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ふるっぴ@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) もうすぐ2016年の夏です。みんな元気…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) furuさん ふるっぴ、お久しぶりです! よ…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) gate*M handmadeさん うお~!お久しぶり…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) 勝手に匿名コメントを残し、怪訝にさせて…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) やっぱり元気やったな!? 良かった。
2012.08.18
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カテゴリ: カテゴリ未分類
「ミーラチカ!おかえりなさい」

タラップから、音もなく駆け下りてくる、
子猫のような、イワン。

力強いのだけど、柔らかなハグの後、
私の手をとり、キャビンへ連れて行ってくれる。

「カーステアーズには、会ったの?」
「いいえ、今日は、真っ先に、あなたにただいまって、伝えたかったの」
「嬉しいな、愛しのオーナー。その、ボトルは何?」

私は、ウーとの4日間のキャンプを終えて、

ウーが、生まれた年のワインを見つけたので持ってきたの。
ただ、どこで手に入れたのか、もう記憶にない。
読めない文字が何か国語も書かれている。
ヨーロッパのどこかの国の、小さな食堂の自家製ワインだ。

イワンは、ラベルを読んで、ニコリと微笑んでいる。

そして、美味しくいただけるようにと、
ワインを冷やしに行った。

「なぜ、カーステアーズに会わないのさ?」
戻ってくるなり、イワンは挑発的に言う。

「あの人、キャンプに行く前、おかしかったのよ。
 私が、なにか仕出かすのではないかって、心配ばかりしていたわ」

「イワン、あなたは、どんな風に過ごしていたの?」
「ぼくはね、ミコノス島で、彼とのんびりビーチ三昧だったよ」
「どの彼よ?」
「やだなあ、ミーラチカ。こないだ、焼酎をくれたケンだよ」
「もっと、時間をたっぷりあげたらよかったわねえ」

そして、イワンは私をとろかせる笑顔で、正面から見つめてくるのだ。

「きいて、イワン。キャンプ場の窓から夜中に外を眺めたら、
 上空に私の列車が停まっていたわ」
「きっと、彼は心配のあまり、控えていたんだろうね」
「まったく、気分が悪かったわ。何が心配だというのかしら」
「あなたが、自分の目の届かないところで、新しい恋におちていたらと
 気をもんでいたんだよ、ミーラチカ」

信じられない。
最初に、キャンプ場の係員が現れた段階で、「妄想の余地なし」と判定して
4日間平穏に過ごしたというのに。
まったく、どうやって、あんなにときめかない男たちを集められたのか不思議。
修道院にだって、もっとイケメンな神父様がいらっしゃるに違いないわ。

「私、バルコニーから、懐中電灯で、帰りなさいって、信号を送ったのよ」
「そんな事で引き下がる彼じゃないよね」
「ええ。結局、解散するまでいたわね」
激しく大笑いするイワン。
私の隣に座り、私の肩を抱きながら、
くつろいだ様子で言うの。

「ねえ、愛しのオーナー、あなたは、カーステアーズのこと、どう思う?」
「誠実で、実直で、でも少し皮肉屋さん」
「彼って、普通にカッコいいじゃない?」
「イワンは、今でも狙っているの?」
「こないだ、猛烈にアタックしたけどね、彼の中には誰かいるんだよ」
「ああ、心の中の小部屋の類まれなエレノアね」
「違うよ、ミーラチカ、彼が今一番…」

ガタガタっと音がして、サイドボードの影から
何かが転がり出てきた。

「イワン!何を馬鹿なことを」

カーステアーズ。
いったい、ここで何をしているというの。

寄り添う私たちの姿を見て、赤面するカーステアーズ。

「ごめんなさい、ミーラチカ。彼をよんだのは、ボクが考えたことなんだよ。
 確かにね、カーステアーズは、ちょっと心配症すぎてね、
 あなたを怒らせてしまったよね。でも、それはね、
 オーナーへの愛がなせるワザさ。
 ね、今の言い方ならいいでしょ?リーアム」

ウィンクを送るイワン。

「申し訳ございません、ヤンスカ様。私、4日間もお暇をだされるなど
 まったくもって、信じがたく、混乱をきたしたようでございます」
「お暇を出すって、カーステアーズ、私はあなたに休暇をあげたつもりだったのよ」
「私には、必要ないのでございます。いかなる時も、あなた様にお仕えし、
 お傍にいるのが私の務めでございますゆえ」

ニヤニヤしながら、イワンが私の肩から手を放し、
カーステアーズが手に提げているアタッシェケースの方を顎で示して
我慢しきれずに、ふきだす。
「ねえ、愛しのオーナー、あの中を見せてもらってごらん」

「カーステアーズ、見せて頂戴」

赤面した上に、汗をはげしくかきながら、
手をふるわせて、蓋をあけるカーステアーズ。
私の顔をみようとしない。

「んまあ!これは?プラレール?」

顔の付いた蒸気機関車が一台と、小さな燕尾服のおじさんの人形が一体入っている。
きかんしゃトーマスに、こんなキャラクターはいただろうか?
しかし、何ともいえない顔。
あ!吉田戦車の描く、かわうそ君に似ているんだわ。

「やあ、こんにちは!ぼくはサドー島からやってきたんだよ。
 あなたは、ぼくのご主人様のさらにご主人様なんだよね!」

うわあ~。
パチモンくさい、少年ボイスだわ。
オッサン声でいいじゃないの。
それにしても、このオモチャは、何なのかしら?

