくエレナの胸から心臓を取り出し、彼の心臓のかけらを原始的なワイルドファイヤーの力にくるみ、胸に収めます。ワイルドファイヤーは彼女の身体の中で爆発します。ラファエルは彼女の人間の心を取り出すと、彼の心臓を取り出した位置に収め、ベッドに倒れ込みます。彼の翼はエレナの身体に覆いかぶさり、彼の口は血であふれていました。
『サイア、起きてください』何度も繰り返される呼びかけで意識が戻ってきたラファエル。めったなことで騒ぎ立てないジェイソンからの緊張した調子に、何事だと返答すると、中国から飛行隊の一軍がNYに向かって飛行中ですとの報告です。ジェイソンは飛行隊に少し先行してNYに急ぎ帰還しているところです。ラファエルは自分を覆っている白いなにかを外しながら身体を起こしてみると、エレナは蛹のようなものにくるまれ、自分の胸を見下ろすと、心臓部分は再生が途中で、半分ほどがワイルドファイヤーで補修されていました。聞こえているかどうかわからないエレナに声をかけてから、怪我が周囲にわからないよう、革製の衣類を身に着け、背中に剣をさし、バルコニーで控えているプライマリーたちにエレナを守れと言い置いて部屋を出ると死んだような表情のイリウムが少し離れた場所で警備していて、すぐに「エリーは?」と聞いてきました。戦っている、と返事をすると彼の心が壊れたのがラファエルに伝わってきました。イリウムについてくるようにいい、他の飛行隊たちには追いかけさせ、彼ら二人は全速力で現地に向かいます。ラファエルは珍しく脂汗をかき、辛そうな飛翔だとそばにいるイリウムは感じています。飛行隊の中心にいるのは大天使ファバシで、リージャンがグループに潜んでいるかどうかはわかりません。ラファエルはこれは大天使の仕事だと言ってジェイソンとイリウムに巻き込まれない位置で待機するよう指示します。
本宅の寝室では、しゃがみこんだリージョン達がひしめきあっていました。蛹はエレナを包み込んでいるとしては小さすぎる。彼女の翼と、体重を支えるには。彼女は子供として生まれるのだろうか。わからない。だが蛹は小さすぎる。
軍団から離れてファヴァシと副官2人が出てきてラファエルと挨拶を交わします。軍隊が通告なく国境を越えてきたことはあきらかにルールから逸脱しています。「ファバシ」「ラファエル」ファヴァシの声は彼女の本来の声ではなく、死とささやき、悲鳴をはらんでいました。目も彼女のものではありませんでした。ファヴァシはキャスケードの間に新しい力を得たという噂がありましたが、リージャンを思わせる闇の力を得たようです。「私は新しい力を得た。ひざまずけ」
ラファエルは戦争に向かうこんな瞬間にもエレナがいないことを寂しく思いました。彼女ならすぐに大天使の「キモさ」について辛辣なコメントを口にして、ユーモアには相応しくない場面でも彼を面白がらせてくれただろうと考えます。
イリウムがリージャンに取りつかれているのでしょうかと話しかけてきますが、キャスケードの力がどのように生死のルールを捻じ曲げているのかわからないため、ラファエルにもわかりません。胸の痛みにもかかわらず、彼の心臓はワイルドファイヤーのボールを作り出し、攻撃してきたファヴァシの雷撃にぶつけます。過度な負担は、回復していない心臓にかけらません。次の攻撃をかわしますが、遅れてきた飛行隊が到着するにはもう少しかかります。ファバシの瞳が一瞬茶色に戻り、囁いてきます。「ラファエル、彼女に私を乗っ取らせないで」再び彼女の瞳が真っ黒になります。
お互いの副官たちの間でも剣戟が交わされます。ファバシ、彼らに命令を下せ。素早く。できる内に。
ファヴァシの副官たちは軍団に戻り、一つにまとまります。「私は支配されたりしない。私は壊される獣ではない。私は大天使だ」ファヴァシの瞳の黒さに亀裂が走ります。
ウラムのときのように、大天使の一部をとりこんだのかとラファエルが聞くと、ファヴァシは感染したような感じだと応えます。骨の髄にしみ込んでいく。身震いすると、彼女の象牙色の翼に黒いシミがひろがっていきます。この死のウィルスは中国に埋められていた。だれも中国に送らないで。大天使に作られたものよ。悲鳴をあげてのけぞります。
