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「それでは結果を発表します。」

結果発表は、楽屋の中で行われた。表彰は男子と一緒にするそうだ。

「では、解説の私が発表をします。まず、3年生―原中ちこさん。」

3年生は、桜科のアイドルと呼ばれている人が優勝した。さて、問題はココからだ。

「続いて2年―“我らが”水野綾菜会長」

そういうと「はい」と静かに前に出る。さすがにポーカーフェイスだ。

だが、お姉さんは後ろを振り返ると、私に向かってちっちゃくピースサインを出した。

たぶん、「がんばって」といってくれているのだろう。

「そして一年―。あ、特別に二人います。まず、一人目から・・藤崎亜衣さん」

私もお姉さんを見習って「はい」とだけ告げる。

「そして、もう一人は、・・・松下亜紀さん」

「・・・・・・・・・え?」私は耳を疑った。なんせ、先輩が1年生・・。

「おめでとう、亜衣チャン。」亜紀先輩はニコッとわらった。

「なんで1年なんですか?先輩じゃ・・・」

そうきくと思いもよらない言葉が入ってきた。

「解説の人が『一年生はこっちだって。さぁいくよ』っていってつれてかれちゃったんだもん」

「じゃぁなんで審査のときは2年のとこに・・?」

そう思うと頭の中のピースが次々とはめ込まれていくようにとつじつまが合った。

おそらく亜紀先輩は誰かを脅し・・やめておこう。

「それでは4人の方はちょっと・・・」

そういって解説の人は、私たちを特別室というところに連れて行った。


「表彰と賞品は男子と一緒に行いますね。

 ・・あ、優勝者は特別に男子の審査を特等席で見ることが出来ます。観覧していきますか?」

そういわれて私はチラッとお姉さんのほうを見た。するとコクリとうなずいてくれた。

「では、見に行きましょう。」そこまでお姉さんは行ってくれた。

「では、こちらへ。移動ばかりできついでしょうが」


移動した先は最前列。ここが特等席ということだろう。

そのわりに幅がすごく狭かったが・・。

「えっと・・あ、HAYATOがでてる・・!」小声だが、思わず叫んでしまった。

「HAYATOって・・あの人気アイドルとかいう?」

お姉さんは芸能関係はあまり知らなさそうだった。証拠が「あの」。

「そうですよ。」そういうと

「で、亜衣ちゃんと何の関係が?」とすぐ質問してきた。

「えっと・・・・・・・・・」ちゃんと説明したいけど言葉がうまく続かない。

「まさか彼氏とか?」お姉さんは思わぬことを言ってきた。

「ちっ、違います!!!!」そこは思いっきり否定した。

私の意志かどうか、というよりも、まずHAYATOのこと。

HAYATOがそんなことは全く思っていないと思うから変な心配をかけたくなかっただけだ。

もちろん、私の気持ちは・・・。

「そっか・・」お姉さんはちょっと残念そうに肩をすくめた。

「変な関係じゃないですよ~。・・・って」

その次の瞬間、二人の声はぴったり重なった。

『あ!!』一緒に叫ぶ。

『どうしたの!?』そこも同時。でも実際私は「どうしたんですか?」だったが。

『あの人・・』2度あることは3度ある。ここも一緒。

「知り合いですか?」やっとここで、私だけが口を開いた。

「えぇ。まぁ・・そういうことになるかな。亜衣ちゃんは?」

「さっき楽屋近くで見かけて。。あ、そのときお姉さんを探していましたけど。

 ・・どんな知り合いで?」

この人との関係はすごく気になった。だって、わざわざ楽屋まで来たんだから・・。

「あぁ、そうなの。副会長よ、桜科の。」

「・・・・・・・・・・・・・・え?」

ココまではまだ分かる。会長と副会長、お互いになにかあったときに連絡するんだろう。

「あ、ちなみに私の彼氏・・かな?皆には秘密だけどね」

「・・・・・・・・・・・ええっ!?」

一回目と二回目の反応は全く違った。彼氏という言葉を聞いたとたん

すごい! なんて思ってしまったくらい。

「けど、絶対お姉さんってモテますよねー。私なんてまだまだ」

ちゃんと意味が理解できないまま、さっきの話と関係あるような、ないような質問をした。

まだまだの意味が自分でも分からなかったが、次のお姉さんの発言もすごい。

「そうね・・モテるわよ。でも、それは章良もおなじだわ。」

たぶん、章良といわれた人は、副会長さんなんだろう。

「へぇ~・・なんとなくわかります。じゃぁ、人気は二分してたってことですか?」

「そういうこと・・になるのかしらね?」

そういって「それはうれしいわね」と付け足して笑った。そのしぐさが大人っぽい。

3年生まで全員そろったところで男子のコンテストが始まった。



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