萬華鏡-まんげきょう-

2006年11月22日
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カテゴリ: 能狂言
狂言「栗焼」




主人が丹波の国の伯父から立派な栗を四十個貰ってきました。
お客様に振舞いたいので、焼き栗にしてこい、と太郎冠者に命じます。
さて、炭火の上に栗を並べて焼き始めると栗が爆発して飛び上がります。

「あちっ!!!」
「焼き栗は火加減が難しい。こいつめ、メ(切れ目)をかかなかったから飛びよった。さて、今度はちゃんとメをかいたによって、そのように飛ぼうと身繕いしておっても飛べぬぞよ」

ようやく焼けて、主人のもとへ持ち帰る途中、焼き栗の芳ばしい香りの誘惑に負けて、ひとつ、ふたつ・・と食べてしまいます。
「おいしい」
「ああ、もう一つ食べたいなぁ」
そうして、気がつけば全部食べてしまいました

さて、主人にはなんと言い訳をしたものか。
焼き栗を待ちわびた主人は早速、太郎冠者へ栗をこちらへ寄こすよう命じますが、当然栗はありません。
太郎冠者は主人に「実は竈の神が夫婦で現れまして、栗を献上しました。」

竈の神が現れるとはめでたいこと。
それを咎めることはできません。
主人「うむ、仕方がない。さて、では残りの三十八個を出しなさい」といえば
太郎冠者「さらに三十四人の公達が現れたので差し上げました」という始末。

主人「(-_-)む。では残りの四つはどうした。」
太郎冠者「栗はもうありません」「一つは虫食いでありました。ほかは焼き栗を焼く言葉に、逃げ栗、追い栗、灰だらけと申しまして一つも残っていません」

当然、太郎冠者は主人に叱られ「やるまいぞ」と追い込まれて終わるのです。


【感想と見どころ】
焼き栗相手に、「それ、飛ぼうとしておるな、どれ飛べぬだろう」というふうに話しかけている様子や扇の先で目の前に並べられた栗たちをひっくり返しては上手に焼いている姿がとても写実的でコミカル。
さらに栗が焼きあがって、手で取り上げた時、熱くて左右に持ち替えては 「あちあちあちあちあちあちあち・・・ふぅーふぅ・・・」 と息を吹きかけ冷ます所作は太郎冠者の愛らしさが光ります。
一つ、二つのつまみ食いが、ついつい余計に食べてしまった経験なら誰しも持っているのでは?(笑)
私は未だにありますねぇ。料理を作って皿に盛り付けながら美味しいといくつか食べてしまい、量が減った盛り付けはイマイチ様にならないという(苦笑)

秋の演目としてはとても雰囲気の出る作品ですね。
ほとんど太郎冠者(シテ)の独壇場で演じていくので大変そうです。
この日のシテは本来、野村万之介さんでしたが体調不良のため代役で石田幸雄さんでした。
実は船弁慶だけではなく万之介さんの栗焼が観たくてとったチケットだったので残念でしたが、石田さん、ものすごーく美味しそうに食べるので・・・上演中ホクホクの甘い大きな焼き栗が食べたくなりました(笑)

こうして主人に命じらたのに、誘惑に負けてしまって全部食べてしまう、という「つまみ食いどころではない」、これまた大胆な行動に出る太郎冠者モノの作品では 「柑子」 なんかに近いかもしれませんね。

言い訳の内容としたら、 柑子のほうが上等で、平家物語の俊寛僧都の島流しの話などを神妙に語りながら思わず主人を煙に巻こうとする、 あちらの太郎冠者の演技もまた見物なのですが、栗焼はやっぱり栗を焼く太郎冠者の演技が最高。
石田さんの舞台もよかったのですが~・・・やっぱりこれは万之介さんの栗焼が観たい!シワシワの手で栗を焼いて食べる。心持ちホッコリしそうではありませんか?

【鑑賞の記録】(敬称略)
平成18年10月20日(金)午後6時半開演
於:国立能楽堂

和泉流狂言「栗焼」
太郎冠者(シテ):石田幸雄
主(アド)   :野村万作

この日のその他の番組→ 観世流能「船弁慶-重前後之替 早装束-」

【本日の徒然】
ええっと。これは10月の国立定例の演目です。1ヶ月遅れですねぇ(笑)
明日はついに「京都ござる乃座1st」記念すべき「釣狐」とのことです。
手書きハートこのニュースを聞いたのは確か7月8日のyoiya2会員限定狂言であそぼパーティだったなぁ。早い、まだ先かと思っていたのにもう11月も半ば過ぎ。

さて。
今日は帰宅してからDVDレコーダーの中を整理していたら「裸にしたい男たち-野村萬斎 飄々と現代に舞う-」(確かそんなタイトルだったよーな・・)が目に付き。早送りしつつ要所要所を再生。
平成13年のドキュメンタリー。いわゆる密着取材というやつですか。
うう、お若いのぅ。
自分も若かった。平成13年かぁ・・・(遠くを見る)2001年陰陽師公開時でござる。
とはいえ、私ったらまだ狂言は観たこともなかったっけ。

シテ、アド、・・・はて(・_・) ナンデスカ、ソレハ

そんな感じでありました←威張れない

なので、ドキュメンタリーに観る萬斎さんの活動についてピンと来ておらず、ただただボケェっと観るのみ(笑)←話なんざ、半分くらいしか聞いていないのではなかったでしょうか(爆)
今見たら。
さすがに足繁く狂言公演に通った成果もあり(?)萬斎さんだけでない他に映っている人々の存在もしっかりとわかるようになってきました。
三番叟で囃子方を勤めている方々。前は目に入らなかった(爆)けれど、「柿原さんだぁ、一噌隆之さんだぁ」とかもわかるようになりました(笑)

RASHOMONのお稽古で後ろを行き来している逸平ちゃんも確認(今頃・・)
いかに・・・前までひたすら萬斎さんしか観ていなかったか、がわかる( ̄▽ ̄:)
改めて見直すとまた今ならではの発見もある、過去のDVDやら録画。
なかなか面白いですねぽっ

この5年の歳月で、私は釣狐を味わえる見所に成長できたのか?は・・・謎ですが(苦笑)
12/1(金)に答えが出まする(/∀\)ひゃー






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最終更新日  2006年11月23日 00時29分55秒
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