日韓夫婦の心の旅もよう

日韓夫婦の心の旅もよう

(6)ホットな義父



 最初は、普段は無口なのに、話すときは爆弾が爆発するような話し方を、それも途切れ途切れにして、怒っているんだか、怒っていないんだか、よくわからない人だなと思った(義父はプサン出身なので、生粋のソウル人である義母や子どもたちとは話し方がちょっと違っていた)。

 最初に両親と同居した時は、夫に「もしかしてお父さん、怒っている?」としょっちゅう確認していた。

 韓国に来て夫は自分で仕事を立ち上げようとしたが、多分、時期尚早だったのだろう。うまくいかずに、事実上失業者で家でダラダラしていた。
 そんな状況のなか同居してすぐに私は妊娠した。
 夫は「家事は自分がやるからアナタはやらないで」と掃除から皿洗いからみんなやってくれた。
 自分はどうせ家にいるし、妻はつわりなので家事から解放させようという理由で。

 普通の妊婦は病気でもならない限り、仕事やら家事やらを続けるのだろうが、うちの場合は夫がさせてくれなかったので、私もそれに甘えて家でダラダラ、ゲロゲロ、ゴロゴロしていた。

 義父は皿洗いをする夫を見て怒った。
「男はそんな仕事をせんでもいい。金稼いで来い!」

 義父がそういいたくなるのも一理ある。

 だが、夫に確認しなくても、義父はどう見ても怒っているようで、夜中は酒飲んでどなる声やら、ときどきは大きな物音も部屋の外から聞こえたりして・・・
 それに応じて義母の泣きながら制していたり、夫と義父が激しく喧嘩したりで・・・

 ちょっと妊婦には刺激が強すぎた。
 まじめに
(みんな激しすぎる。堪忍してくれ)
 そう思った。

 結構、短気かもしれない。義父。

 そのうち段々と、義父が怒っているように見えるけど怒っていないときと、本当に怒っているときがわかるようになってきた。

 月日は流れて、子どもを連れて渡韓、親から独立したときのこと。

 両親はチェジュド(という韓国南部にある島)に遊びに行き、お土産にリンゴを買ってきた。
 そして遊びに来ていた私たちに義母が、持って帰りなさいとリンゴをいくつも持たせてくれた。
 それを見て、どうやら義父は怒っているようで、義母をガミガミと叱り飛ばしている。

 後で夫に理由を聞くと
 義父は
「どうしてリンゴを全部子どもたちにあげないの!! 仏さんにお供えしているのが残っているだろう!!」
 とご立腹だったそうだ。

 いや~お供え物までいいですって。バチがあたったらいかんし。

 よくガミガミ怒るところや、その怒る理由は好きになれないが、義父の率直で優しくて、熱血漢らしき面は好きである。
 もうひとつ義父の好きなところは「オープンマインド」なところだ。それは次回にて。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: