百花繚乱

第三回

キーワード

「ピーマン」「雷雨」「六甲のおいしい水」

＞＞生徒その一がつくった文章

何故、俺は生きているんだろう…、ふと俺は思った。
俺の名は摂真陰牙。この小さな町で探偵をしている。
ここまでは普通の経歴だ。だが一つだけ普通の奴とは違うものがある。
「黒衣の騎兵」…、俺はその名のテロ組織に参加していた。
まだ若かった俺は遊び気分で奴等に加担した。
そして後悔した。
テロ活動後の現場の処理を任された際、俺は見てしまった、その状況を。
幾数人の死体。その中には老人や子供までいた。
その時俺は一人だけ死んでいない少女を見つけた。
血を流し、痛いとうめいている。
それを見ていた俺に仲間の一人が囁いた。
「殺せ」と。
俺は銃を両手に握り構えた。
手が震える。それは恐怖とかとは違う別のなにか。
少女は助けてとうめき、手を伸ばしてきた。
殺すのか？殺すのか？俺は？この娘を？なぜ？任務だから？
俺の頭の中を様々な言葉が飛び交う。
少女が俺の服の裾を弱弱しく引っぱる。
俺は…銃の引き金を引いた。
…仲間が倒れた。
俺は仲間を撃っていた。
仲間の一人が倒れたことで残りの二名が驚く。
だが、その驚く間に俺は銃で二人の頭を打ち貫いていた。
俺は銃をしまい、少女を抱き抱え、現場を出た。

現場は建物だった。
外は雷雨だった。
少女が雨に濡れないように、着ていたコートを着せ、近くの病院へと走る。
やがて病院に到着した。
俺の姿と少女をみた医師が駆け寄ってくる。
「彼女を…頼む…」俺は少女を渡して病院を出た。
外の自販機で六甲のおいしい水を買う。
「ずいぶん、余裕だな」後ろから声が聞こえた。
振り向くと緑色の服を着た男がいた。
俺はその男を知っていた。
センスゼロの服装…その男は組織内の手慣れで裏切り者の始末を行う奴だった。
「へっ…その服はなんだよ？ピーマンでもイメージしたのか？」俺は嘲笑した。
「ふぅ、笑う余裕まであるか…同志殺しが…！」男が俺を睨む。
「…語卓はいらねぇ。始末するか、されるか。今はそれだけだ。」俺は六甲のおいしい水が入ったペットボトルを地面に置く。
「死ねぇ！摂真ぁ！」男が両手にナイフを握り、突っ込んでくる。
「悪いが、ここまできた以上、死ねないんだよ！」銃を取り出し撃つ。
男には当たらない。俺は頬を切られる。
「フン…！」「くっ…」
俺は身を退く。
男のナイフが胸に突き刺さる。
「終わりだ、摂真」男が微笑う。
だが、俺は最初から死ぬ気はない。
「死ぬのは…お前だ…」俺は…男の腹部に銃口を当てる。
銃声が響く。
男が倒れる。俺は地面に倒れた。雨が体に当たる。
俺は…勝ったんだ…。
同志を殺したはずなのに…仲間を殺したはずなのに…。
俺の心は…勝利に満ちていた。
意識が遠のく…俺は…気を失った。

何故、俺は生きているのだろう？
その言葉が心に響く。
俺に生きる意味があるのか…？
「ありますよ」その声が何処からか聞こえ、俺は目を覚ました。
俺は病院のベットに寝ていた。目の前には助けた少女がいた。
「あなたは、私を助けてくれた。だから、私が望みます。あなたが生きる事を」
少女がほほ笑んだ。

俺はその時、ようやく生きる意味を見出した気がした。

END

＞＞生徒その二が作った文章

僕はピーマンだ。僕らピーマンは毎日のように農家のおじさんに世話されてる。
おじさんはいつも汗水たらして僕たちのことを大切に育ててくれた。
そんなおじさんを見ていると『絶対においしいピーマンになるからね』そう胸に誓った。

その日、ひどい嵐のような雷雨だった。雷が鳴り響き、猛雨が僕たちを襲った。僕らは仲間を、おじさんを想いながら必死に耐えた。
その雷雨は二日に渡った。近くの川が氾濫を起こして洪水になった。
あふれ出た水は僕らを攻撃した。
「おい、そろそろくたばったらどうだ？」
川の水は僕等に冷徹に告げた。
「お前らは俺の水で生きているのに、この俺に感謝の一つもしねぇ」
そう言って川の水は容赦なく僕らを流そうとする。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
僕らは必死に謝った。けれども川の水はそれを嘲笑うかのように僕らを流し続けた。
そんなとき僕らの前におじさんが現れた。
おじさんは必死に僕等を守ろうとしてくれた…のだと思う。
分らないのだけれど、僕はそう思った。そうして僕の意識は途絶えた。

目が覚めた時、あの雷雨は嘘だったのかと思えるほどの快晴だった。
「お前らが無事で何よりだ」
おじさんはそう言って『六甲のおいしい水』を飲むと、ボトルの中の水を僕等にかけてくれた。久々の本当においしい水だった。

END

＞＞生徒その三が作った文章

俺は農家をやっている。先綾純助、26歳。今は蝉が鳴いている季節である。妻もいたし子供もいた。しかし、離婚をしてしまった。それは何故かというと、ずばり借金である。
この物語は借金返しの物語である。

「枯れている」と俺は枯れたピーマンを手に取った。俺の畑のど真ん中で一言。
「借金返せねぇよ」と呟く。俺の住んでいるところは最近雷雨どころか、夕立すら降らなかった。自棄になってトラック一台分の六甲のおいしい水をまいたが結果は変わらなかった。

妻と離婚して借金取りに家を追い出され、今は隣町の公園のベンチに座っている。
夜の十時になったとき、あの女と出会った。

「あなた、誰？」
といきなり声をかけられたので、驚きながらも答えた。
「お前こそ誰だ」と言い返すと「こっちが訊いてんだよ、コラ！」と凄まれた。

END

＞＞生徒その四（コミックイラスト研究部部長氏）が書いた文章

「『ピーマン・ニンジン・挽肉…』ハンバーグが楽しみだ」
買い物かごを片手に売り場を彷徨う初老の男性。
名を井水という。
しかし持つ物は主夫そのものだった。
「しかして、夕立が来ると聞いていたが…」
その言葉が合図だったのかの様に、雷鳴轟く雨が降り出した。
「さすがの私『六甲野老いし井水』でさえ雷に負ける～」
レジで並ぶ初老の一言だった。

END

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