佐竹台8丁目25番地―12

「逆球」('05/04/01)



それはホームラン。綺麗なアーチと、入った後の「時間の止まり方」が美しい。
それは送りバント。あの緊張感がたまらない。

そして見逃しの三振。応援しているチームの投手が奪うと、
思わず叫んで、右手を突き出してしまう。

これが私の癖だ。

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この日は、会社の出張で千葉に来たついでに、マリサポと混じった。

M-Hの1回戦。
会社の同期を誘い、ライトスタンドで2人で観戦した。

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先発はM清水直-H和田。
この年の開幕投手を務めた、両投手の対決だ。

投手戦が予想される試合であり、事実そのような展開となった。

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この日の清水直は完璧だった。
ストライクが先行していくピッチングで、3ボールになかなかならない。
そしてヒットを打たれない。

だから、Hの攻撃では、走者がなかなか出ない。

Hからしたら、「手も足も出ない」展開だった。

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対するH和田も、そこそこのピッチングではあった。

初回、M先頭の西岡にいきなり四球を与え、
続く堀にライト前安打+送球間の進塁により無死2,3塁のピンチを招くも、
福浦を1ゴロに打ち取った。

守備陣形も通常守備であったため、1アウトと引き換えに1失点はしたが、
この判断自体は「理に適った」「妥当な」ものだったと思う。

結果的には、この1点が決勝点になってしまったのだが。

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また、和田はバックにも足を引っ張られた。

3回裏、2死2塁で、4番ベニーを内野後方へのフライに打ち取ったものの、
一塁ズレータ、二塁カブレラ、右翼柴原がお見合いして打球は落ち
(記録は安打)、2点目を失った。

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しかし、それ以外は淡々と進んだ投手戦。
本当に淡々と進んだ。
5回裏終了までは、という限定付きだが。

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この日はこの年の千葉マリンでの最初のナイトゲームであることから、
「花火ナイター」が企画されていた。
外野の裏が海であることから、花火が打ち上げられると、
内野席、特に2階席からは綺麗に花火が見れる。

しかし外野席からは、音は聞こえるものの、全く花火が見られない。
後ろにそびえる壁が、完全に邪魔をするからだ。

それを考慮したのか、この日は「花見ナイター」も同時に企画されていた。

紙で作ったピンク色の花びらを、球場内に舞わせる、というものであった。
(↓その写真)
桜吹雪

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花びらは球場内をヒラヒラ舞い、光線と反射して
非常に綺麗であった。
サクラ・ヒラヒラ・ハラハラ

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だが、「エントロピー増大の法則」というものがある。
要は「拡散」についての法則である。

拡散した花びらは、球場内に容赦なく降り積もった。
散らかしちゃダメでしょ!!

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そして、千葉マリンといえば浜風。
この花びらが舞って、なかなか降りてこない。

そして、降りてきても、投手-打者間に白い花びらがあると、
投球と重なってしまうため、非常に危険である。
どこの球場でも、バックスクリーンが濃い色で確保されているのは、
打者の安全を守るためである。

しかし、紙の花びら達にはそのことが理解できず、
容赦なく内野にも花びらが降り積もった。

ほうきを持った、お掃除隊が出動。人手が足りずさらに増員。

お掃除隊出動!!

試合は約15分にわたり中断した。

グランド整備の間を持たせるためのイベントが原因で、
グランドの整備をしなくてはならなくなった。

「本末転倒」だった。

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しかし、清水直はこの「アクシデント」にもめげず、安定した投球を続ける。

7回表、この日唯一のピンチが訪れた。
先頭のバティスタが安打。
2死後、ズレータの3塁ゴロをM今江がダイビングキャッチ。
しかし一塁送球が逸れ(記録安打)、2死1,2塁のピンチになった。

ここで打者はHカブレラ。
確かカウント2-3だったと思う。

清水直は、見逃しの三振を奪った。
私も、思わず、右手を突き出していた。

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このピンチがこの日の一つのポイントだったのだろう。

その裏、Mは3点を取り、試合は決した。

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結局試合はM5-0Hで、清水直は完封勝利を果たした。
この日のスコアこちら

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この日のヒーローインタビューは、勿論清水直。

そこで、少し、驚いた発言があった。

インタビュアー「7回、少しピンチがありましたね」
M清水直「いや、正直逆球だったんですけど、審判が『ストライク』とコールしてくれたのでよかったです。」

・・・ぶっちゃけ発言しすぎだろ・・・。

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帰りがけ、会社の同僚と話しながら、その発言を思い出し、考えていた。

「逆球」と同じように、私たちの普段の生活の中でも、
意図していたことと反対の結果が現れるときは多々ある。

でも、その「意図していない結果=悪い結果」とは限らないんだ。

思いもかけずに、良い結果を得ているときも必ずあるんだ。

勿論、投手が制球力をつけるよう努力をするように、
私たちの生活・仕事でも「努力」はしなければいけないと思う。

でも、その結果が、意図していなかったプラスの方向に働く場面も
時にはあるんじゃないか。

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昨年11月に「うつ病」を発症し、いまだに私は完調では無い状態だ。

でも、この日のM清水直の「逆球」と同じように、
意図していた以上にプラスの結果が得られる場面はあるはずだし、
その結果についてあれこれ悩むよりも、
「結果」は「結果」と割り切って、
先に繋がる努力をしたほうが良いんじゃないだろうか。

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この日の「花吹雪」もそうだ。
多分、発案者が思った以上に「綺麗な」イベントだった。
が、試合中断、という本末転倒な結果を招いてくれた。

でも、「しまった・・・」と後悔するのではなく、
だったら次に同じ企画をしなければ良いだけのことじゃないのか。

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この日の清水直のヒーローインタビューでのコメントは
そういうことを私に考えさせてくれるコメントだった。

少し、私の「うつ病」からの回復への道筋に「光」がさした気がする。



['05/04/03]


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