イワンが答える。
「愛しのオーナー、わかってないようだね。
 これはね、カーステアーズの妄想列車なんだよ。
 あなたへの心配から、妄想が膨らんで、
 気が付けばこの小さな汽車が足元にいたんだってさ」

私は、こんなに驚いたことはないわ。
私の妄想列車はもちろん、所有する全てのものは、
それはそれは、素晴らしいものばかり。

「カーステアーズ、ビックリね。コレは、何で動くの?」
代わりにかわうそ顔の汽車が得意げに答える。
「もちろん、わがご主人様の妄想がボクの燃料なんだ」と。

「あなた、どうやって、カーステアーズを乗せるの?」
「実は、乗せられないんですよ。大きくてもハムスターが精一杯ですかねえ」
「虫かアマガエルしか、無理そうね」
「ボクもはやく、役に立つ立派なきかんしゃになりたいなあ」
「本家みたいなことを言うのね。それに、サドー島ってどこよ?」
「ボクの島のモデルは、新潟県の沖合に浮かぶ大きな島なんだ」

はあ?佐渡。サドー島…。

カーステアーズが、気の毒になってきたわ。
「ねえ、きかんしゃさん、ちょっとあなたのケースに戻っていて頂戴」
「わかりました。では、ご主人様、おやすみなさい」

イワンは、涙を流して身をよじっている。
「ボクも、初めて見た時に、悶絶したよ。
 今でもやっぱりおかしいけれど」

「イワン、おだまりなさい!」
私は、気づいた時には、今までに出したことのない声で叫んでいた。

「カーステアーズ、こっちにきて、おかけなさいな」
「私は、本当に情けないですよ」
「いいえ、恥じることなどないのよ。
 イワン、人の妄想を笑ってはいけないわ。
 それは、あなた達自身をも笑うことになるのよ」
「ごめんなさい、ミーラチカ」
「勿体ないお言葉です、ヤンスカ様」

私は、現実の用事に追われて、この大切な私のお仲間を忘れていた4日間を
ふりかえってみる。
充実した時間ではあったが、やはり、鮮やかさに欠けた光景だった。

「私が悪かったわ、カーステアーズ。ずっと、待ち続けてくれてありがとう」
「とんでもない、あなた様がお謝りになることではございません」
「本当はね、心配してくれて嬉しかったのよ。
 でも、安心して。本当に何の妄想のネタもなかったわよ」

カーステアーズは、うつむいたまま首だけで返事をしている。

「まあ、たしかに、あなたのアノ妄想列車は微妙だけど、
 でも、あなたもオーナーの仲間入りよね」

イワンは、そっと席を離れてギャレイに入っていく。

「私ではなく、イワンのところにいらっしゃるのだろうと
 思っておりましたが、実際に、おくつろぎになっているあなた様を
 見ていたら、もう、私の列車は必要ないのではないかと感じました」

「カーステアーズ、何を馬鹿なこと言ってるの?」
「ヤンスカ様。あろうことか、私はあなた様の行動を妄想し、
 嫉妬心を抱いたがために、あのような醜い列車を呼んでしまったのですよ。
 私は、あなた様の誇りである妄想列車の運輸部長だというのに」

相変わらず、こちらを見ようとはしないので、
私は彼の顔を両手ではさんで、こちらに向けてやったわ。

「私を見なさい、カーステアーズ、。
 人間ですもの、妄想なんて当たり前のことよ。
 あなたの世界で私が何をさせられようが、私は気にしないわ。
 でも、私があなたを必要としないのではないかという妄想だけは、やめて」

気が付けば、私は彼を抱きしめていた。

でも、でも、カーステアーズは自分の両手を私にまわそうとはせず、
それどころか、握りこぶしを作っていたわ。

あなたなりの、誠意なのよね。

私は、彼から離れ、ギャレイにいるイワンを見にいった。
「ミーラチカ、あなたの持ってきたワインを飲もうよ」
そして、左手でトレイを持ち、
右腕を私に差し出す。

「ねえ、さっきから、ケースの中で汽笛が鳴ってるよ」
イワンは、すべてお見通しという顔で私を見おろす。

「カーステアーズが、もう自分の列車なんか必要ないだろうって言ったから、
 つい、そんな事は言わないでって、伝えて、でね、彼を抱きしめたの」
「ウラ~!あの彼に、そんなことしたの」
「もちろん、彼は自分の手を握りしめて何もしなかったわ」
「だから、アノ豆列車がピーピー鳴ってるんだね」
「私、もう、二度とこんな事しないわ。彼、困っていたもの」
「ミーラチカ、困ってないから、汽笛が鳴るのさ」

カーステアーズは、私がいない間に、いつものすました表情を取り戻していた。
イワンも、何事もなかったように、私を座らせて、
グラスを並べ、コルクを抜いて、白ワインを注いでくれる。

「さあて、愛しのオーナー、そして騎士たるリーアム、
 このワインの名前を知りたいかい?」

「ステキだよ、伝説っていうんだ。
 心魅かれないかい?リーアム。じゃあ乾杯しようよ」

ガタガタ。
バタン!と例のアタッシェケースが開いて、
やたら明るい少年ボイスが響き渡る。
「やあ、今伝説って言わなかった?ボクの島も伝説の島って言われてるんだよ~。
 ねえねえ、知ってる?」
かわうそのくせに、媚びたような表情で、
カーステアーズの小さな汽車がまくしたてる。

私は眼力で殺せるほどに、この汽車を睨みつけたが、
へらへらと喋りつづけていて、全く効果がない。

イワンは、小声で、ケースごと空中に放り投げようかと提案してきたが、
よく考えてみたら、カーステアーズの分身みたいなもの。
ああ、コレごと、私は受け入れなくってはいけないのね。

こんなのを、呼び出すなんて、カーステアーズは
よほど妄想がお粗末らしいわねえ。







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Last updated  2012.08.19 00:00:33
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