たくあん蔵

たくあん蔵

深紅の翼 序章 第一、二、三、四章 



深紅の翼

~序章~

波が岩に当たって砕ける音が響く。静寂。そんな夜の海の静けさがある一枚岩の上で、彼女は羽を休めていた。「・・・・・くっ・・・・・」痛みに顔をしかめる。無理もない。彼女はおびただしい数の傷を負っており、体は飛びすぎにより疲労しきっていた。おまけにいつも傍にいて心の支えになってくれる兄も、今はいない。(でも・・・・・)彼女は考える。(いつまでもここにいたら、あいつらに見つかるかもれない・・・・・夜明けまでにもう少し飛んでおいたほうがいいのかも)それなら、と彼女は翼を開き飛行する体勢になる。が、その僅かなゆれで体中の傷が痛み出した。(ッ!!!)その場に倒れこむ。(駄目・・・このままじゃ・・・私達の村が・・・・・・・お願い・・・私の体・・・動いてっ・・・!)が、無情にも今度は意識が薄れだした。(そん・・・な・・・兄さん・・・・)そのまま彼女の意識は、闇に落ち込んだ。

~第一章~

「おいヒョウガ!もっと早く進めねぇのかよ!」「うるっさいわねえ・・・・これが最高速度だって何回言ったら解んのよ!」海のド真ん中で喧嘩の声が上がる。「ベイラス・・・・こんな直射日光が当たってる場所でアイスライドを展開しとくのは、ヒョウガにとってはただでさえ大変なことなんだぞ?速度は多めに見てやれ」「アラ、ルビーいいこと言ってくれるじゃない♪・・・・ほら聞いたでしょベイラス?」「・・・はいはいワカリマシタよっ!・・・・それでもこうクソ暑いのは何とかならんかねえ・・・」ベイラスがため息をつく。
この一行、ルビーチーム。ポケモンリーグ優勝経験があり、結構名前の知れているチームではある。今も近くの街へ行こうと海上移動中なのだが――――「暑くて死ぬーーー!」―――― 予想以上の暑さに当たってしまった。「おまけに俺の分の飯はゴンが食っちまうし・・・・」「ご、ごめんなさいだな~・・・・」ゴンと呼ばれたカビゴンが、申し訳なさそうに言った。「寝起きでどれが誰の分かわからなくて・・・・」「だからって何でわざわざ俺の分を・・・・・」と、横からぐらどんが口を挟む。「しかしヒョウガ。実際みんなこの直射日光でバテてきている・・・・もう少しスピードを上げることはできんのか?」「そーだそーだー」「アンタは黙ってなさいっ!」「ギイャーーーーー!!!」憐れ、一言多いがためにベイラスはヒョウガに冷凍ビームをお見舞いされた。ベイラスは冷たさにもがいている。「やーいやーい、マヌケー馬鹿ーおたんこナスー」リコイルのその言葉に、ベイラスはカチンときた。「んだとゴルァッ!!」起き上がったベイラスはリコイルを押さえつけ、火の粉を浴びせかける。弱点である炎を浴びたリコイルは、あまりの痛さに喚いた。「ギャーーー!!痛い痛い!すみませーん!!許してー!」「許すかボケェッ!!」が、調子にのって火の粉を使いすぎたベイラスは、自分の足元の氷が溶け出していることに気がついていなかった。そしてとうとう・・・・・バシャーン!!「おわーーーー!!」・・・・氷がそこだけ割れ、ベイラスは海に落っこちた。そんな様子を見ていたノクターンは、半ば呆れ顔でルビーを見る。「・・・・ルビー・・・・何故あなたはあんなきかん坊をつれてるんですか?」「前に言ったことあるだろ?・・・・あいつとはじめてあった時のこと・・・・あいつを一人にさせたくはないんだよ」その言葉を聴いたノクターンは心の中で笑う。(なんだかんだ言って一番お互いを信頼しあっているのはあの二人なんですね・・・・・)その時、「ねえみんな?ちょっとあそこ見てよ」ヒョウガが叫んだ。「オオついに街に着いたか!」「そんなわけないじゃろう」ベイラスの一言にぐらどんが即座に答える。「じゃあなんなのさ、ヒョウガ?」リコイルが尋ねた。「ほらあそこの岩の上・・・・・なんか鳥?みたいなのがいるみたい」「え?」ベイラスは目を凝らす。なるほど、海面に突き出た岩の上に何かがいるのが見えた。「・・・ホントだ」「んじゃヒョウガ。あそこまで行ってくれないか?」「うん。わかったわ」ルビー達はその一枚岩のそばに近づいた。

