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リョウに限りなく危うい気持ちを抱いていた。触れたいと、触れられたい、と。水をはじくなめらかな肌をいつもそっと目の端にとらえていた。 リョウは、同じく同期のリツカと誰もが認める仲だった。 リツカは、私のいとこで、私の家に下宿していた。 リョウがプールに浮かび上がったその後、リツカは大学をやめて、叔父と叔母の待つ東京へ帰った。帰った後、リツカは精神のバランスを崩して、海沿いの療養所でぼんやりと毎日空と海をながめている。リツカは私には何も言わなかった。でも、きっと知っていた。私がリョウを求めていたことを。
2005.06.30
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大学生だったあの時、私は自意識過剰だった。自分の海でもがいていた。何もかも思うとおりにいかなくて、家族とも、他人ともうまく関係を続かせることができず、くすぶった感情をプールに溶かしこんでいた。 今頃、部員達はOBとの交流試合の後のお約束の飲み会で、もう3次会でもやっているかもしれない。 水泳部のOBになって、このプールにやってきたのは2度目だった。最初は卒業した年に、半分義理でいった。それから、ずっと避けていた。 私の同期はきっともうこのプールには、こない。 ずっと、こない。 卒業した年に、義理でやってきた交流試合のあと、深夜のプールに同期のリョウは沈んでいた。 最初に発見したのは、私だった。わたしの目の前で、リョウはゆらりと水面に浮いてきた。鏡のように水銀灯を反射していた水面が割れて、リョウが現れた。 きれいだ、と最初に思った私はそれから自分を許さなくなった。
2005.06.29
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私の家は、完全に乾燥地帯にあった。干乾びていた。 乾燥地帯のはずの私の家には、溺死者がいた。父と母だ。父は仕事とギャンブルに溺れ家に寄り付かなくなっていた。母は決してつかめない愛情のかわりに子供、すなわち私に溺れていた。私を愛情という甘い毒の縄で縛り上げ、鵜飼のように一定距離だけ放つ。おいしそうな餌を飲み込んだら、すかざず首を締め上げ、吐き出させる。 そして、満足する。悪いものを食べないように守ってやったと。 私は、ゴブゴブと塩素のたっぷり入ったくさい水を飲んで溺れかける。泳げるはずの私もまた、この家に戻ると溺死する。 私は、親の偏った思いやりに溺れている。 随分とこのプールの水を飲んだ。昼間の練習が嘘のようにしんと静まり返っている。
2005.06.28
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水銀灯がゆらゆらと水面を照らす。夜になって気温が下がった温水プールに、もうもうと水煙が立っている。足の先をプールに浸す。27.5度。私の一番好きな水温だ。 誰も泳いでいないプールは、波が立たない。そのため水銀灯の明かりは、鏡面のように水面を変えてしまう。 スタート台にたって覗き込むと、私の顔が映る。泣いている。いつだって鏡に変化したプールに映る私の顔は泣いている。 ひとりでいる時にしか、水の鏡は私の顔を映さない。 泳ぎだすと、波が規則的にひろがる。水面は乱反射して、目に悪そうな水銀灯の明かりが呼吸の為に上がった顔を刺してくる。夜のプールで泳いでいると真実と現実の間でいつも溺れている。 本当は泣いているのに、泣きたいのに、泣けない。 私は、子供の頃から、泣かない子供だった。 でもプールではゆっくりと涙をためることができる。このプールの幾分かは、私の涙でできている。 何千メートルこのプールで泳いだのだろうか。回遊魚のように、100メートルを60本というメニューをこなしたこともあった。あの時はプール全体が人間の回遊でうねっていた。海の感覚に似ていた。そして私は、魚の脳になって無心に回遊した。 大学の水泳部に入って、ずいぶんと私の体は変わった。締まった足首と張った太ももは、厭味なくマイクロミニを受け入れた。みっしりとついた筋肉の上につるりと脂肪の膜をまとった二の腕は、なめらかに弧を描き、ノースリーブに迫力を加えた。 完全に水生生物の適応体になった。 同時に練習後、プールサイドに上がるときの体の、思いもかけない重力をもてあますようになっていた。 適応しない場所にいると、体が重く、息も苦しい。そんな場所がプールサイド以外にあった。 自分の家だった。・・・・・・・・小説をスタートさせます。いつもどおりゆっくりですが、気持ちの内面を丁寧にえぐって生きたいと思います。気長におつきあいください。
2005.06.26
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してきました。というわけで、しろねこは、パートナーのしまねこの苗字にかわりました。本籍も北海道でなくなり、なんだかちょっと自分ではないようでさみしかった・・・でも自分は自分。これからもマイペースでやっていこうと思います。小説、かくぞ~~
2005.06.13
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とてもひさしぶりです。。。本日、ふるさとで結婚式をしてきました。奇跡的に昼過ぎから雨がやんで、ガーデンで楽しく、友人だけでささやかなパーティをしてきました。おちついたら、小説を再開したいと思います。左手薬指に、幸せな違和感を感じつつ。
2005.06.11
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