桜餅の館

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2007年01月16日

休止。（ファイア村日記）

カテゴリ：ファイア村

「──えっ？」

「二度も言わせんなよ、──暫く帰ってくんな」
　ドンすけはそう言い放って目を背けた。隣に居たホーンがおたおたしていた。
「…それ、どういうコト？　……もしかして僕、もう村には必要無いって──」
「違ぇ！」覆い被さるようにドンすけは叫んだ。其処に居た誰もが驚いてギョッとする。
「必要無い、だなんて言ってねぇ！　──分かんねぇか、理由まで聞かせなきゃいけねぇのか？」
　理由。胸に手を当てる必要などない、それしか無いから──。
「──だけど」突然の出来事にガーリィは慌てたが、それでもドンすけは躊躇する暇さえ与えてくれなかった。

　…こんなドンすけ見たコトない。気がつけば自分に向かって牙をチラつかせ、今にも襲い掛からんとしていた。思わず血の気が引いてしまう。
「……ドンすけ、落ち着こうよ」
　ホーンが隣で呟いた。するとドンすけは溜まっていた力を抜き、前かがみになっていた上半身も元に戻した。
「……、……皆心配してんだ、……少しは察しろ」
　小さくそう呟くと、ドンすけはその場から去っていった。ガーリィはそんなドンすけの後ろ姿をただ見送るしかなかった。
「──ガーリィ？」
　静まり返った病室で、ホーンが口を開いた。「どうしてあんなに怒ってたか──分かる？」
　しかしガーリィは黙った。分かっていてもそれは自分が言えるコトではない。……無性に自分に腹が立った。
「…分かってるんだよね？　ドンすけってね、こういう時は不器用なんだ。…でも本当は心配して言ってるんだよ？」
　言葉が出ない。……分かってるのに。
　そんなガーリィの様子を見てか、ホーンは一度溜め息を吐いた。

　…確かにそうだ。けど──「…でも今回ばかりは……言えないよ……どうしても──」
「頑固だなぁ、本当に」ホーンがもう一度溜め息を吐く。
「でもねっ、一つだけ言えるのは、今、君の心が病んでいるってコトだよ」
　更に続ける。「此処に居ても心が晴れないんだったら、いっそのコト元の世界に帰って、…そっちの生活をエンジョイすれば良いんじゃない？　──ほら、最近長いコトこっちに居過ぎたから」
　顔を上げる。其処にはいつもと変わらぬホーンの笑顔があった。

「…だから、ね？　１週間ぐらい留守にしてても良いからさ、元気になって帰ってきなよ」
　ガーリィはただ頷くしか出来なかった。

　──ガーディ姿も、暫く禁止か…。そうして彼は村を後にした。

（１月16日午前、ファイア村診療所にて）

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