それはルビーも見たことのないポケモンだった。赤い羽根、お腹には青い三角マーク、顔立ちから推測するにおそらくは雌だろう。「・・・・・どー考えたって水タイプじゃないよな?何でこんなとこにいるんだ?」「さあ・・・・・」ベイラスとリコイルが話していると、「なっ・・・このポケモンは・・・・・!」ノクターンが息を呑む。「ん?ノクターン知り合いか?」「いや・・・・そうではないんですが・・・・素直に驚いてるんです。このポケモンは、ラティアスという種族で・・・」「らてぃあす?」「はい。夢幻ポケモンといって・・・・非常に珍しいポケモンなんです」「ふ~ん・・・・なんだかよくわからんが、貴重ならゲットしちゃえ!」が、ベイラスのその言葉をルビーはさえぎった。「いや、んなことしてる場合じゃねえ!こいつもう死にそうだぞ!」「え?」「もう瀕死とかのレベルを超えてる・・・・・!生きるか死ぬかってとこみたいだ!ヒョウガ!」「え、あ、ハイ?」「全速力で近くの街に向かってくれ!」「うん。わかった」と、そのラティアスも乗せた氷の板はジェットスキーのようなスピードで海面を走り出した。「だ~~~っ!!!やっぱりスピードでんじゃねえか!!!」「あのねえ!今は緊急時だからこのスピードだしてんのよっ!」次の街に着くまで、ベイラスとヒョウガの口喧嘩は終わらなかった。

