JAZZライブとパパが作った料理についてばかりを話題にして、読んだ本について最近ブログを書いていなかったので2冊について書きます。
(1) 原発ホワイトアウト
:若杉 冽 (著)
何かの新聞の書評で結構評価してあったので読んでみたが 正直それほど内容のある本
では無い。作者は、某「東大法学部出身」の現役官僚らしく、おそらく経産省所属でかなり原発の課題に精通し、その課題をどうやって金銭で隠ぺいするか、官僚と政治家と財界がどう動くか、東電が金をプールして金に裏付けられた力を背景に「鈴木宗男」ばりの国策捜査を弄しマスコミと検察と警察を動かすことで「利権の塊の原発村にとって問題行動する人物を社会的に葬るか」を具体的に示したことが書評で「好評だった」所以か。「利権の塊である原発村」がフクシマを経験しても尚、ゾンビのように「電気料金という名の税金」を源泉として簡単に蘇るか、その「村」の浅ましさを赤裸々には描いてはいる。しかし、作者の如何せん「書く力」不足は明らかで「男と女を描くこと」(日村直史資源エネルギー庁次長がキャバクラ嬢を電力会社の丸抱えで愛人にするクダリは森村誠一のようなドロドロした人間の愛憎を描く力が全く足りない。東大法学部出身で「日本のエリートの中のエリート」を自認する日村が些細な「電力の金の役得」のお零れを享受することで満足する、いや自分を満足させている矮小さ、見っとも無さを敢えて強調したかったのか。ちなみに、 飯田 哲也
さんによるとヒムラは実在人物ではI前資源エネルギー庁次長らしい)も大下英治ばりの「政治家」、「商人(小佐野賢治ら)」を描く力も無く、事実がぶつ切りに並べられるだけで文章としての連続性が欠けて、イマイチ。山崎豊子氏の『運命の人』のモデルとなった西山事件に擬したマスコミ「玉川京子」と内部告発の官僚「西岡進」の絡み合いとその逮捕劇、あまりに唐突で「え、こんな感じで終えちゃうの?」と拍子抜け。書店で30分くらいページを捲って、読み飛ばすだけで十分な本と感じた。20代、30代の若手は勿論だが、40代、50代の高級官僚もかつての先輩が享受した「天下りのうま味」は殆ど消えた恨み節、怨念が本書を書く源泉に思えた。若杉さんの志はもっと高く、「権力の中枢で原発再稼働へひたすら突き進んでいく暴挙をWatchし、告発し続ける」ということかも知れないが、何かが足りないと感じた。
(2)昭和の犬(直木賞受賞):姫野カオルコ(著) 直木賞を取ったし、アマゾンのレビューでも高評価なので読んでみた。最後の100ページくらいは多少面白かったが、「どうしようもない父親、母親を持つ孤独な少女」の5歳から49歳までの「悲惨なお話」にしか思えず、無理やり読み切った感じ。直木賞を取ったというニュースが無ければ、最初の10ページくらいで読むのを止めたかも知れない。「土居まさるの白いギター」等、姫野さん自身の自叙伝では無いにしてもかなり自叙伝的な要素があって「全然駄目」ではないが、「どうしようもない父親、母親を持つ孤独な少女」は陰惨さが拭えず、パパには読むのが辛かった。特に、どうしようも無い父親が捕虜としてシベリアでの抑留経験がトラウマになったのか、理不尽さの塊になるクダリは読み辛さがMAXに。同じシベリアでの抑留経験を描いた作品なら、胡桃沢耕史著「黒パン俘虜記」の方がユーモアとペーソスに溢れ比較にならないくらい面白い。人間の愚かしさを描いている意味でも深い。「黒パン俘虜記」も直木賞を受賞した作品だが、こちらの作品は。。。大学生になって悲惨な呪縛から解き放れたれても、変な大家、元住人等との付き合い、就職してから血縁の親族のために病院、介護施設通い(時間と自腹のお金を割いて東京と滋賀を往復した姫野さん自身が行った行為としては頭が下がるが、それを敢えて小説にしてまで書くのは。。。)と救いが無い。おまけに最後は、主人公イク自身が自律神経失調症か何かで病に苦しむことになっては本当に救いが無い。それがある老人が朝散歩に連れてくる「犬」によって癒されるのが最後の方で敢えて言えば「光」だが、パパとしては耐えがたい小説。心躍る箇所がほぼ皆無なので読むには値しない。本の帯的には「皆が躍ったバブルの狂乱的な時代にありながら、自分の心と向き合った、ある女性の人生。Still Life」ということなんだろうけど、そのStill Lifeが面白くなければ仕方ない。 現実の辛い出来事をなぞっただけの、敢えてまた小説にしてまでも読みたいような代物ではない。直木賞を与えるべき、他の作品が無いのかなと疑問に思った。
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