サラサラ日記

すべりこみアウト。 4



<頼りがいのあるあの人に>

頼りがいのあるあの人に言われた言葉を僕は信じた。
頼りがいのあるあの人は信じるに価する人だったから。
頼りがいのないこの僕はけれども決してあの人ではなく
心もとないこの毎日を必死で生きてるただのこの僕。
頼りがいのあるあの人のあの言葉はきっと真実だったろう。
けれどもあの人にとっての真実は僕にとっては何の意味もなく。
僕にとっての真実から遥かに僕を遠ざけた。




<春の訪問>

春のある日に君を訪れ何を話すともなく話し続ける。
君は不思議な人。
誰の目にもわからない人でいて
僕の目にもわからない人でいて
そのくせ僕をホッとさせる。
君は魅力的だけれど僕を夢中にさせるほどはない。
君は魅力的だけれど誰しもにそう思われるでもない。
けれども僕は会うたびに君に惹かれて行く。
君は不思議な人。
そしてまた会おうと思う。


<天罰>

ってあるかしら?
神様が私たちのためによかれとお思いになって
私たちのシアワセを願いわざわざ罰をお届けくださるの?
それならば甘んじて受けましょう。
けれども神様。
それでも神様。
いやでも神様。


<カラダニイイモノ>

健康にいいからと健康にいいものだけを食べるのが
本当に健康にいいのだろうか。
健康のためにと健康に生きるためだけに生きるなんて。




<オトコはオトコ>

4才の息子はあどけなく、可愛らしい。
だってまた4才だもの。
でもね。
所詮、オトコはオトコ。
テレビの画面で普通に綺麗な女優さんから
ハッと目を引く若い女性タレントに替わった途端に
明らかに目の色が変わる。
口元は緩み。
目じりは下がる。
体はくねる。
息子よ。そんなに好きか。
そんなに、うれしいか。
そうか。
君の横でな。
うん。
父も同じ顔しているぞ。



<揺らぎ>

自分の足元がおぼつかなく
すべてがまちがってるように思える。
周りのみんなが立派に見えて
自分の居場所なんてないような。
いつも君に憧れてた。
僕の中にいもしない君を探そうとして。
ここに立ってるだけで精一杯。
でもそれすらも君は知らない。


<カクレンボ>

僕達には始まりも終わりもなかったね。
何も言い出さなかったし、何も聞こえてこなかった。
追いかけても届かず、振り向いてももうそこにはいなかった。
君は何を探してたの?
僕は君だけを見ていたのに。
どうしてだか
いつの間にかに
見失ってた。



<誤解>

ピンとこないことばかりだ。
実感としてわからないことは僕は何とも言えない。
君と僕は大きな誤解の中に住んでいる。
それは小さなことから始まったが
今では取り返しのつかないほどこんなに大きく。
取り返しのつかないことなんて。
ないのだけれど。


<視線>

いいや僕はさっきからここを一歩も動いてはいない。
ずっとここで君だけを見ていた。


<切り口>

言いたかったことはそれだけだけど
言わなければならなかったことはまだたくさんある。

物事は切り取り方で見え方が本当に違うね。
縦のものを横に切る人。
切り刻んで粉々にしちゃう人もいれば
どこも切り取らずに全部抱えたままの人も。
見えてるものはほんの一部分。
全てを知るなんて。
全てをわかろうなんて。


<悲しくて>

悲しくて
今はもう
切なくて
今はもう
涙も出ない
喜びのない心に
とてつもない雨が降る。
君はもう思いもよらないところを見てる。

<記憶の彼方>

横にいたあなたの香りさえも
話していたその声さえも
今はもう記憶の彼方。
大切だからいつまでも。いくらでも。
そういうことはないのかも。
大切だったけど
今はもう驚くほど遠くに佇むあなた。



<記録>

確か似合った大事な服。
確かに在った大事な事。
確かに会った大事な人。



<約束>

約束もしていないのにまた明日必ず会えるなんて
考えてみるとすごいことだ。
明日、何があるかわからない今は。
明日、何があるかわかりきってる今は。
とてもとても。
通り過ぎてやっとわかること。
通り過ぎなければわからなかったこと。
約束ができるということさえ。


<実験>

昔よく聴いた音楽を家にいるときも車の中でも流してる。
今の音楽でも子供向きのではなくて私の好きなものだけ流してる。
子供達がとりあえず黙って聴いているのでそれをいいことに。
不思議と何の抵抗もなく子供達はその歌を聴き、覚える。
そして時々鼻歌で歌ってたりすると「やりぃ!」とほくそえむ私だ。
そのうちいやでも私には理解できない音楽を聴きだすだろう。
それでも子供の頃に聴き続けた音楽は何かしらどこかに残ってるものだ。
だから私たちの時代の綺麗なメロディや、透き通る歌声、なぜか心に残るいい歌を
なるべく沢山聴かせておきたい。
私が子供の頃って親が音楽流して聴いてるっていう絵がなかったから
これはちょっと実験です。


<読書>

親に読書の習慣のなかった我が家。本棚もなかった。
本を読み始めたのは中学校のときの憧れの先輩が読んでたから。
憧れて、背伸びしてまだ中学生には早いようなのを読んで頭抱えてました。
そしてちょっとずつ自分で軌道修正して自分向きの本を徐々に探していった。
子供達にも好きな本、好きな作家を早い時期に見つけて欲しい。
だから私の本棚はリビングにおいてあります。
子供達が興味を示したときは絵本感覚でもいいからちょっと手に取れるように。
今は小さな字の並んだ文庫本は無理だけど
少し写真や絵が入ってるものを教えてあげると結構見てる。
上に書いた音楽もこの読書も、私の用意したものは大したものではないし、
ただの取っ掛かり、入り口に過ぎない。
でも子供の頃その入り口さえもなかった私なりのささやかなプレゼント。





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