2.2 モデル400以下のシステムとのハードウエア構成上の比較 (1)論理素子は全てIC(集積回路)を使用している。 (2)先回り制御を行っている。すなわち、命令の先取りを行う事により命令読み出し時間を実効的にゼロにしている。 (3)大型両面パッケージを採用している。 (4)信号伝播線路での遅れ時間を少なくする筐体,架構造を採用している。 (5)主記憶のリード・ライトを8字単位として高速化している。 (6)コントロールメモリ,バッファメモリにもICを採用している。 (7)メンテナンス・パネルの採用によりMTTR(Mean Time To Repair)の短縮を計っている。 (8)メンタナンスパネルからのクロックストップ,クロックステップ機能を採用して、MTTR(Mean Time To Repair)の短縮を計っている。
MTTRの短縮もさることながら、MTBF(Mean Time Between Failure)を長くすることは、オンライン・リアルタイム・システム用コンピュータとしては最も重視されるべき性能である。 NEACシリーズ2200モデル500は、当時の技術の粋を集めた世界で最先端のコンピュータであった。
操作盤には表示ランプと表示ランプ兼押しボタンがある。 9.1 操作盤 (1)表示ランプ 表示ランプは次のような意味を持つ。 SYSTEM ACTIVE : PCB又はPDT命令をメインコントロール部又はI/Oコントロール部で実行中に点灯する。 FAN : 直流電源装置又は直流電源装置に接続される制御部の温度に以上が検出された時に点灯する。 CB : 直流電源装置に接続された制御部のサーキットブレーカが切断された時に点灯する。 PARITY : 中央処理装置が緊急割り込みモードのときに点灯する。 VOLTAGE : 直流電源装置に異常電圧が検出された時に点灯する。 PROGRAM : 中央処理装置が動作中に不正(ILLeGAL)命令コードを検出した時に点灯する。 EXTERNAL : 中央処理装置が外部割込みモードの時に点灯する。 INTERNAL : 中央処理装置が内部割込みモードの時に点灯する。 RELOCATE : リロケーション機能が動作中に点灯する。 (2)表示ランプ兼押しボタン AC ON : ・ランプ:システムにAC電源が供給されている時に点灯する。 ・ボタン:システムにAC電源を供給する。 AC OFF : ・ランプ:システムに制御用電源のみが供給されている時に点灯する。 ・ボタン:システムに供給されているACを切断する。DC OFF ランプが点灯時に有効。 DC ON : ・ランプ:システムに直流電源が供給されている時に有効。 ・ボタン:システムに直流電源を供給する。 DC OFF : ・ランプ(白)システムのDCが断の時点灯。 ・ランプ(赤)直流電源装置に異常電圧が検出され,DC OFFになった時点灯。 ・ボタン:システムに供給されているDCを切断する。 赤ランプ点灯時には異常電圧検出後の保持回路をリセットする。 SENCE1~8 ・ランプ:当該番号のスイッチがONの時点灯。 ・ボタン:当該番号のスイッチをON又はOFFの状態にする。 INTERRUPT ・ランプ:操作者が実行中のプログラムに対話を要求し,プログラムがその要求を受け付ける(SVI:Store Variant and Indicators命令を実行)迄点灯している。 ・ボタン:操作者が実行中のプログラムに対話を要求する時に押す。 SYSTEM CLEAR・ランプ:使用しない。 ・ボタン:STOPランプが点灯している時のみ有効で,磁気テープ制御部と中央処理装置に効果を及ぼす。 TYPE ・ランプ:中央処理装置でタイプライタに対するPDT(Peripheral Data Transfer)命令を発し,制御部でそれを受け付けて,データ移送の終了まで点灯している。 ・ボタン:操作卓がコントロール・モードでの時メインメモリの内容をタイプライタに打ち出す。 ADDRESS MODE・ランプ:論理装置の動作アドレス・モード表示,点灯する。 ・ボタン:STOPランプ点灯時のみ有効で,論理装置の実行アドレス・モードを切り替える。 RUN ・ランプ:中央処理装置が動作中に点灯する。 ・ボタン:中央処理装置を動作させる。 INITIALIZE ・ランプ:NITIALIZEボタンを押している間点灯する。 ・ボタン:1)中央処理装置が動作中と否とにかかわらず,操作盤上のランプ試験をおこなう。 2)STOPランプが点灯している時は,中央処理装置及び周辺制御部を書記状態にする。 3)中央処理装置が動作中(STOPランプが消灯中)のイニシアライズ機能は,SYSTEM CLEARボタンと同時に押した時のみ有効である。 STOP ・ランプ:中央処理装置及び周辺制御部が停止状態の時点灯。 ・ボタン:プログラムの実行を停止させる。
モデル500は,その後,NEAC2200モデル700やNTTのDIPS-1(Dendenkosha Information Processing System 1)へと,技術が継承されていった。 また,モデル500の浮動小数点の加減・乗除の二進演算を行う『科学演算付加機構』はNECのスーパーコンピュータへと技術が継承されていったもの想像している。
『MTBF』とは、Mean Time Between Failureの略で、JIS Z 8115信頼性用語によれば, 「修理アイテムの相隣る故障の間の動作時間の平均値」と定義され,. 機械システムや情報システムなどにおける信頼性の評価の重要な指標の一つであり、設計技術者の設計指標の一つでもある。 例えば、NEAC2200シリーズ・モデル500では、プリント基板では、CTμL952、CTμL953、CTμL965、CTμL973などといった論理ICの種類毎にその種類毎にそれぞれのMTBFが計算されており、一枚の基板の使用されているICの種類と数から、そして、抵抗やコンデンサの非論理素子もMTBF率向上と基板の集積率向上を目的として複数の抵抗やコンデンサをそれぞれ一個のICパッケージ化して、同様にMTTRが計算されており、更にプリント配線はその総延長とスルーホールの数からそれぞれにもとずいて、その基板のMTBFが算出され、それら基板の総数からそのコンピュータのプリント基板全体のMTBFが算出されており、さらに、電源装置や配線やコネクタ等のMTBFも同様に算出されており、それらを合算してそのコンピュータシステム全体のMTBFが算出されていた。
また、『MTTR』とは、Mean Time To Repairの略で、故障から復旧までの時間、修理が終わるまでの時間であり、信頼性の評価のもう一つの重要な指標であり、CE(customer engineer)の技術レベルの指標の一つでもある。 そこで、『MTTR』短縮を目的として、NEAC2200シリーズ・モデル500には『メンテナンス・パネル』が取りつけられていた。 例えば、この『メンテナンス・パネル』には、クロック・パルスを操作スイッチによって一発づつ出せる機能もあった。 本書も、ユーザ現場で故障修理に当るCEのMTTR短縮を目指した著作物である。