tomo_hの映画ログ

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2014.11.01
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カテゴリ: 映画ログ
元のタイトルは「ローレ」、主人公の14歳の少女の名前だ。ローレを筆頭に妹リーゼル、双子の弟ギュンターとヨルゲン、赤ちゃんのペーターはドイツ敗戦まではナチ将校の家庭の子として威張って暮らしていたのだろう。6歳くらいの弟ギュンターの平気で他所の食べ物を盗んだりするあたりに、傲慢に暮らした面影が見える。しかし敗戦とともに立場が逆転する。お父さんは家族を山の中のあばら家の別荘風の家に疎開させて、どこかに消えた。お母さんもナチ党員として、おおやけに行動していたため、近所の人からは食べ物さえ売ってもらえないどん底の立場に落ちた。そしてお母さんは居ればどっちにしても逮捕されるからといういいわけで、一人で子供を残し去って行った。小さな赤ん坊にいたるまで、ローレの手にゆだねられたのだ。ハンブルグのお祖母さんの家に行きなさいと言われたが、1945年6月、敗戦直後のドイツでは簡単に旅行などできる状態ではなかった。

子供を残して消えた両親が不可解だ。如何に逮捕されるからと言って、よくも去って行けたものだ、と思ったが、そうしなければならない理由があるのだろう。お金と少しばかりの宝飾品を手に子供5人は家を出て南の地方のシュバルツバルトから北へ向かった。この旅の始終が描かれている。交通機関は戦争で寸断されていたのだろう、ほとんどの行程が徒歩だ。荷物を満載した村人の馬車が来ても乗せてもらえない。あたりの村は焼かれ壊され、なぜ撃たれたのか死体があちこちにあったが、目指す食べ物はない。彼らは飢えた。赤ん坊はお腹を空かせて泣く。彼らの後を一人の若い男が付けてきたが、彼はトーマスといってユダヤ人の身分証を持っていた。実はローレはユダヤ人を嫌っていたが、、。

或る農家の主婦が助けてくれたが、その人はまだこうなっても熱心なナチ崇拝者だった。この頃、南西ドイツはアメリカ占領区、北西はイギリス占領区、西はフランス占領区、東部はソ連占領区だった。通行証となる身分証がなければ行き来できない。子供らのいるところではアメリカが占領していてナチ党員だったものには戦犯逮捕されかねない恐ろしいところであった。だが、ここではユダヤ人身分証は有利だった。ユダヤ人の青年と行動していたから子供らは北へ移動できた。ただしこれから行こうとするハンブルグはソ連占領区だ。

敗戦を受け入れるについてドイツ人は個人的にばらつきがある。村の広場にはユダヤ人収容所でいかに悲惨なことがあったか、写真で宣伝している。素直に驚く人もいるが、これはプロパガンダだ、うその写真だ、ドイツはまだ完全に負けていないという人がかなりいた。ヒトラー総統が死んだというニュースが来ていても、まだ最終勝利があると言い張る。あきらめが悪い?いや、日本の場合と比較してみると、こうなるのが分かる。日本では8月15日、有名な玉音放送があり、全国民は天皇の声から、敗戦したことをはっきり告げられた。それをすんなり受け入れたというか、受け入れるしかなかったのだ。ドイツにはこれがなかった。まだユダヤ人を憎む人や、今度はナチスに報復しようとする人が混在していて、負けてすぐの国の4分割が精神的にさらに混乱を助長した。こんなドイツの様子がくわしく描かれた映画は珍しい。

(おまけ)苦しい旅(本当に苦しい旅)が終わり、ハンブルグの祖母の家で風呂に入り、食事をする。ここで、最後の大切なポイントがある。つぶさに国内を見て現状を知って、味方してくれたユダヤ人や冷たい態度のドイツ人に接してきたローレの心には、ドイツ人の優越感の塊のような祖母の姿は嫌悪を覚えるものだった。生まれたギャップは深い。

さよならアドルフ






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Last updated  2014.11.01 20:11:17
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背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
アイスクリーム@ Re:エリザベート愛と哀しみの皇妃(オーストリア、ドイツテレビドラマ)(08/09) 綺麗事ではなくメロドラマ仕立て。 勝ち…
zebra@ ボクからの(おまけ) もう少しコメントします。 tomoさんの記事…

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