勝手に最遊記

勝手に最遊記

Making ―14―


一匹の大蛇が―・・大きさは5メートルを越し、体のあちこちから血を流して
興奮状態で暴れている。
蜘蛛の子を散らすように、山猫族の少女達が逃げ惑う。

「あっ・・!」
逃げ遅れた少女が転ぶ。
その少女を威嚇するように大蛇が蜷局(とぐろ)を巻始める。


「鈴麗っ!ココに武器はないのっ!?」

「エッ?何を言ってるの?・・・まさかアンタ、あの大蛇と
戦うつもりなの!?」

「あったり前でしょ!?あの子が死んじゃうじゃないっ!」
そう言い捨てて、桃花は部屋を飛び出した。

「ちょっと・・!ちょっと待ってよ!」
遅れて鈴麗も部屋から飛び出した。


――――――――――ダダダダダダダダダッッッと階段を飛ぶように駆け下りる。

「どうすんのよ!敵うワケ無いでしょっ?」
流石に山猫族、易々と桃花に並ぶ。

「ココには油とか無いの!?」
桃花は聞く耳を持たない。
「な?なんで油なワケ?」
「毎晩、舐めてるんじゃないかと思って。」
「・・・アタシ達は化けネコじゃないわよっ!」
こんな時に良く冗談が言える物だと、鈴麗は内心驚いていた。

ダアンッと一階の床に着地する。

桃花は鈴麗に向き直った。
そして鈴麗の手を取り、

「この爪は何の為にあるの?―――マニキュアをする為?男に媚びる為?
・・・違うよね。生き抜く為の武器だよね。今、使わないでいつ使うの?」

鈴麗は桃花の手を振り払った。
「そう・・言われても。何したって敵わなかったのよ!
何人、死んだって思ってるのっ!」


桃花は大きく眼を開き、
「だからって!!今、目の前に居る仲間を見捨てていいわけ無いっ!!
女ならっ!女なら命の一つや二つ、賭けてみろっ!!
未来へ続く、次の命を守るためにっ・・・!」

大声で怒鳴りつけ、桃花は外へと飛び出す。

鈴麗は立ちつくしていた。
『女なら・・・?女なら命を賭けろ?・・・アタシ・・・・アタシは・・。』


外に出た桃花の目の前に、今にも襲いかかりそうな大蛇と、
恐怖のために転がったまま、動けない少女の姿が飛び込んできた。

桃花は辺りを見回す。
『何か・・・何か武器になりそうな物は?』・・・その間にも、大蛇はゆるゆると少女に詰め寄っていく・・『・・コレだっ!!』





「・・・・全部、片づいたか。」
三蔵が銃を懐にしまう。

「だぁ~っ・・・腹減って死にそうだぁ。」
悟空がしゃがみ込む。

「ま、大蛇共を片づけてやったんだから?今晩は宴でも催してくれるっしょ。
楽しみにしてよーぜ。」
美味そうにハイライトを吸いながら、悟浄が嬉しそうに言った。

「・・・・まだ仕事は終わって無いみたいですよ。」

「八戒?」悟空が八戒の指さす方向を見る。

「血が。血が続いています。この跡から見ても、大蛇の生き残りでしょう。
そしてこの方向は・・・。」

「っっっ!山猫族の住処だっ!!」
悟空が立ち上がる。

「―チッ。煙草を吸ってる暇もない。」
出しかけたマルボロを再びしまう。

「あ~・・・ホント、子作り労働の方が良かったワ。俺。」
ヤレヤレと首を振る。

「余裕は無いですよ。血が流れているって事は手負いです。
――――桃花や山猫族の女性達だけでは、危険ですからっ。」
言いながら八戒は走り出した。

続けて三蔵達も走り出す。

「ああ~っ!絶対、メシを腹一杯食ってやるぅぅ!!」
悟空が喚きながら走る。

「ったく、食い物の事しかねぇのかっ!?
・・・俺は子作りとはカンケー無いトコで、口説きまくるけどっ。」

悟空と悟浄に苦笑しつつ、
「その為には急がないと!・・・シャレになりませんよっ。」

『あのバカ女・・・大人しく隠れていればいいんだが・・。』
そう思いつつ、ソレは無いだろうなと心の何処かで確信している三蔵であった。



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