オリジナル技の説明
アイスライド―氷の板を作ってその上に乗り波乗りをする。通常の波乗りより多くの物を一度に運べる。

~第二章~
ヒョウガの超高速移動により、何とか手早くポケモンセンターまでたどり着くことができた。「さて・・・・・コイツはものすごーく貴重な

ポケモンなんだろ?」「ええ、まあ」ノクターンが答える。「んだったら正面から突撃してよいものか?」「あっ・・・」確かに、そうである。ラ

ティアスというものは1メートル半近くの大きさだった。これぐらいならゴン一匹で運べるが、なにぶん目立ちすぎる。野次馬に囲まれ

てそうこうするうちに死んでしまった、などといったらシャレにならない。目に付かないようにセンター内に運ぶにはいったいどうす

ればよいのだろうか?「・・・・こうなったら・・・・ベイラス?」ルビーはベイラスを見て、微笑む。「な、なんかいやな予感・・・・・」

ベイラスの予感は的中した。ルビーがベイラスにやらせようとした事、それは―――ボカーン!「うわっ!」「なんだなんだ?」―――ポケモ

ンセンター内で一騒ぎ起こしてもらうことだった。事態が事態なのでまぁ仕方がないとも言えるが・・・・・。その騒ぎに乗じて、ゴンがラ

ティアスを運び込む。「なんかベイラスって・・・こういう立ち回りが似合う・・・」リコイルがボールの中で(ゴンとベイラス以外はボールに

しまっていた)ボソリと呟く「・・・・・・」誰も何も答えない。全員がそう思っていたからである。

ジョーイは、やはり多少は驚いたもののさすがはプロ、さほど追求せずすぐさま治療を開始してくれた(ついでに言うと、爆発を起こし

たことも見抜かれてしまった)。全員(ぐらどん以外)は治療の間センター内でくつろいではいたが、「治療中」ランプが消えたと同時に治

療室前に集まった。やがてジョーイが出てくる。「ジョーイさん、どうでしたか?」「とりあえず全部の傷は直したけど、肉体内部へのダ

メージが大きかった。回復までは時間がかかるかもしれないわ」「そう、ですか・・・・・」ルビーは胸をなでおろす。なんにせよ、助かった

らしい。「―――ところであのラティアスはどこにいたの?」今度はジョーイが尋ねる。「ええっと、海上です。小っこい岩の上に倒れて

るのを見つけたんです」その言葉を聴いたジョーイは、首をかしげる。「・・・・あの傷・・・・野生ポケモンがつけた傷とは、とても思えな

い・・・・・普通のポケモンならあそこまで徹底的に攻撃したりはしないもの」「となると・・・人間か」ベイラスが唸る。「たぶん、もうすぐ目

を覚ますはずよ?」「あ、そうなんですか?それだったら見に行ってみます」ルビーがかけて行く。「アンタは行かないの?」ヒョウガがベイ

ラスに言う。「なんでさ?」「だって・・・同じドラゴンタイプでしょ?同族のよしみってもんがあるんじゃない?」「・・・羽がうらやましいから

、イヤだ」ベイラスがボソリと言う。「羽・・・・・?」「確かにベイラスってもう進化できないから、翼についてはあこがれるしかないもんね

~」「なるほど、意外と気にしてたんですか」「うるせえええぇぇぇぇぇっ!!」ベイラスがキレる。「わかったわい!行ってやるよ!ああいっ

てやりますとも!その同族の何とやらで!」ベイラスも走って行った。「・・・大人気ない・・・」リコイルがため息をつく。

そのころ、運び込まれたラティアスが、目を覚ましていた。(う・・・・ここは・・・・?)彼女はまず自分の傷が治っていることに気がつく。が

、直後に自分が寝かされているものが何か人工物の類であることにハッとする。(そ・・・そんな・・・まさか気絶したあとあいつらに・・・捕

まっ・・・た・・・?)その時、扉が開いてルビーが入ってくる。「おっ、ジョーイさんの言った通りだな・・・・。ど?元気になった?」しかし彼女

は明らかに敵意を持った目でルビーを睨んだ。「・・・来ないで」「え?」「あなた達みたいな・・・他の生き物をなんとも思わないような人達に

私達の村は荒らさせない!」彼女はエネルギーを収束させると、サイコウェーブとして放った。それはルビーに向けられている。

「なっ!」「危ねえッ!!」遅れて入ってきたベイラスが、エネルギー波をツメで弾き飛ばす。「テメエッ!ふざけるなっ!ルビーが何やったっ

てんだよ!」「とぼけないでっ!あなた達が私の村を・・・!」「ハイ・・・・?」ルビーとベイラスは顔を見合わせる。村?いったい何のことだろうか

