1
「マダガスカルのレムリアン・シード」として売られていた水晶です。レムリア大陸はマダガスカルからインド洋にかけて存在下という伝説に従うならば、まさしくレムリアのあった場所からの水晶ということになります。長さは4センチほど。表面こそつやつやですが、ほんのりピンクオレンジで、柱面には横筋があります。おまけに、中にはルチル(あるいは角閃石)がファントム状に入っていて、写真ではほとんど写らないのですが、トップ付近に白いファントムが入っています。レムリアン云々を抜きにしても、十分魅力的な石なのですが、あえてレムリアンねたでご紹介したのにはわけがあります。先日の「レムリアン・リッジの謎」で、かなり自分勝手な推測を書いてみたのですが、そこでレムリアンの特徴として下記のようなコメントをいただいたので、自分なりに理解しがてら、このマダガスカルの水晶はその特徴に合致するのかを確認してみたいと思います。1.おもにz面側の柱面にあらわれる。2.r面側の柱面はなめらかなものが多い。3.z面の大きさがr面と較べて、極端に小さいものが多い。4.接合線をもつものは少数。5.他の産地(たとえばアーカンソー産など)にもレムリアンリッジと同様の晶癖を持つ水晶が産出する。r面とかz面とか聞き慣れない言葉ですが、調べてみたところ、水晶の錐面を表す記号でした。水晶には通常6つの錐面がありますが、それらがすべて同じような形、同じような大きさをしていることは意外にまれです。そのような水晶には特別にジェネレーター・クリスタルとか、マーリン・クリスタルなどという名前が付けられているくらいです。たいていの水晶の錐面には大小があり、よく見ると下の写真のように大きい面と小さい面が交互に連なっていることが多いです。この大きい面の方を「r面」、小さい方の面をz面というのです。写真は大小の面がバランスよく出ているものを選びました。実際はひとつの面が目立って大きかったりしますが、その大きな面を「r面」として注意深く見ると、面の大小が見えてくると思います。では、レムリアンシードのレムリアン・リッジ(横筋)はどの石でもz面につづく柱面に出ているのでしょうか。別のレムリアン・シードを撮ってみました。なるほど、z面につづく柱面に横筋が入っています。特徴2の「r面側の柱面はなめらかなものが多い」というのもそのとおりです。同じく特徴3の「z面の大きさがr面と較べて、極端に小さいものが多い」というのも当てはまっているようです。つづいて特徴4「接合線をもつものは少数」接合線というのはどのようなものなのでしょう。これも調べてみました。カテドラルと呼ばれる水晶やガネーシュヒマール産水晶のずんぐりタイプなどによく見られる縦筋のことでした。(写真のオレンジの線の部分)これは、ひとつの水晶のように見えていますが、実はいくつもの水晶が同じ方向に並んで成長して(これを平行連晶といいます)、くっつきあってひとつの結晶の形を作り上げているもので、接合線はその境目ということになるようです。たしかにレムリアンシードはっきりしたかたちが多く、このような接合線は見たことがありません。特徴5の「他の産地(たとえばアーカンソー産など)にもレムリアンリッジと同様の晶癖を持つ水晶が産出する。」については、残念ながらちょうど良い水晶がないので、確かめられません。では、改めて最初の写真の水晶を見てみると……たちかにすっっきりした形で、ほんのりした色がついていますが、画像の右側でもわかるように大きな錐面、すなわち「r面」につづく柱面に横筋がはいっています。コメントでは、「一般的な水晶の錐面の晶癖として、r面の方がなめらかで、z面の方が凹凸が大きいということが言われています」と教えていただきました。手持ちの水晶で見てみたところ、ブラジル産水晶では確かにそのとおりでした。しかし、チベット水晶では、r面に続く柱面に横筋が入っているようです。こちらのヒマラヤ水晶は、すべての面に横筋が入っています。こちらのヒマラヤ水晶も同様で、しかも 同じように断面が三角形日会結晶でありながら、柱面の大きさは逆。(上のレムリアンシードはz面に続く柱面が大きくなっているが、こちらのヒマラヤ水晶ではr面につづく柱面の方が広い)いままで「横筋入り」「断面が三角」などとひとくくりに見てきましたが、よく似ているようでいながら実は別のタイプの結晶だったのです。……ということで、マダガスカルの「レムリアン」は、ブラジルのものとは結晶のタイプが別だと言うことがわかったのでした。(少なくとも写真の石については)めでたしめでたし(?)最後に。CEDARさん、情報ありがとうございました!