ラファエルはファバシの心臓に手を当て、ワイルドファイアーを送り込みます。翼の黒さは消え、瞳の色ももとの茶色に戻りましたが、完全に感染が消え去ったのかは確信が持てないようです。彼女はみるみるうちに消耗していきます。エレナがそうだったように。あなたの領土にある別の種類の火が私を呼んでいると話し、倒れます。
ファヴァシの軍団は去り、ラファエルは溶岩の沸く池にやってきました。溶岩は粟立ち、中心部分が膨らみ、炎のなかからエレナならゾンビーとでも表現するようなものが現れます。炎につつまれた女性でした。溶岩が身体から流れ落ちると、彼がみたのは空気が形作ったような薄い緑色のガウンをまとった紫色の髪の天使で、瞳の部分は空洞でした。赤い色の涙が頬に流れ、彼女の白い肌はみにくくひきつれていました。
「あなたは半分の心臓に二つの心を持っている。でもあなたは完全ではない」と彼女に言われ、ラファエルはエレナが目覚めるまで、私は完全とはいえないと返事をします。未来を訊ねるラファエルに、「未来はゆがめられた。いまは何も見えない。何万もの可能性が見える。混沌と恐怖が。希望と命が」とカッサンドラが応えます。
私たちは運命と戦い、時代をかえたぞ、私のエレナ。未来はいまや私たちが作ることができる。
カッサンドラは彼の顔にさわり、アンブローシアは大天使が真に愛した時、人間を天使にかえる。それは私が予言したことで、予言としてしるし、未来に生まれれてくる者のことだったと言います。ラファエルはエレナが天使に変化した最初の人間だと教えます。アンブローシアの伝説は、伝説の大天使の予言によって伝えられたものだったのです。
この天使は私の親族に連なるもの。彼女は私のものだ。ラファエルはファバシを彼女に渡します。ファバシはいつ戻るでしょうかと尋ねると、私は眠ろうと強く努力していても夢をみた。私は予言の子であるそなたの愛を助け、時を変化させた。新しい夜明けはまだ現れない。炎が浄化してくれるだろう。この時、炎が必要とされている。彼女がなるものにお前ひとりでは対抗できない。10人衆だけではあの眠っている悪に対抗できない。
カッサンドラはファバシの額にキスをすると「死の大天使 悪夢の女王。影のない激怒。死の領土に蘇る お前の終焉がやってくる 新しいものと古いもの手によって 人間の心をもつ大天使によって 銀の翼をもち、眠りを妨げられ起きた大天使 炎の目をもつ壊れた夢 砕け散る」こうなるはずだった。でもお前たちは運命を変えた。ひとつだけかわらなかったことがある。眠る大天使、怒り、女神。彼女は怪物となって蘇えるだろう。と告げて、溶岩に沈んでいきました。数分後には、溶岩の池はなかったかのようになっていました。エレナはこんな場面を見逃して絶対に悔しがるだろうとラファエルは思います。
本宅に戻ったラファエルは、ほかの10人衆たちに中国の件で警戒を呼び掛け、無視できない緊急会議の招集を行いました。キャスケードにより彼らの様子がかわっていましたが、ミカエラだけは消耗して消えそうな様子でした。ラファエルはファバシにあったことを告げ、リージャンが怪物になって蘇るとカッサンドラに言われたことを伝えます。ファバシがどのくらい不在にするのかわからない中、中国の統治をどうするか話し合われ、リージャンの大天使に罹患するウィルスが残されている可能性がある以上、大天使が常在するより、有能なファバシの部下たちにひとまず5年程度統治させ、他の大天使たちのスタッフが巡回して警戒とサポートにあたるということで合意します。彼の傷は革の衣類の下で出欠をつづけていました。本来なら大天使と戦うどころか、アンシャラーに入らないとならないほどの大怪我です。
寝室に入ると、リージョンたちが口々にサイア、サイア、サイア、蛹が小さすぎます、と話しかけてきます。彼女の翼はどこへ成長するでしょう? ラファエルは心臓を抑えながらベッドに倒れ込み、彼の翼が蛹にかぶさります。彼の心臓は止まりました。
プライマリーはラファエルの血が蛹にしみ込んでいくのを見守っていました。エレナの蛹は広がってラファエルも包み込みました。リージョンたちは座り込み、彼らを護衛します。アクエアリに忠実なものたちは彼らの眠りを邪魔しようとはしませんでした。
