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『何者』 江戸川乱歩 『D坂の殺人事件 』角川文庫に収録 、初出:1929 ( 昭和4 ) 年『時事新報』に掲載。
時代背景は昭和初期。大学を卒業したばかりの結城弘一、甲田伸太郎、そして松村の3人は夏、鎌倉にある結城の邸宅に逗留した。毎日、結城の従妹の志摩子と4人で遊んだ。
ある夜、結城の父の誕生パーティが自宅で開かれた。パーティが終わってしばらくして、書斎から銃声がした。中では弘一が足を撃たれ倒れていた。窓ガラスが割れ、窓の下には犯人のものと思われる足跡が塀まで続いていた。書斎にあった金の置時計、金の万年ペン、金の煙草セットなど金製品が無くなっていた。
直ちに警察がやって来て、捜査が始まった。しかし、犯人の遺留物は足跡以外に何もなかった。指紋は拭き取られていた。
本書の特徴は、この事件の解決に挑戦する人物が多い。松村、赤井という結城の父の碁仲間、結城弘一、警部の波多野である。明智小五郎は、最後の最後に登場する。基本的には、銃でけがを負った弘一が病室で推理を展開する。
松村は弘一の足になり、彼の指示で動いた。また、彼が行くところどころで赤井に出くわした。
本書でいちばんすごいのは、弘一が謎解きをして警察も完全に納得し、容疑者を逮捕する。しかし、それ以上の推理をして事件の本質を暴き出したのが赤井だった。
本書は、乱歩の作品の中では、そんなに有名ではないが、現代でもこれだけのものは、なかなか書けないのではないと思う。
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