2005/08/04
閲覧総数 905
2
国産の黒曜石です。産地は長野県の和田峠。現地に行って採取してきたという人からいただいたので、紛れもなく国産黒曜石!ありがたや。ころころ一袋見せていただいた中から真っ先に選んだのは写真のひとかけら。大きさは2.5センチほど。一番小さくて、それゆえに光に透けて内部の白っぽい筋模様を見せてくれた石でした。銀色をさっと刷毛ではいたような。そんな美しい模様です。黒曜石、オブシディアンというと思い浮かべるのが真っ黒な石。しかし、実際にはレインボー・オブシディアンやゴールデンシーン・オブシディアン、スノーフレーク・オブシディアン、マホガニー・オブシディアン、スパイダーウェブ・オブシディアン、そのほか名前が付けられていないさまざまな表情を持つ石があり、真っ黒というだけでは片づけられない石なのです。この和田峠の黒曜石も、大きいものはくすんだ黒に見えましたが、小さなこのかけらは、ただの黒ではないのだということを教えてくれました。最近では、火山瑠璃と呼ばれる色鮮やかな石が、「黒曜石」というような説明で売られていますが、何となく青っぽい……ならばともかく、蛍光グリーンとでも言いたいような鮮やかな緑などを見ると、どうにもこうにも天然物には思えません。こそこそと検索していたら中国サイト(?)で電子器機を作るときの副産物である……というような説明を見つけました。(※ネット翻訳で拾い読みしているので、正確さはちょっと心配です)黒曜石もガラスですが、やはりどこか大地を思わせるアースカラーのニュアンスがあってこそ。それでも、深い青のものならばあってもいいかも……と思いましたが、蛍光色のものや、あまりにきれいな色のものは勘弁して欲しいです。綺麗なものが嫌いなのではなくて、無理にオブシディアンと呼んだり、天然だと言うことにしないで欲しいものです。もしかしたら、中には天然のものも混じっていたりするのかもしれませんが、天然ではないモノを天然といってしまえば、それはごまかしであり「偽物」ということになります。そういうものが混じってしまうことで、もしかしたらあるかもしれない「本物」までが、まとめて「偽物」扱いされてしまいかねません。ブラジルのミナスジェライスの地中から見つかる人工ガラスが「Vidro na Terraとか「Land Glass」「Ground Glass」と呼ばれていると聞きました。人工、天然ではなく単に「地中から見つかったガラス」という意味合いでそう呼んでいるのだそうです。綺麗なものはきれいなのですから、潔く認めましょうよ。ちょっと話がずれたので、和田峠の黒曜石をもう一枚。こちらも白っぽいような、銀色のような色むらがあるようですが、大きいだけにはっきりとは見えません。微妙に透ける色合いが、ちょっといい感じ。
2007/11/18
閲覧総数 508
3
石好きさんで石を集めている人につきものなのが「偽物疑惑」。別館サイトの「Glossary」にもコーナーを設けていますが、一口に偽物と言ってもいろいろあります。最近ちょっと残念に思ったこともあるので、改めて書いてみたいと思います。なにぶん水晶中心の石好きなので、水晶の話に終始してしまうのはご勘弁を。まず、「偽物」といった場合、どういうものが考えられるでしょう。なんといってもそのものずばりは、●水晶でないものを水晶と称しているものでしょう。水晶でないもので水晶といわれがちなものはいくつかあります。簡単な見分け方も一緒に書いてみます。ひとつはガラス。同じ条件で水晶とガラスをさわってみると、水晶の方が冷たく感じます。重さも若干水晶の方が重いようです。丸玉に加工されている場合、細い線を丸玉越しに見ると、水晶では二重に見える所がありますが、(見えない所もある)ガラス玉ではどこから見ても二重に見えることはありません。また、気泡が入っていればガラスである可能性が大です。偏光板を使う判別法もありますが、偏光板を用意しなければならないので、一般的ではないかも……。注意したいのはビーズ。ビーズなどでは特に「○○クォーツ」という名前のガラスビーズが多くあります。例:ブルー・クォーツ、チェリー・クォーツ、オパライトまた、勘違いもあります。ガラスに鉛を混ぜることで、輝きと反射を増した「クリスタルガラス」というものがあります。これは時折単に「クリスタル」と呼ばれていたり、あるいはクリスタルという名称がくっついているために水晶と勘違いする場合もあるかもしれません。もうひとつはアクリルこれは要するに樹脂ですから、直接手にしてみれば、感触や冷たさ、固さなどはかなりはっきりわかるはず。さらに、他の鉱物としてはカルサイト。