リージョンが刀(ブレード)と認識している人物が一度だけ、大天使が生きているかどうかを確認しに入室してきました。彼はラファエルがアンシャラーに入っているのではなく、癒しの眠りについていることをリージョンに教えてくれました。ただ普通の眠りではなく、彼は息をせず、鼓動はありません。しかし彼は生きていて黒髪は発光し、肌から金色の光が漏れ出ていました。エレナに関しては、誰もなにもわかりません。彼女がブルーベルと呼ぶ人物は、バルコニーでたびたび静かに護衛を勤めていました。戦士の子供が一度姉のエレナに合わせてほしいといってやってきましたが、リージョンはエレナが絶対に許さないとわかっていたので、若い心を守るつもりでしたが、リージョンたちによく食事や飲み物が足りているかどうか聞いてくれるモンゴメリが静かな声で諭し、優しい腕で泣く彼女を抱きしめてあげていました。サラやエレナの友人たち、ジェフリー、ベスなど他のものについては、ブレードがタワーで対応していました。
他の者は来なかったが、黒い翼の嵐は刀のところへ行って話し合っていました。10人衆たちがNYを観察していると。ラファエルは、コンソートはどこだと。アクエアリの領土に疫病をもたらした大天使が乗っ取ろうとたくらんだが、よく笑い、大勢の女性たちを微笑ませる大天使が彼の軍勢を国境まで押し戻していた。母親が来た。彼女は息子に会おうと刀と押し問答をしていた。刀は譲らなかった。あなたは大天使かもしれませんが、彼は私の主人です。お通しできません。彼女の力は強大だったが、この人生では彼女は狂気に陥っていなかった。彼女は10人衆に対して、NYに来ようとするなら、まず自分を相手にすることになると宣言します。彼女の将軍が鳥と野生の猫を同盟の印に送ってくれた。平和は保たれた。娘の死を悼み、時折悲しみをにじませながら、ラファエルを嫌悪の眼差しで見る大天使が刀に死の土地について奇妙なことが続いていることを言ってきたが、サイアに報告しますとだけ返答し、大天使は何も尋ねなかった。
蛹は成長した。ゆっくりと。小さすぎる。リージョンたちは動かなかった。彼らは大天使の心臓がふたたび動き始めるのが聞こえた。彼らは蛹が開くのを待っている。彼らは見守っている。
ラファエルは夢を見ていました。キャリエーンに墜落させられ、身体の骨がバラバラになり、身動きできずにいた草原です。そこから場面がかわり、手にワイルドファイアーの光を灯すと、剣で戦っている音が聞こえてきました。エレナが現れ、なんでこんなに時間がかかったのというので、君の心を自分の心臓でくるんで守り、再生していたのでこんなに時間がかかったと説明します。エレナは自分の心臓は強力になったみたい、慣れてきたけどと話します。戦いながら、お互いの背中がぶつかると、翼が切り取られたあとが感じられ、くそったれキャスケードが私の翼を奪ったわ!とエレナが叫びます。私が君の夢の中にいるのか、君が私の夢のなかにいるのか? 彼女はあまりにもリアルです。わからない。でもラファエルにはここでの出来事が正しく感じられました。「私は思い出したわ、大天使。あなたは心臓をくれるべきじゃなかったのに」とエレナに言われますが、「ありがとうと言ってくれたほうが嬉しい。男は毎日自分の心臓をあげるわけじゃないから」とラファエルは言います。どうやら彼はエレナの夢にいるようです。エレナが疲れたわ、起きなくてはと言うと、ラファエルは蛹が小さすぎると反論します。翼がないのかしら、それとも身体のどこかを失ったのかしら? すぐにわかるでしょう。
ラファエルは、キャスケードの力が彼女を食い尽くす前に目覚めなければならないとわかっていました。不屈なエレナでさえ、永遠に戦い続けることはできないのです。あちらの世界で会おう、私のエレナ。ラファエルはワイルドファイヤーの力を放ちます。
ラファエルが気が付くと、心臓はまだ未完成でした。人間の心臓のほうは圧力で破裂してしまい破片はラファエルの血流にのって身体をめぐっているようです。痛みを無視して目を開くと、銀色が目に入ってきました。(終)
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