バリの日本食レストラン『漁師』

February 3, 2010
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  激しい稲妻が走り出したのは夜中の一時を廻っていた。

 といっても落雷の響きは遠い。

 部屋の明かりを消して窓辺に立つと、稲妻のたびにウルワツの絶壁まで見渡せる。
 これは、雨になる・・・・。
 そう思って数分もしないうちに一気に降り出した。

 明日も朝が早い。そろそろ寝るかとベッドに入ろうとした時である。
 コツ、コツ、コツ・・・・・。
 ドアをノックする音が確かにした。


 こんな真夜中に誰かがドアをノックするとは尋常ではない。
 下手に開けると、碌な事にはならぬ。

 コツ、コツ、コツ・・・・・。
 このアパートはセキュリティがしっかりしているから、そう滅多に他人が入って来る事はなく、ボクが住んでから四年余り、泥棒が入ったとか、押し込み強盗といった物騒なことはない。
 ただ、いままで三回ほど夜中にノックする者がいた。
 コツ、コツ、コツ・・・・・。
 そのすべてがこのアパートに外人と暮らしているジャワの娘たちで、恋人が戻ってくるのが遅れていて、生活費がなくなったと言う。といっても、貸してくれというのではない。生活費を稼ぐために遊ばないか・・・、というのだ。
 丁重にお断りした。

 それ以外にアポもなしに突然やって来る知人はいない。
  コツ、コツ、コツ・・・・・。
 ノックは根気よく続く。

 いた・・・! たったひとりいるとすれば、それは源さん。
 すかさずドアの内側から訊く。
『誰?』
『わいや、わいや! はよ開けんかいアホッ!』

 すかさず開けると、濡れねずみのような源さん、頭の先から足までびしょびしょで転がりこんできた。

 ずぶ濡れの小柄な源さん、両手両足をふんばりギョロ目で吼え続ける。
 そのいでたちがあまりにも可笑しかったので、本来ならこっちが文句を言うところだがそれも忘れ、つい苦笑すると、
『なんや、わいを舐めとんのか!』
『違う違う』
 と源さんの足元を指差す。
 なんと、裸足で、足元には雨水が溜まっている。
『どうしたの一体?』
『それや、一生の頼みや、かくもうてくれ、この通りや・・・』
 先ほどまでの強気はどこへやら、一転して神妙に両手を合わす。

 かくまってくれとは、穏やかではない・・・・・。





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Last updated  February 3, 2010 10:43:35 AM
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meteor0501 @ Re:これっておかしくない!? 日本その3(08/02) お久しぶりです。もうブログされてないの…
珊瑚マニアック@ Re:バリ島物乞い女の実態その2!(04/13) 両替でごまかしたり お釣りをごまかしたり…
珊瑚マニアック@ Re:バリ島物乞い女の実態その2!(04/13) 両替でごまかしたり お釣りをごまかしたり…
もも姫ママ @ Re:これっておかしくない!? 日本その3(08/02) このブログ、もう見てないですか? バリに…
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