。「だから・・・私が・・・あなた達を・・・!」再びそのラティアスが気絶する。「あ、オイ!」おそらくは病み上がりの体で技を使ったのがよくな

かったのだろう。「ルビー。オマエはなんともねぇな?」ベイラスが言う。「うん、まあ・・・あの一発だけだったからな・・・」「そうか・・・なら

いいんだけどよ・・・」と、「おい!今の音は何だ?」物音を聞いて全員がやってきた。「あ!ジョーイさん!またこいつ倒れちゃったんだ!」

「え・・・?それならまた治療に移るから、部屋から出てちょうだい」

部屋からでた一行は、ルビーから何があったかを聞かされていた。「ったく何なんだあのヤローは!いきなり攻撃してきやがって!」「落ち

着けベイラス!・・・にしても、何かありそうだな・・・」ぐらどんが言う。「とりあえず、次治療が終わったらみんなで行ってみようか?」「・・・

それがいいかもしれないな」リコイルの提案に、全員がうなずいた。

やがて治療が終了したと聞いた一行は、再び部屋に入る。「・・・あなたはさっきの!」ラティアスが目をむく。「ちょっと待ってって!君は

何か誤解してるんだって!」が、聞く耳持たず、のようだ。「どうしてあんなことを・・・!」「こっちの台詞だー!」「とぼけないでっ!覚・・・」「

いー加減にしやがれー!!!」「っ!!!」いきなりベイラスはラティアスに頭突きを食らわした。「ベッ・・・ベイラスッ!あんたレディーに何し

てんのよ!!!」「だってこいつ話も聞こうとせず・・・」「だからって・・・もう信じらんない!」ヒョウガは呆れ顔でベイラスを見る。「いた

た・・・・・・」ラティアスが起き上がる。「心配しなくても、私達はあなたの敵じゃないわ」「え?」「ヒョウガさんの言ってることは本当です。

私達は気絶してたあなたを治してもらうためにここまで連れてきたんです」ノクターンが説明する。「オマエが俺達を何と勘違いしてる

かは知らんがな」ベイラスが話し出す。「俺達はオマエの想像してるような奴じゃあない。それどころか死にそうになってたのを助けて

やったんだぞ?それなのにいきなり攻撃してくるってのは、いささか常識はずれじゃないか?」それを聞いたティアは少し黙ると、口を

開いた。「・・・あのう・・・やっぱり私、何か勘違いしてたんでしょうか・・・?」「そうだっつってんだろー!!!」「・・・すみません、早とちりして

しまって・・・・・・」「まぁ別に被害もなかったからいいけど・・・名前は?」「ティア、といいます」「じゃあティアとやら、あそこで何があった

のか、教えてくれんか?」ぐらどんが説明を求めた。「それは・・・話せば長くなるんですが・・・」全員、ティアの話に耳を傾けだした。

作者あとがき
今回から書いてくあとがきですが・・・なんかこの小説ムダなシーンが多いなぁ、と思ってしまいました。そのせいで展開が遅い・・・これを無事に書き終えたら台詞だけの簡単小説もつくっかな・・・。あと、先にいっておきますがこれは全十章で進めていきます。果たしておわんのいつになるやら・・・というよりこれ今思ったらあとがきになってねええぇぇぇ!

~第三章~
「まず・・・私の住んでるところについて説明しておきます」ティアが話し始めた。「私の住んでいるところはある山間にある・・・ポケモンが造った村です」「秘密の集落ってわけか」ベイラスが呟く「そうです。その村は私の兄さんを中心に、何匹かのポケモンが治めているところなんです」「あなたの兄さん・・・もう一匹の夢幻ポケモン、ラティオスでしょうか?」「さしずめその兄さんとやらが村長みたいなもんかねぇ?」ノクターンとルビーが話し合った。「今まで私達の村は外部からの干渉もあまりなく平和だったのですが・・・村を人間が狙ってるみたいで・・・」「人間?」「兄さんは村の周囲をかなり遠くまで日ごろからパトロールしているんです。そうしたらある日・・・村からかなり離れたところで村について探っている人間を発見したんだそうです」「けど・・・お前らの村ってメチャクチャ遠いんだろ?貴重なポケモンがいるからったって、そんなとこまでフツーくるかなぁ?」「うーん・・・ただ私達の村はナチュラルサークルの上にあるので、それが原因なのかも知れません」「ナチュラルサークル!?」ルビー一行が全員驚く―――ベイラスを除いて。「なちゅ・・・?何だ?