灯台

灯台

2024年11月21日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類








愛しい人


息もできなくて落ちてく夢ばかり見る。
テンプレ通りの過酷と困難。
なめらかなカーテンレールが、
光に捲れている美しい朝なの―――に。
目玉焼きが冷蔵庫に残っていて、
蛇口から一滴したたり落ちて静寂を搔き乱す。

また向かい合ってる、
まだ何かあたしあなたに言おうとしてい―――る。
きょとんとして、眼があって、はにかんで、
すぐ、ひたむきな表情、影・・・・・・。

空の薄雲はいつから染み出した黒の摂理に、
気付かず染まる。
寒い部屋で電気毛布にくるまりたい、
暗い道でも遠くに灯りを見つけたい、
目覚めに暖かいチキンスープを一口飲みたい、
だのに、心の中の空模様は最悪最低曇り時々雨。

一度きりの夕焼けの町、
そこからは海だって見えない歩道橋だけど―――。

夏が終わって秋が来て少し季節が加速する、
夜の静けさを掻き消す嵐。
世界に馴染んでゆくための信号機が、
通りの名をピックアップする。
鯛焼きの匂いがする。
君はいまどうしているだろう、それが心の支え、
それが人間らしい感情のつながり。

何処かに向かうという決定事項よりも、
何の為にそうするのという問い掛けから始めてしまう癖。
電車の窓にもたれて地に落ちし影。
フォークは沈むふわふわの苺のムース。

地下鉄から、地上へ、それでも足を運んでいるよ、
家へ帰らなくちゃいけないから、
その前に美しく胸を逸らすスターバックス、
砂の中に埋もれたもののための音楽。
誰もいない凍り付きそうなアパート、
ケチャップライスの匂い、
孤独を紛らわすためのSNS、
成層圏の明るさ、
きれぎれの幸福、バスの後部座席が近頃はお気に入り。
昔からの友達は要領よく、
また別の友達を見つけたよう―――だ。
テーブルの上には折り畳まれた宇宙人みたいな丸眼鏡。
麻婆豆腐の痺れを思い出す、
―――インスタグラム御用達眼鏡。

ふと記憶に耳を澄まして、
あの街へと続く曲がり角の向こうへ行けば、
偶然と必然が傾いてゆく香水の香りとステーキハウスの熱気。

御伽の国の迷子、蜃気楼ばかりが見えちゃってさ、
プラネタリウムと水族館を併せてもまだ遠すぎる夜空、
ノスタルジックなイメージに光は優雅に靡く、
通り過ぎた人達の背中、
移り変わる街並みと、速過ぎる時計。
元の形に戻れない麦藁帽子、
サイズが入らない水着、
君の残像がまだ消えな―――い、
君の悲しみがまだ消えな―――い。










お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2024年11月21日 20時46分48秒


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: