本を読めば『道は開ける』

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位相を使った素数が無限個あることの証明



素数とは1と自分以外に約数を持たない数のことである。

素数には、素数の分布に関する「素数定理」や「双子素数は無限にあるか」、などの理論的な話から、「現在知られているよりも大きな素数を求める」という最新の計算結果の話など、素数にまつわる話は、理論、計算、応用という面からも興味深いものが、数多くある。
(現代暗号の一つであるRSA暗号では、「もの凄く大きな数を素数の積に分ける」という「素因数分解」がたいへん重要である)

私は本屋で『素数百科』を立ち読みしていて、ふと目に止まったのが「素数が無限にあることの証明」が書かれた部分でであった。

「素数が無限に存在する」ことは、はるか2500年昔にユークリッドが既に証明したことなので、その結果自体は全く目新しいものではない。

この本では、「素数が無限にある」ことの証明が何パターンか紹介されているが、その中で「位相空間の理論を使った証明」が、「最も奇妙なもの」として紹介されていた。

まずは位相空間の説明です。

ある集合 X が位相空間であるとは、Xの部分集合の集合(集合族)で、その中の要素の合併、有限個の共通部分もとっても、その集合族に含まれ、X、空集合もこの集合族に含まれるものを言う。

そして、集合族の要素を「開集合」、開集合の補集合を「閉集合」という。

この時、「集合 X に位相が入った」といい、集合 X は位相空間となる。

さて、位相空間を使った素数が、無限個あることの証明を簡単に書こう。

まず整数全体が作る集合に、等差数列全体とその和集合でつくる集合からなる集合族を考えると、この集合族の要素が開集合となって整数全体の集合に位相が入る。

A (P) という集合を「素数Pの倍数が作る集合」とすると、A (P)は閉集合であることがわかる。

例えば

A (3)={・・・、-3、0、3、6、9、・・・}で、その補集合は

{・・・、-2、-1、1、2、4、5、7、・・・}

となるから、

等差数列{・・・、-2、1、4、7、・・・}と
等差数列{・・・、-1、2、5、8、・・・}

の和集合となっている。

「A (3) の補集合」は開集合だから、A (3)は閉集合であることがわかる。

もし、素数が有限個しかないと仮定すると、

{A(P)}は有限個しかないので


その和も閉集合である。よって、その補集合を取ると、当然開集合でなければならないが、

補集合は素数の倍数にならない数、つまり{-1,1}となるので、

これは等差数列でもその和集合にもなっていないので開集合ではない。

よって矛盾。

素数が有限個だと仮定したら矛盾したので、素数は無限個あることになる。

とまあ、こんな証明である。

巻末の資料リストを見ると、この証明は1950年代に論文として掲載されていたことがわかった。

1950年代といえば古いといえば古いが、2450年前(ここら辺年代適当)

に証明されたものでも、視点を変えて証明すれば論文になることを知った。

しかも、使われているのは位相空間の基本的な事柄のみである。

このような予備知識があまりいらないことからでも、何か新しい発見ができる可能性があるのではないかと、ふと思ったのである。

「具体的に何か」とは、まだ思いつかないが、位相空間の基本的な事柄を復習し直してみるのも、面白いかもなと思いはじめている。

2004年3月31日の日記より


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