それ」一同がずっこける。「おまえな~・・・その程度も知らんのか・・・」「まったくベイラスらしいね~♪」「るせえっ!!・・・んで何なの?それ」ルビーとリコイルを一喝したベイラスはもう一度聞いた。「ナチュラルサークルっていうのは大地の力があふれてる場所なんだな。別名を命の点穴といって・・・」「このナチュラルサークルの近くでは植物や生き物などがよく育つことが知られてるんです。今現在で特殊な力を持つポケモンは、ほとんどがナチュラルサークル上で生まれたとされてます」ゴンとノクターンがそれぞれ説明する。「なーるほどなぁ。その人間共は特殊な力を持つポケモンも狙ってるって訳か」「村に危険が迫ってることを知った兄さんは他の集落に助けを求めるよう私に言ったんです。それで私はその村に向かったんですが・・・途中でポケモントレーナーに襲われてしまって・・・・・・」「ふぅむ・・・まあおそらく村に行こうとしてるやつらの仲間でしょうね」ノクターンの言葉にティアがうなずいた。「たぶん・・・村の正確な位置を聞き出そうとしたか、純粋に私を捕獲しようとしたか・・・このどちらかだと思います。結局そのトレーナー達の攻撃はなんとか振りきれたんですが、休憩しようと着地した岩の上で気絶してしまって・・・」ティアはここで言葉を切ると、「助けていただいて、本当にありがとうございました」と、頭を下げる。「まぁ別に困った時ゃお互い様だからいいけどさ」ベイラスが手をひらひらさせる。「ちなみにその助けを求めようとした村って・・・どんなとこだ?」「ええっと・・・すみません。私も行ったことがないんです。兄さんに今回場所教えてもらったばかりで・・・それにあまり村から出たこと無いですし・・・」「エ?あんまり出たこと無いの?」「私の兄さんは・・・・・・」そこで言葉が途切れる。「?どうしたの?」「・・・やっぱり言うのをやめときます。少々恥ずかしくて・・・」「(何じゃそりゃ?)・・・え~っと話戻すけど、じゃあその村ってどこにあるの?」リコイルがベイラスに変わり訊く。「兄さんの話では、フスベシティ近辺の山岳地帯にある、ドラゴンポケモンの里だそうです」なるほど。フスベシティといえば竜が集まる街として有名である。ルビー一行は頷いていたが、ベイラスだけ違う反応を見せていた。(フスベシティ・・・山岳・・・ドラゴンポケモンの村・・・・・・!!)まさか・・・?ベイラスは訊いてみる。「・・・その村・・・村長が変わってるとか聞いてないか?」「村長さんが・・・?あ、はい。何でも村長にあたるカイリューが青いって聞いてます」「!!!」―――破壊しつくされた家々。一面に広がる鮮血。あちこちに倒れている仲間。その中の一つである、自分の育ての親にあたる「青いカイリュー」の死体―――「ん?ベイラスどうしたの?」ヒョウガが声をかける。それには答えず、ベイラスは話し出した。「・・・ティア。お前が目指していた村は、おそらくもう存在しない。とっくの昔に滅ぼされたはずだ」と、ここでルビーが反応する。「ベ、ベイラス・・・・その村ってまさか・・・」「・・・ティアが向かっていた村・・・カイリューの話を聞いて確信した・・・その村は、俺がいた・・・何者かに滅ぼされた村だよ」「何っ!?」全員が驚愕の表情を浮かべる。「本当なんですか!?」「ああ・・・ティア。5年前か・・・・・・何者かが村に攻め込んできたんだ。俺はたまたま村の外に出ていたおかげで助かったんだが、他のやつは・・・皆・・・」「・・・すみません・・・いやな事を思い出させてしまって・・・」「別にティアちゃんが謝ること無いのよ」うなだれたティアをヒョウガが慰めた。と、そのときベイラスが口を開く。「何ならお前の村の防衛を俺たちに任せてくれないか?」「え?」「言い忘れてたが、俺の村で村長を務めてた青いカイリューは俺の親父なんだ。親父ならこういう依頼は必ず受けたはずだ。そんなら村の生き残りとして、親父の志を俺が継ぐ」「それに俺たちもいるしな」ルビーも言う「皆さん来てくださるんですか?」「そりゃあ、ベイラスだけに生かせるわけにも行かないし・・・なあ?」「うんうん!僕達全員で見てないとベイラスはドジなだけだし」「オマエに言われたかねーよ・・・そんじゃ皆!村の防衛頑張るぞっ!!!」「お~~~う!!!」「ありがとうございます、皆さん!」ティアが顔を輝かせる。「ではティア・・・村まで案内してくれ」「はい!」ルビー達は「ポケモンの集落」に向けて出発した。

