日韓夫婦の心の旅もよう

日韓夫婦の心の旅もよう

(2)スーパーの店員さん


「お前たち、駅のあたりにいたんだって」
 夫の携帯に、そう実家から電話が入った。
 確かに先ほどまで、私たちは何かの用事で駅付近を歩いていた。
 それを見た義父の知り合いが、義父に電話をしたと言う。
 別に悪いことをしたわけではないが、

(この街ではそんなことまで筒抜けなのだろうか?)

(地方ならいざ知らず、ここはソウルなのに!?)
 とは思った。

 こんなこともあった。
 夫婦で家の近くの商店街をブラブラしていたときに、子どもの服でも見てみようと、子ども服店を物色した。
 結局何も買わなかったのだが、私たちが来店したことがどういうルートでか両親の耳に入って、

「子どもの服が欲しいなら、そう言いなさい。買ってあげるから」

 と言われたこともある。
 風通しがいいと言えばよいのか、とにかく通々である。

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 この近所の商店街は、ちょいちょい利用しているので、お店の人とは顔見知りになる。
 言葉もロクに通じない異国にいるのに、地域に馴染んだ暮らしをしていることもあってか、寂しいと感じたことはまったくない。

 商店街を少し入ったところには、チュンマートという名前のスーパーがある。
 ここの店員さんたちとは顔なじみになり、なかでも小学生ぐらいの女の子がいる、茶髪の女性は、なぜか私たちによい印象を持っているようで、必ず笑顔で何かと声をかけてくれる。

「しばらく見かけませんでしたね。どこに行ったかなって思ってたんです」
 日本に一時帰国したあとのことである。

「赤ちゃん大きくなりましたね」
 子どもを連れていないときは、
「今日は赤ちゃんどうしたんですか?」
「義母の家にいます」
 など、簡単なやりとりだが、店員と客というよりは近所の人同士の会話のようである。

 レジを済ませた後は、大抵はジュースをサービスでつけてくれる。豆腐だったり子どもにしゃぶらせるキャンディーのときもある。どれも売り物なのにいいのだろうか。

 レジにいた学生のような若い男の子の場合。
「日本人ですか?」
「はい」
 と返事をした途端、感無量という顔つきになり、いきなりレジから身を乗り出して握手をしてくれた。日本語を勉強中だと言う。実物の日本人を見て嬉しくなったらしい。

 メガネの女性の場合。
 この日は牛乳やジュースを買ったので、(ちょっと重いけど両手に分ければもてるかな)と、袋を2つくださいと言おうとしたときのこと。
「子どもも背負っているのに大変ですよ」と、無料で宅配するからと勧めてくれた。ノートに住所と電話番号を書くだけで、家で待っているとすぐに品物が届いた。

 実はここのスーパーは期限の迫ったものが多く、ほかに移ろうかとも思ったのだが、店員さんたちの駆け引きのない笑顔を見たさに足を運んでいる。


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