サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

スポーツ、映画、音楽、文学、いろいろな分野の才能、出来事を見るにつけ感じたことを、サリエリのような観察者の気分で、気ままにしゃべってます。関心おありの方はコメントをご自由にどうぞ。
 ただしエロネタ、他人の誹謗中傷は×ですので、あしからず。街中の常識でご判断ください。よろしく。連絡はqjwhr458@gmail.comまで。
2022.11.17
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テーマ: BAND-MAID
カテゴリ: クラシック
この「REAL EXISTENCE」、直訳すれば「真の存在=実在、厳存」などということになるのでしょうか?英語でもたぶんめったに使わない用語だと思うのですが、世界大戦直後には「existentialism (実存主義)」という、気難しい哲学が流行りましたね。爾来、ハードロッカーのなかには、体制批判、反権力の象徴として、音楽のタイトルや歌詞で、やたら難しい用語を振り回すグループがいましたが、もちろんBAND-MAIDのこの曲には、そうした重苦しさは微塵もありません。むしろ最もシンプルなロックナンバーとして、歌とインストを楽しんでね、という出来映えで、ロックファンにはごく馴染みやすい音楽なのでしょう。
 しかし聴きようによっては、かつて存在した難儀なハードロックに対する、強い反射体を示しているような気もする。ちなみにこの曲、作詞作曲とも外部委嘱の作品で、活動初期はそうした音楽が主だったようです。なるほど。
 ところでかつてのハードロッカーたちが、なぜ反体制、反権力の身振りで哲学用語をはじめとして、難しいタイトルや歌詞を採用したかという問題は、ロック音楽そのものの本質とも絡んでくると思うので、あらためて(出来たら)話したいと思っています。

 言い忘れましたが、ミクさんが京都に魅かれた点が、もう一つあるかなと、私は思うのです。それはこの前のような「京都人のエートス(立ち居振る舞い、ものの考え方)」といった抽象的な話ではなくて、はるかに具体的な、例えば西陣あたりで行われている、職人たちの分業システムのような形態ではなかったか、とまたまた想像してしまう。
 百年後あるいは一千年後に残すような一つの着物、あるいは工芸品とかを生み出す工程に、どれぐらいの職人が関わっているか。各職人は名は残さないけど、高いプライドと互いの技術をリスペクトし、信頼しあう関係で結ばれているじゃないですか。肝心なことは、ここには「リーダーは存在しない」ということです(言い出しっぺは、いるかもしれないけど)。こういうスタンスって、何かと「我が、我が」と個の名前と業績を追求しがちな、今どきの風潮に対して、敵対的ではないけれど、ほとんど冷笑的とさえ思えるスタンスで、私たちを見返しているように見える。

 この職人的スタンスは、ある意味BAND-MAIDの今あるスタイルに似ていません?志のある技能者が集まって、それぞれ分担された技量を磨きながら、一つの作品を生み出していくという点において。これは例えば、お祭りの神輿(みこし)に似ているような気もするのです。自分たちは神輿を「担ぐ側」なのか「担がれる側」なのか、企業の社長さんや政治家あるいはアーティストの中でも、自分はアプリオリ(先験的)に「担がれる側」だと勘違いしている人って結構多いんじゃないか(自分はもともと才能があったから、とか)?しかし担ぐ対象は「神輿」に祀られている神様であって、ここから先も人間ではない(神様が怒ってしまいますよ)。
 で、そこにいる神様は何なのかと言えば、担ぎ手の集団意志にそって、それが企業体であっても選挙民であっても音楽であっても、イワシの頭であっても何でもいいのです。それぞれの集団やグループが、その中で共有できるある「大いなるもの」を措定したとき、それは「神様」として祀り上げられ、全員がその担ぎ手になるのです。ここで「担ぎ手」に名前は必要ない。みんなが措定したある「大いなるもの」が、充分に奉祝されるかぎりは。

 ここの話で最初のほうに取りあげた「Don't you tell ME」なのですが、例の中間部のところ、ギターとベースの対話が強く印象に残ります。しかしよく聴いていると、この間、背景放射のように漂っているシンセサイザーの持続音と、時を刻むかのようなドラムの打撃音が、きわめてスリリングな音の空間を創り出しているでしょう。これらはその前のMVにはなかったものであり、ライヴを重ねるごとに、メンバー内で出てきたアイディアだと思うのです。これがあることによって、ここのギターとベースソロが突出せずに、曲全体にうまく溶け込んでいる。聴き終わったあとのゴージャスな印象というのは(かなり満腹感もともないますが)、こういう細部に対するアイディアとか、仕上げへの「こだわり」から生み出されてくるのだと思う。
 これって、やはり一種の職人的な「こだわり」だと思うのです。で、そうした空気感をバンド仲間に作り出していったのは、やはりミクさんとみて間違いないでしょう。彼女は自らリードヴォーカルを捨てることによって、より「大いなるもの」を祀り上げていく、巫女のようなポジションを見出したと言っていいのではないか?それかあらぬか、「thrill」のころセカンドヴォーカル的な位置にいたミクさんは、次第にバックコーラスに退いて、むしろそこからバンド全体の「サウンドを眺める」ことに面白味を感じていたようですね。


 とはいえ、進化を求めてやまないミクさんは、昨年ソロプロジェクトcluppo(くるっぽ、鳩語で「こんにちわ」という意味らしい) を始めたり、最近の作品ではバックコーラスとリズムギターというポジションは変わらないものの、音楽的には以前と比べて、より前にせり出してきた感じがします。それのよく出た曲を聴いてみましょう。「 Manners, BLACK HOLE





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Last updated  2022.11.17 16:52:04
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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