水晶の丸玉だと言われて買ったんだけど……と見せてもらったら、カルサイトだった、ということがありました。透明感のある鉱物ですが、クラックの入り方に特徴があるので、それがわかっていればかなり簡単に見分けがつきます。次に●原料は水晶と同じだけれど……というもの。人工水晶とひとくくりにされることもありますが、詳しくは溶融水晶と合成水晶です。溶融水晶は、天然の水晶を砕いて不純物を取り除き、溶かして固めたもの。結晶していないので、「天然水晶を原料にしたガラス」です。練り水晶と呼ばれていることもあります見分け方は上記のガラスと同様です。天然水晶が原料なので「天然水晶と同じ」などと説明していることがありますが、個人的には、「結晶していない以上、ガラスである」と考えます。もちろん「天然石」とすることにも抵抗があります。溶融水晶は「石英ガラス」とも呼ばれ、耐食性・耐熱性に優れ、非常に透明度が高いことから光ファイバーの原料にされていました。(天然水晶を溶かしたものは、不純物が混ざるため、今は別の方法で作られています)では、天然水晶が原料なのだから、光ファイバーを「水晶の繊維」と言うでしょうか?だいぶイメージが違いますね。一方合成水晶はちょっと違います。オートクレーブと呼ばれる釜の中で400度、1000気圧という高温・高圧の環境を作り出し、2~4ヶ月間の時間をかけて、中に吊した小さな結晶を種に、徐々に大きく結晶させていったものです。ですから、合成水晶は人工的な環境下ではあるけれど、天然のものと同じように結晶した、れっきとした水晶(石英)です。「天然石」とは言えませんが、水晶であることは間違いがありません。ただし、工業的につくられるものだけに、天然の水晶のようなクラスターではなく、棒状・板状の結晶となります。従来は、あまり大きな結晶は作られませんでしたが、このごろは大きな結晶も作られるようになり、宝飾用にローズ・クォーツやアメシスト、アメトリン、天然にはない透明なグリーン、ブルーの水晶も作られます。これらは「シベリアン・グリーン」「シベリアン・ブルー」と呼ばれていることもあります。……とこういうことを書くと、自分の持っている水晶(磨きやビーズ)は本物か偽物かと心配になる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、注意はしなければなりませんが、むやみに疑うのも考えものです。まず、第一に水晶(石英)は、質を別にすれば地球上に大量に存在するものです。ある意味、合成水晶の方が平均的な単価は高いのです。つまり、単価が安いタンブルやビーズを合成水晶で作っていては損になります。クラックが多かったり、透明度が低いものも合成水晶ではあり得ないでしょう。人工的に結晶させることで純度を保つことが合成して作ることの意義です。わざわざ質の低いものを作ることはあり得ません。従って、工業原料以外では合成した水晶でも元が取れる、宝飾品などが主な用途になるのではないでしょうか。一般にクラックが入っていれば、あるいは内包物が入っていれば天然の水晶であると言われますが、クラックは、要するにひびですから、入れようと思えば人工的に入れることができます。(天然のクラックとは、ちょっと感じが違いますが)内包物については、ガラスにも内包物はあると申し上げましょう。ビーズの「チェリー・クォーツ」などが良い例です。たとえば、写真のビーズは、自然な内包物に見えますがガラスです。さわった感じが水晶ではない手ざわりで、若干軽いかんじだったので、オブシディアンの一種かと思っていたら、「ガラス」の表示でした。また、こちらのガラス玉には、かなり天然っぽい内包物がみられます。(こちらは、天然ガラスである可能性もあります)ですから、天然と表示されているから、クラックがあるから、内包物があるから……と、それだけで判断するのではなく、どうしても天然の石(水晶)が欲しいのであれば、天然と表示されていても溶融水晶を天然としている店もあるのだということや、天然のクラック、天然の内包物がどのようなものかを一応は知っておいた方が良いと思います。そして、疑わしい場合は、お店の人に聞いてみましょう。(※ビーズの場合は、不明なことが多いと思います)それも「天然ですか」と聞くのではなく、「溶融水晶というものがあると聞いたが、そうではないのか」「このような内包物は見たことがないが、一体どういう鉱物か」などと聞くことができれば、お店の人も、しっかり答えざるを得ないでしょう。真剣に石を選びたければ、選ぶ側も真剣に知識を備えておくこと。石を選ぶ感性とは別に、これも石を見る目を養うことだと思います。続きます。バナークリックで、水晶用語集へGO!「水晶と石英の違いは?」「熱・放射線・偽物」「この石って何?」「フォルス・ネーム」などのコーナーがあります。