―――――だがその後を密かにつける者がいることを、ルビー達は知らずにいた。

作者あとがき
この章で書いた設定は立てるのあんまり時間かかりませんでした。なんか勝手にナチュラルサークルとか作っちゃってるし、展開ムリあるし・・・。その辺は見逃してくださいっ!

~第四章~
ティアの背に乗ったルビーは村に向かって一直線に飛んでいた。途中何度も落ちるのではないか、と心配したが(*1)揺れもほとんどないので、今や快適な飛行を楽しんでいた。と、ティアの翼に妙なすじが入っているのに気がつく。「あれ?」「どうかしたんですか?」「なんか翼に青いすじが・・・」「ああそれですか?」ティアが言う。「そのすじみたいなの、それは青い羽根です」「え?何で?ラティアスって全部赤いはずじゃ・・・」「生まれつき、みたいです。兄さんの方には赤い羽根が入ってます」ふ~ん、とルビーは納得した。その時ふと頭に浮かんだことを訊く。「ところであとどれぐらいで着きそう?」「ええっともうすぐ・・・あっ、見えました。あそこです」ティアが見た方向をルビーも見る。何匹かポケモンが見えた。「おっ!もう着いたか!んじゃ着地してくれ」「わかりました」

村に降り立ったルビーは全員をボールから出しながら、村の景観に目を見張った。「す、すげえ・・・」「綺麗なとこ・・・」草木は青々と茂り、柔らかな日の光が村を流れる小川を照らしている。景色が生き生きとしているように見えるのは、ここがナチュラルサークルだからだろうか。ポケモンもあちこちにいる。「おほー・・・すげえいい景色!」「あれ?ベイラスにも景色を楽しむような気持ちがあったんだ~」「なんだと!?また死にたいかてめぇっ!!!」「わー!!ジョークジョーク!許して・・・」「やるわけねぇだろっ!火炎放・・・」と、その時どこからか「ティア~~!!」との声が。声がする方向に二匹が顔を向けると・・・なにやら青いものがこちらに猛スピードで飛んでくるではないか!「なんじゃあああああぁぁぁぁぁ!!??」それはベイラスとリコイルを跳ね飛ばし、ティアの前で止まる。「のふっ!」「ぎゃあっ!」「ティア~・・・心配したんだぞ~・・・どこにもケガはないかっ・・・・・・ってあああああ!!!翼に傷がついているじゃないかあ!!」その青いポケモン―ラティオス―はティアの体を見回し、傷を発見するたびに騒ぎ立てる。「ちょっと兄さん・・・恥ずかしいよ・・・」「兄さん?」ノクターンが言う。「あ、そうそうまだ説明してなかったですね・・・兄さん。皆さんに自己紹介して」「・・・こいつらは誰だ?」怪訝そうな顔をしてそのラティオスが呟く。どうも妹と一緒に現れたのが気に食わないらしい。(な・・・なんだコイツは・・・・・・)歯のすくようなシスコンっぷりにベイラスは鳥肌が立つのを感じる。(ベ・・・ベイラス・・・)(な、何だよヒョウガ)(ティアちゃんの言ってた「恥ずかしい」っていうのはこれだったのね・・・)(そりゃー話すのためらうわな)「もう兄さん!村を守ろうとして来てくれた人達なんだよ?それに私の命の恩人でもあるし・・・」「な、何だと!?お前の命を狙ったヤツがいたのか!?大体にしてお前が行ったのはポケモンの集落だろ!なんで人間がいるんだー!!」もはやこのラティオスは錯乱状態だ。「あーもーコイツうっせー!リコイルー!やれー!」「・・・オッケー」ベイラスの呼びかけに答えたリコイルは電磁網でラティオスを包みこんだ。同時に中から聞こえる音もシャットアウトされる。「これで落ち着いたな・・・してティア?あいつは何だ?」ぐらどんが言い出す。「すみません皆さん・・・あのラティオスが私の兄で、ティオというんです」「ほうほう・・・ってなんかあいつまだ喚いてるぞ・・・仕方ない。リコイル、音シャットアウト解除!」ヴンッ・・・「・・・やいやい貴様らー!!ティアに何かしようったってそうは行かんぞー!!!」「さて、長引かせてもあれだしノクターン!ちゃっちゃと説明してやってよ」「わかりました」ノクターンがルビーに言われた通りに話し始めた。海上移動中にティアが襲われたこと―この時ティオが暴れだした―、岩場で倒れていたティアを自分達が助けたこと、そしてティアが向かった村はもうなくなってしまったこと。「まさかあの村が滅んだとは・・・」ティオが唸る。「んで、俺が村の生き残り代表として来たって訳」「そうだったのか・・・ましてや妹の命を救ってもらったとは・・・かたじけない。ありがとう」「当然のことをしたまでだ(「テメェが威張るな!」ベイラスが言った)」ぐらどんが言う。「それなら私達の村の防衛組織も紹介しよう・・・全員出て来い!」ザザザザッ「うゎなんかいっぱい出てきた!」「紹介しよう・・・右からピカ、リザロ、セレビィ、カメック、ハヤテ、ミローナ、アーマードだ」ピカチュウ、リザードン、セレビィ(まんまか)、カメックス、テッカニン、ミロカロス、エアームドがそれぞれお辞儀する。と、「あっっっ!ハヤテ!」ベイラスが叫ぶ。「っっっ!その声はベイラス・・・でアリますか?」ハヤテも答える。「元気してたか~!何だよ・・・こんなとこまで来てたのか!」「そっちこそ元気そうで何よりでアリます!」「ちょちょちょまてまて。何?お前ら知り合いか?」ルビーが場を整理しようとして口を開く。「そ。ちょっと・・・なぁ?」「ハイ・・・ちょっと・・・であります!」「で・・・いつもはこのメンバーで村を見回ってるわけだが・・・今回はお前たちも加わってくれるんだな?」「そーゆーこと!」その時・・・ぐ~~~きゅるるるるるぅぅぅぅ・・・「なんだなんだ!?敵襲か?」ぐらどんが息巻く。「うんにゃ。俺の腹ん音だ」「紛らわしいんじゃー!!この緊張感のないバカがー!!」ぐらどんがベイラスに怒鳴った。「いやだって・・・腹へって腹へって・・・」「あ。じゃあ私が何か木の実でもと取ってきますか?」(!?)「オオありがてぇ!ティア、お願いできるか?」「はい。じゃあいってきますね」ベイラスが言うとティアは森へ入っていった。「・・・お前たちはよっぽどティアに信頼されているんだな・・・」突然、ティオが話し出す。「?何で?」「あいつには・・・というか俺達には親がいない。物心ついた時には二人きりだったんだ。そんなことがあってティアは俺以外にはほとんど心を開かなかった」「そう・・・だったのか」ベイラスは先ほどまでのティオの妹に対する行動を思い出す。あれは妹を寂しくさせまいとする、兄なりの行動だったのだろうか・・・・・・。「・・・あいつにとって、信頼できる者が増えるのはいいことだ。・・・・・でも・・・・・」ティオは話を切った。「俺からティアを取ろうったって、そうはいかんからなあ!」「・・・・・・っ・・・・・」前言撤回。やっぱコイツはただのシスコン兄貴だ。ベイラスは確かにそう思った・・・。

