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本書『桜疎水』は大石直紀の短編集で6編が収められている。
『おばあちゃんといっしょ』――第69回日本推理作家協会賞 (
短編部門 )
の受賞作品。詐欺師からカネをだまし取る詐欺師の物語である。
私には両親はいない。詐欺師のおばあちゃんに育てられた。ある日、警察に捕まり、私は施設に入れられた。高校を卒業し、就職が決まり、施設を出た。私は詐欺師になるのだ。
そこでは、新興宗教を使った詐欺がおこなわれていた。ところが…。
今、さやかは仕事で京都にいる。この日、ジョギングしていると、真如堂の前で靖宏の母を見た。本当は、亡くなったはずなのに…。
『二十年目の桜疎水』――正春は京都の大学の3年生だった。一つ年下の芸大生・雅子と交際するようになった。正春が4年の時、二人は結婚の約束をした。
しかし、不幸にも雅子は交通事故に遭った。体にひどい火傷を負い、ケロイドが残った。正春は、結婚の約束は守るつもりだった。が…。
『おみくじ占いにご用心』――上宮は適当にヘルパーの後をつけて、独居老人の家を特定する。その後、信吾が宅配便を装ってその家の状況を調べる。そして、上宮が介護施設の職員を偽って家に上がり込む。 決行の日。上宮がおみくじを引くと「凶」が出た。こんなことは初めてだった。
『仏像は二度笑う』――片山正隆は子どもの時から手先が器用で、仏像を作る仏師になった。20歳の頃、ギャンブルにはまった。それで、仏師を首になった。京都で光文堂の店主・滝口に雇われ、贋作を作るようになった。滝口の娘に、贋作は作らないと約束させられ、二人は結婚した。しかし…。
『おじいちゃんを探せ』――大阪の大学に通う沙和は、冬休に長野県の実家に帰省した。正月、母がおばあちゃんのところに行ったら、あの人から年賀状が来ていた、と父と話していた。あの人とは、外に女を作って離婚されたおじいちゃんだ。
春休みに入ってすぐ、沙和はおじいちゃんが住む京都のマンションに行った。すでに、引っ越していた。一ヶ月後、上賀茂神社の手づくり市に行った。そこで、おじいちゃんがキッシュを売っているのだ。しかし、いたのは母だった。母に連れられ、おじいちゃんに会った。そこで、わが家の秘密が明らかになった。と、思ったら…。
本書に収録されている作品は、家族が一つのテーマになっている。祖父母と孫、恋人同士とその家族など、人間模様が展開されるミステリーになっている。
また、詐欺がテーマの作品が三本ある。新興宗教を利用した詐欺、介護制度を使った詐欺、美術品の贋作を使った詐欺。それほど、詐欺が増えているのか。 『二十年目の桜疎水』は、これだけ恋愛小説になっている。これは読ませる。
ホーム・ぺージ『これがミステリーの名作だ』も御覧ください。
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