日韓夫婦の心の旅もよう

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(8)義兄 誕生日おめでとう


 たしか兄は私と同じ歳で、頭がそろそろ薄くなるつつある、立派な中年である(お互い30代半ば過ぎちゃったね、お兄さん、ククク)。
 韓国に来ていいなと思うことのひとつに、何歳になろうが家族一同が揃ってお祝いをするというのがある。

 私の場合、子ども頃、何歳までお祝いしてもらったのかまるで記憶にない。
 大学生になったあたりは多分、ケーキなんぞ買ってもらっていないと思う。
 しかし家族が何もしない分、例えば彼氏がいて祝ってくれたかというと、そんな思い出はひとつもない。恐らく記憶にも残らない、しょぼい誕生日を過ごしていたのだろう。

 私にしても日本の親の誕生日に電話ひとつするわけでもない。
 という話を夫にすると、
「アナタ~。私をちゃんと見習って!!」
 とあきれている。
 決して仲は悪くはないが、うちはみんな揃って淡白なんである。

 物事はどっかで帳尻あわせをするようにできているらしい。
 今もっとも身近な韓国家族は人間関係が濃い、濃い。
 私の人生は、いろんなタイプの人間関係をしっかり学びなさいとプログラミングされているようだから、うれしく受け止めよう(かな)。

 朝会社に出かけてすぐの夫から電話が入った。
「今日はお兄さんの誕生日だ~」
 その割にはお母さんから何の電話もない。
 もしかしてお誕生会は明日の日曜日かな。
 こちらから電話をした。
「今日はお兄さんの誕生日ですよね」
「そう」
「お兄さんいつ来ますか?」
 それには答えず
「今来て!」
 やぶへびであった。

 チャプチェという御祝いのときによくつくる、肉やいろとりどりの野菜と麺を炒めた料理、ワカメスープ、イカ入りチヂミの準備を手伝った。

 お兄さんは、夫、子ども以外の家族のなかで一番好きなので、料理を手伝うのも楽しかった。たまには朝早くから実家に行くのもいいものである。

 お兄さん、夫、妹の3兄弟は、みんな基本的には優しい。
 しかし歳が若くなるにしたがって、性格にきつさ、激しさが加わっているようだ。妹が一番こわい。こっちのドラマでよく女の人が叫んだり激怒したりしているが、あれをライブでやってくれる(この話は別の機会に)。
 お兄さんが一番ほんわか優しくて唯一といってもいい癒し系のお方である。

 お兄さんは相当なお人好しでもある。
 かつて社会人になり初めて給料をもらったときのこと。
 道かどこかで乞食に会い、給料全部、着ていた上着までもあげちゃったらしい。
 どうせなら親に給料渡しましょうよ、お兄さん。
 お母さんもかなりのお人好しで「いいことをしたね」と、お兄さんを責めることはなかったそうだ。

 最近は、とんとしなくなったが、何ヶ月か前に私と夫が激しく夫婦喧嘩をしたことがある。
 お兄さんも話を聞いて胸を痛めた。
「弟たちはお金がないから心の余裕もなくなって喧嘩するのだろうか」
 そう心配した。
 びっくりすることに、会社の上司に給料以外にもお金をくださいと頼んだらしい。このお金は私たちに渡すつもりだったそうだ。
 気持ちは本当に嬉しいけど、こんな話を聞くと一体何が常識なのか、よくわからなくなってくる。
 上司からは、そんなお金は出せないと断られて
 お兄さんは「会社辞めるか?」と腹を立てていたそうな。
 ちなみにお兄さんは、LGという韓国の大企業にお勤めだ。
 仲直りをしていた私たちは
「お願いだから会社を辞めないでください」
 と頼んだ。
 ホント頼んます。

 お兄さん 今日はお誕生日おめでとう!!!


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