買書とつんどくの日々

買書とつんどくの日々

2010年10月27日
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目を見ると、ピカの瞳の底に、街灯の光が落ちていた。さっき見たあのピカピカが、ピカと呼ばれる英一の弟の目に宿って、淡い光を放っているかのように。
「風子だ」と英一は言った。
「うん」と、ピカもうなずいた。
ボクたち、ふうちゃんに会えた。ピカの目の輝きが、そう言っていた。

(宮部みゆきさん「鉄路の春」(「小暮写眞館」所収)P626)

というわけで、宮部みゆきさん「小暮写眞館」を読みました。

写真をめぐる連作ミステリといった感じで始まって、そのうち、花菱家の「不在の中心」である「風子」と、その死をめぐる家族のそれぞれのトラウマ、そこからの再生へと重点が移り、最後は、主人公「花ちゃん」と「垣本順子」の青春恋愛(?)ものに化けてしまいます。

ということで、良く言えば一粒で3度おいしい、悪く言えば焦点が定まらない、ということかと思います。
なるほど、キャッチの「物語のすべてが詰まった700ページの宝箱」というのは、そういうことか、出版社サイドもわかっていたんじゃないか、と思いました。

では、面白くなかったかというと、これがとても面白かったのです。
たしかに、この3つの物語の組み合わせが整合的になされているのかというと、疑問に思いますが、そんなこととはかかわりなく、僕はカタルシスを感じながら走りきったみたいです。

ところで、余談ですが、帯が、当初写真のとおり「もう会えないなんて言うなよ」だったのですが(僕のもそうです)、少したってから「もう会えないなんて言わないよ」になり(いや、当初から2種類だったのか?)、今は「きっとまた会える」に変わっていたりとか、これはなんだか思わせぶりです。
続編があるのでしょうか?

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Last updated  2010年10月27日 08時18分19秒
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