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カテゴリ: お出かけの話
前回のブログ でも書いたとおり、日曜日は着物で大阪へお出かけ。

メインイベントの「キモ玉会」が終わった後、買い物していた夫と合流。
午前中はパラパラと降っていた雨も上がり、とりあえずお茶でもしますか、ということに。私のリクエストで、心斎橋の「長崎堂」でティータイムと相成りました。


081028nagasakido.jpg


ちょうど、図書館から借りた「田辺聖子全集(第六巻)」を読み終えたばかりだったので、小説の中に出てきたこのお店を覗いてみたくなったのでした。

全集の六巻は、「乃里子三部作」と呼ばれる「言い寄る」「私的生活」「苺をつぶしながら」が一冊に収められています。
三十代のある女性の、独身時代から結婚、離婚を経た後までを追った一連の物語は、どれも、甘さと苦さが程好く同居した傑作だと思いました。

長崎堂と、店周辺のミナミの描写は、三部作の最後を飾る「苺をつぶしながら」に登場します。
二階の喫茶室の奥の小部屋に鎮座している、大きなアンティークの“スミスさんのオルゴール”などの描写に続き、



 それこそ夢みたいな色なのだ。うすいピンクとうすいブルーと白、この三つの色の、小さな粒々、まるでビーズかボタンか宝石みたい。
 小さい函にぎっしり詰まってるところは、ちょうど首飾りの緒が切れて、とりあえずこぼれる珠を、あつめて入れときました、という風情である。
 それをそっと口に含むと、甘いこうばしい洋酒が口いっぱいにひろがって、それも、ほんとに小さい粒だから、舌先だけ一瞬、かすかにとまどいながら酔う、そうして甘さと香ばしさは余韻をのこして消えてしまうという、夢色ボンボンなのである。


…この“夢々しい”言葉が後からあとからあふれ出るような感じ、おせいさんの真骨頂!という印象です。



先ほど、ニュースで、その田辺聖子さんが文化勲章を受章されることを知りました。
会見での「大阪の空気を吸いながら小説を書いて来たことは間違いじゃなかった」という言葉、印象的でした。
自伝的なNHKドラマ「芋たこなんきん」も大好きだった私には、一ファンとしてとても嬉しい叙勲のニュースであります。いつまでもお元気でいてほしい作家の一人です。

【「人は自分が愛したもののことは忘れても、自分を愛した人のことは忘れない。」他の田辺作品と同様、深くうなづかずにはいられないアフォリズムが散りばめられています。】

苺をつぶしながら





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最終更新日  2008.10.29 01:25:48
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