UNFINISHED

第2話 鏡



眼


 喘息発作で入院すると、即、気管支拡張剤のネオフェリンを点滴する。第1話でもあったように、副作用のせいか眠れなくなってしまう。心臓はドキドキするし頭も痛い。この症状は私だけなのだろうか。

 また、点滴と併せて水分をたくさん取らされる。そのせいで、やたらトイレが近くなってしまう。ひどいときは一晩で7・8回トイレに立つこともある。看護師さんは尿器を用意してくれるが、どうしてもベッドの上では出ないのだ。

 夜中の内科病棟で聞こえる音は・・・。いびきやうめき声、たまには叫び声に似た声も聞こえてくるときがある。そう、丁度「バイオハザード」のような。
 それ以外にも、心電図や輸液ポンプの音、看護師が器具を洗浄している音、ナースコールの音。そして誰かが歩いている足音。

 そんな真夜中の病棟を抜けてトイレに行く。いろんな音が聞こえてくるのに、廊下には誰もいない。恥ずかしながら、どうしても怖いと感じながら用をたす。

 (この病棟で何人死んでるのだろう。霊とか出てくるのかなぁ)
など、変なことを考えてしまう。
 何も起こらないまま、用をたし、手を洗う。手洗い器の上部に鏡が張ってある。
 (そうだ、霊は鏡に映るから見ないようにしなきゃ)
そんな馬鹿なことを考えながら、手を洗った。そして、鏡を見た。
 そこには、自分の背後に、私を睨んでいる老人の姿が映っていた。

 「え”っ!」私は声を出して驚いてしまった。正直腰を抜かす程の恐怖で、思わず目を手で覆ってしまった。
 (嘘だ!見間違いだ!恐怖感が幻想を見させているんだ!)
と心で叫びながら、恐る恐る覆った手を下げた。
 まだいる。確かにいる。見える。トイレットペーパーを引っ張っている姿まで見える。
 「え”っ?」振り返ってよく見てみた。向かいの病室の山田さん(73歳)ではないか。

 頼む!大をするときは、扉閉めてくれ!
 (マジ怖かった。)

2006-10-25 20:13:18










→第3話


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