橋本篤彦先生のバリトンリサイタルが、7月8日(金)武蔵野公会堂で催されました。
橋本篤彦先生と言ってもご存知ない方も多いと思いますが、吉祥寺でオネスタ音楽院を開いていらっしゃる先生で、その他、クラシックの歌の指導を事細やかにCDに入れて、それを聴けば譜面が読めない人でも曲が歌えるようになるという「うた丸CD」を何曲も製作なさり、販売なさって、クラシックの歌曲を広めることに貢献なさっていらっしゃる先生です。
私の古くからのブログのお友達は覚えていらっしゃるかも知れませんが・・・、去年私が、5月の発表会に向けて、病み上がりで、4月に復帰した時、与えられた曲が、”Ma renndi pur contento(喜ばせてあげて)”でした。後1月しかない・・・。譜を読んでもリズムがうまくつかめない、どうしようと思って、ネットでCDを探したところ、橋本先生の「うたまるCD」と出会いました。そしてその中に「喜ばせてあげて」(ベッリーニ) も入っていたのです。これ幸いと購入し聴いて見ると、そのご指導が何と細やかなこと。リズムの取り方の指導から、イタリヤ語の発音指導、一節ずつ歌唱指導、全体通して、そして最後はピアノだけ、ピアノ伴奏で歌えるようになって初めて完成すると・・・。
何度も聴いて、レッスンに臨みました。そのお陰で、普段より早く1月で何とか仕上げることが出来ました。その時感心したのは、先生のおっしゃっていることがお二人とも同じだということ。ベッリーニはこう歌うという暗黙の了解をお二人の先生が共通にお持ちだということでした。それは別に譜面に書いてはないのです。歌の勉強はこういうものなんだと、私は初めて知らされたのを覚えています。
そして発表会の日、橋本先生に、「うた丸CD」で勉強したお陰で発表会を迎えられましたというお知らせです、と、招待状をお送りしました。ところが当日、お忙しいところをご都合をつけて聴きに来てくださったのです。ほんとうに感激しました。その後メールで、ご批評も頂きました。
こういう歌の教育に情熱を注いでいらっしゃる先生のリサイタルは是非聴きに行きたいと思っていたところ、先日リサイタルの案内が届いて、一も二もなく聴きに伺ったのでした。
予想に違わず、素晴らしい演奏でした。声を張り上げるだけが歌ではないと、日ごろ歌のレッスンで言われますが、本当にそれを実践なさった歌い方でした。勿論フォルテでしっかり声を張るところもありますが、ピアニシもで情感を漂わせて歌うところは絶品でした。最初に、“Piacer d'amor"(愛の喜び)を歌われたのですが、出だしからピアノで情感あふれる演奏でした。
トステイには事の他愛着を持たれていらっしゃるようで、プログラムもトステイ中心に組まれていました。第1部ではトステイの歌曲La Sera(夕べ)の5曲を続けて演奏なさいました。きめ細かい表現、澄んだバリトンの声がピアニッシモの部分までよく響きました。
その他ではイタリア後期バロック音楽の作曲家ドゥランテの(踊れ、優しい娘よ)レスピーギ(踊りへの誘い)(夜)ヴェルデイ(乾杯)、以上で第1部終了。
第2部はトステイの(理想の女)と(最初のワルツ)の後日本歌曲でした。
服部正作曲「野の羊」、越谷達之助「初恋」、中田喜直「結婚」。「野の羊」「結婚」は私は初めて聞く曲でしたが、先生は何度も歌われていらっしゃるそうで、とても面白い発想の曲でした。
アンコールの声がかかり、日本語の歌イタリア語の歌、英語の歌、先生が歌いこなされてきた歌4曲。アンコールの始まる前に、「これから、リサイタルを始めます」との御冗談も。「これからは祈りの時間です」とおっしゃるのでレクイエムなど歌われるのかと思ったら、ものすごく早いイタリア語の歌で、それがうまくいくように皆さん祈ってくださいという意味でした。
時にユーモアを交えながら、歌う時は本当に真摯な態度で、感情を込められ、打ち込む姿は、とても凛凛しく見えました。
すらっとなさってとてもカッコいいんです。布施明さんにちょっと歌うご様子が似ていらっしゃるような気がしました。布施さんよりもっと脚が長くいらっしゃる・・・。(いいえ、布施さんが短いという意味ではありません)舞台に立つ時はこうでなくては・・・。と思わせるような・・・。
とても胸に沁みる美しい歌声、魅了されました。声を端正に抑えた、情感の籠った歌でした。張りのある声も柔らかい声(ファルセット)も素敵でした。そしてリサイタルに取り組まれる真摯な姿勢、どれほど心血を注がれたのかと思い抱かせる歌の数々。本当に来て良かった。聴かせていただいて良かったと思いました。先生本当にありがとうございました。
ロビーで「端から、来ていただいた皆さんに一人づつ握手させていただいていいですか?」という人の繋がりを大事にされる先生のお言葉。私も名前を名乗ると、おお、と言って感激してくださって・・・。また発表会の時はお知らせください、とも・・・。
本当に暖かいものに包まれた貴重な時間でした。
プリマベラの練習その2 2019.07.20 コメント(21)
市川新婦人コーラスの練習 2019.07.05 コメント(12)
PR
Calendar
Comments
Freepage List
Keyword Search