2006/05/27
閲覧総数 3739
4
見本として、ついに買ってしまいました。中国産の人工緑水晶。ご存じの方も多いと思いますが、「天然の水晶の上に、緑色に着色した層を人工的に結晶させた水晶」です。土台となっている水晶は、天然のもの。天然の水晶を加工したもの、ということでこれを「天然石」と呼ぶことは、正しくないわけではありません。原石未加工派石好きの立場から言うと、「天然石」とは自然の中で採掘され、汚れを落とす程度の処理はされたとしても、それ以上の改変はされていないもの……と言いたい気分ですが、実際には加熱や放射線処理をされている石も多いです。たとえば、アメシストを加熱して作られたシトリンが「天然石」として売られていたり、瑪瑙がショッキングピンクや紫のハデハデカラーに染められていたとしても、特に「これは天然石ではない!」と文句を言う人はいないでしょう。だから、この緑色の水晶が「天然石」として売られていても不思議ではないのですが。問題はこれが「天然緑水晶」とされることです。この名称はかなり微妙です。「天然石ではない」とはいえない。しかし「天然緑」ではないのです。もう一度はっきり言います。この緑水晶の緑の部分は、人工的に作られたもの。緑色であることを「天然」というのは間違いです。※中には、緑色の部分を結晶させる際に、水晶を固定した後が残っているものまであります。天然の緑の水晶は、緑色の鉱物(多くは緑泥石)が内包されたことによる発色です。そのため、透明感のある緑色というのは、まずあり得ません。それに比べてこの人工緑水晶の色は透明感があり、ややわざとらしくはありますが、写真のように光にすかせば、美しいものです。できれば、これは観賞用の加工水晶だと、ちゃんと表示してくれれば何の問題もないのですが。これはもう、インド翡翠(アベンチュリン)やニュージェイド(サーペンティンの一種のボーナイト)が「翡翠」や「ジェイド」と名前が付いていても翡翠とは全く別の石であること、翡翠といってもジェダイトとネフライトがあり、宝石扱いされるのは、質の高いジェダイトであるという、ある意味有名な話と同じように、買う方が覚えておかなければならない話なのかもしれません。もちろん、石に興味を持ったばかりというタイミングは誰にでもあることで、これは常識、知っておくべきと言い切ることはできませんが、なるべく加工されてない石がほしい、そういう石が好きだ、というのであれば、積極的に調べて備えておくという労を惜しんではいけないと思います。私は、できれば天然未加工な石が欲しいので、加工もの情報は、マメにチェックしていますし、たとえお店の情報であっても疑問に思うものは、覚えておいて別のところで確認するようにしています。たとえば、時々「放射線処理で作られたシトリン」という記述を見かけます。一方でアメシストやスモーキーを加熱処理するとシトリンになり、放射線を照射すると元の色に戻るといわれています。(完全には元に戻らないかもしれませんが)なのに、放射線によってシトリンになるということがあるのだろうか。「放射線でシトリン」というのはネットショップで見かける説明ですが、私はこれに納得できていないので、機械があればいろいろな人に聞いてみようと思っているわけです。前置きが長くなりましたが、中国産人工緑水晶の特徴は以下の通り。◇透明感のある緑色◇先端部分が緑色◇全体が毛羽だったように細かい結晶に覆われていることが多い (覆われていないものも時々あります)◇クラスターが多い◇クラスターの底面(裏側)も細かな結晶に覆われている時に、アクチノライトの内包によって緑になっています、などともっともらしい説明が付けられているものも見たことがありますが、アクチノライトは緑の針状の結晶が確認できるのに、この人工緑水晶の緑の部分には、針状結晶が全く確認できないので、すぐに区別が付きます。緑色のほかに紫色や黄色のものもあります。黄色や紫色は毛羽だったような結晶に覆われていない場合も多いです。しかし、クラスターの裏側までも細かな結晶に覆われ、結晶の先端がそろって色づいている独特の雰囲気は共通しています。「きれいだから加工されたものでもいいや!」というのあれば、それはそれでいいですが、「人工的に作られたものを「天然の色」というふれこみで高く買うのはイヤだ!……という方は、ぜひとも覚えておいてくださいね。
2007/04/15
閲覧総数 521