「よいしょっ・・・と。このくらいでいいかな?」木の実をたくさん抱えながらティアが呟いた。と、ルビー一行に信頼のような気持ちを抱いている自分に気がつく。(・・・兄さんはいつも人間と人間にゲットされたポケモンは信用ならないって言ってたけど・・・)ルビー達が悪人だとは、とても思えない。(兄さんが言うほど外の世界も悪くないのかも)その時。「お~い。ティアー!」「え?」ティアは目を見張る。傍の茂みにルビーがいた。「ルビーさん・・・・・・?兄さん達と待ってたんじゃないんですか?」「うん、ちょっとね・・・そんなことよりちょいこっち来て」「?」疑問に思いながらティアは茂みに入る。と、・・・・・・バチッ!!「ッ!!?」背中に猛烈な痺れを感じ、ティアは倒れこんだ。「よくやった。エレブー」背後の木から男が現れた。見覚えのあるその顔にティアは絶句する。(こいつはっ・・・海で私を襲ったやつらの・・・リー・・・ダー・・・!)「お前もご苦労だったな」その男はルビーに言う。「そんな・・・ルビーさん・・・どうして・・・?」「フフン。俺はルビーじゃないんですねェ・・・」言うや否や、ルビーはスライムのようになる。(メタ・・・モン・・・)まさか、そんな手に引っかかるとは。「部隊の準備は整っているな?」「はい、ゴルバ様。平原、山岳、湖。三ヶ所から村に進撃する準備が整いました」下っ端らしい者に男が話しかける。どうもこいつはゴルバというらしい。「いくら連中が強くとも、三ヶ所から攻めればひとたまりもあるまい・・・」ゴルバが呟く。(は・・・早く兄さんやルビーさん達に知らせないと・・・)しかし強い痺れで指一本動かせない。(あっ・・・)それどころか眼も霞んできた。「さて・・・最後にお前を捕獲しておくか・・・」薄れ行く意識の中でティアが最後に見た光景は、黒いボールを手に歩いてくるゴルバの姿だった―――――

オリジナル技の解説
電磁網―軽い電磁波と磁力で作り出す網。ポケスペでレアコイルが使ってたアレとかバーティミアスにあった「留置網」なんか想像していただくとわかりやすいかと。(にしてもわかりにくい例え・・・)

(*1)―なんで落ちる心配したかって?よくわからん人は今すぐルビ、サファ、エメどれかのポケモン図鑑で「大きさ」の欄を見ることをお勧めする。つーか明らかに私の設定ミスです・・・乗れるほうが不思議・・・。

作者あとがき
次からようやく戦闘シーンが入ります。ああぁ遂にポケモンっぽくなる・・・(笑)なんとなく今回からバーティミアス意識して脚注らしきもの((*~)の所)付けてみました。なんかこういうの楽しい・・・・・・。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: