文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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40 観た・読んだメモ

令和5年2月26日から7月20日の実況です。項目ごとに、日付を遡る形で記載しています。
ひとつ前の 令和4年9月17日~令和5年2月25日 の実況はこちら。
ひとつ後の 令和5年7月21日~11月21日 の実況はこちら。


観 た:

令050720  Abstraction 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ The Genesis and Evolution of Abstract Painting: Cezanne, Fauvism, Cubism and on to Today @ アーティゾン美術館

令050717  モグラが三千あつまって @ 新国立劇場 小劇場

令050711  諸星秀樹 展 @ Gallery Q

令050711  遠いところ @ シネ・リーブル池袋

令050710  MET Live | Wolfgang Amadeus Mozart: ”Don Giovanni” @ 東劇

令050709  TOPコレクション セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見 | 本橋成一とロベール・ドアノ 交差する物語 Motohashi Seiichi & Robert Doisneau: Chemins croises | 田沼武能 人間賛歌  Tanuma Takeyoshi: Viva Humanity! @ 東京都写真美術館

令050709  Open展 ステージ3 版画[プリント] @ Otho Gallery

令050709  菅野愛沙子「デジャヴのお気に入り」| 五ノ井愛・SHINRI 二人展 | ~TEAM-TAN 10周年記念~ 石井郁巳 個展【エナジー】~その先にある世界~ @ みうらじろうギャラリー

令050707  東京現代 Tokyo Gendai @ パシフィコ横浜 展示ホール C・D
(Taschen のブースで Hockney: Chronology を購入)

令050706  原大介ドローイング展 彗星連夜 @ Oギャラリー

令050705  Up And Coming展 III ~ 輝け、えひめの挑戦者たち (山本修司・零駒無藏 (ぜろこま・むぞう) ・河野 甲) @ ミウラート・ヴィレッジ(三浦美術館)

令050701  プレイプレイアート展 I Love Art 17 (小谷元彦 "Surf Angel" がよかった!)| 保良雄 種子だけに趣旨が @ ワタリウム美術館

令050701 ギャラリーアルトン設立30周年記念  蛯子真理央展 ー夏への扉ー @ Gallery Artone

令050701  永島正人クレパス画展 @ ビリケンギャラリー

令050701  坂田源平・三松拓真 二人展 Utopia @ Gallery Scena

令050630  発掘・植竹邦良 ニッポンの戦後を映す夢想空間 UETAKE Kuniyoshi: Visionary Views of Postwar Japan Unearthed @ 府中市美術館

令050629  宮下サトシ 展 Toys Pottery @ Gallery Tsubaki 2

令050629  呉 亜沙 展 Wonder @ Gallery Tsubaki

令050628  Jiwon Kim: Blooming @ Gallery b.Tokyo

令050627  立木義浩 日本再発見。Island Hopping @ Canon Gallery

令050626  National Theatre Live: "Othello" @ TOHOシネマズ日本橋

令050626  しりあがり寿 個展 ゆめをみたよ。 @ art space kimura ASK?

令050621  上路市剛 作品集刊行記念展「受肉/Incarnation」 @ Gallery Mumon

令050621  MET Live | Terence Blanchard: "Champion" @ 東劇

令050621  門永哲郎 ―青い鳥を見つけてー @ 靖山画廊

令050619  魏 嘉 (ウェイ・ジャ) 展 Open Your Eyes and Think Nonsense @ Gallery b. Tokyo

令050619  時松はるな 「なんか楽しい in Tokyo」 @ Galerie Tokyo Humanite

令050619  杉山 佳 個展「部屋と窓」 @ アートスペース羅針盤

令050618  さばかれえぬ私へ Waiting for the Wind 竹内公太・志賀理江子 Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展 | MOTコレクション 被膜虚実/Breathing めぐる呼吸 @ 東京都現代美術館

令050616  Allegra Pacheco: Dear Salaryman @ Gallery MoMo Ryogoku

令050615  楽園 (豊原江理佳ほか) @ 新国立劇場 小劇場

令050614  パラサイト @ Theater Milano-za

令050612  逆転のトライアングル Triangle of Sadness @ 下高井戸シネマ

令050610  横田 尚 展 | 柳澤裕貴 展 @ Gallery Tsubaki/GT2

令050610  Movement vol.1 @ Gallery Artglorieux
(鳥越一輝 (とりごえ・かずき) 「記憶される記録(観念)」を \99,000で購入)
(Cocoro Nakaura ”woman” を \132,000で購入)

令050608  新ハムレット @ PARCO劇場

令050607  エドワード・ゴーリーを巡る旅 Journey to the World of Edward Gorey @ 渋谷区立松濤美術館

令050606  大阪の日本画 Japanese Paintings of Modern Osaka @ 東京ステーションギャラリー

令050605  立松功至 展 @ Gallery Q

令050605  大坂寛 写真展「女性美」(はっとり・よしをコレクション) @ Art Gallery M84

令050605  野田怜眞 ―Vanana― @ Seizan Gallery

令050605  MET Live | Richard Strauss: "Der Rosenkavalier" @ 東劇

令050604  井上裕起 salaMandala/Border @ Roppongi Hills A/D Gallery

令050604  ヘザウィック・スタジオ展 共感する建築 Studio Heatherwick: Building Soulfulness @ 東京シティビュー

令050603  鴻池朋子のストラクチャー @ Gallery MoMo Projects

令050603  時の移ろいに想いを込めて博物誌 ―滝口和男― @ セイコーハウス銀座ホール

令050603  中村宏 戦争記憶絵図 @ Gallery 58

令050601  麻生三郎展 三軒茶屋の頃、そしてベン・シャーン ASO Saburo: The Sangenjaya Years and Ben Shahn | ミュージアムコレクションI 山口勝弘と北代省三展 ― イカロスの夢 Yamaguchi Katsuhiro and Kitadai Shozo: An Aspiration to Fly |小コーナー展示 追悼 ― 矢吹申彦 (のぶひこ) @ 世田谷美術館

令050531  松宮うらら展 Gooday @ Gallery b. Tokyo

令050531  生きる Living @ TOHOシネマズシャンテ

令050530  今井俊介 スカートと風景 Shunsuke Imai: Skirt and Scene | 寺田コレクション ハイライト | Project N: 山口由葉 Yamaguchi Yuiha @ 東京オペラシティアートギャラリー

令050530  小さき麦の花 @ 下高井戸シネマ

令050527  浅野井春奈 展 dancer's head @ Gallery Face to Face
(木彫「暖かいところ 3」を¥36,300で購入)

令050527  人物表現展 III ―佐藤美術館コレクション― @ 佐藤美術館

令050527  毛利眞美 Mami Mori 出版記念展 「ふたりの画家、一つの家 毛利眞美の生涯」 @ 南天子画廊|art space kimura ASK?

令050526  馬場敬一展 @ Gallery Q

令050526  マティス展 Henri Matisse: The Path to Color @ 東京都美術館

令050525  南谷富貴展 Fuki Nanya Exhibition: "Landscape scene zero" @ アートスペース羅針盤

令050524  Karim B Hamid: "Upon the End of Play and Infancy" @ Megumi Ogita Gallery

令050524  池田和宏 個展 "Introduction" @ Gallery Mumon

令050524  MET Live | Giuseppe Verdi: "Falstaff" (in Italian) @ 東劇

令050522  Everything Everywhere All At Once @ TOHOシネマズシャンテ

令050520  藤田潤ガラス新作展 ―いのちの輝き―|天野裕夫彫刻展 兎塔のために @ 日本橋高島屋美術画廊

令050520  星山耕太郎 展 Crowd @ 日本橋高島屋美術画廊X

令050520  NUDE ―池田満寿夫、門坂 流、謝敷ゆうり、鈴木明日香、成田朱希、村松元子、H. Jansen― @ 不忍画廊
(村松元子 "Nude Girl with Lowered Head (after Egon Schiele)" を¥44,000で購入。成田朱希「飛花落葉」を¥38,500で購入)

令050517  エンジェルス・イン・アメリカ 第2部「ペレストロイカ」 @ 新国立劇場 小劇場

令050516  エンジェルス・イン・アメリカ 第1部「ミレニアム迫る」 @ 新国立劇場 小劇場

令050511  篠田守男彫刻展 @ アートスペース羅針盤

令050511  大西由莉 Spectral Painting @ ギャルリー東京ユマニテbis

令050511  あるコレクターによる宮崎進展Ⅰ 1965 - 2001 @ ギャルリー東京ユマニテ

令050509  WOW 不完全な映像 Refraction #001-014 @ 銀座蔦屋書店アトリウム

令050507  美術部展 2023 @ ビリケンギャラリー

令050507 ギャラリーアルトン設立30周年記念  Merveille 展 vol. 16 @ Gallery Artone

令050507  SICF 24: Spiral Independent Creators Festival [Group B] (田代ゆかり、村上義彦、永戸大喜、西出 誉ほか) @ Spiral Hall

令050506  「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄 @ 千葉市美術館

令050505  藝大コレクション展2023 『買上展』第1部:巨匠たちの学生制作、第2部:各科が選ぶ買上作品 Geidai Collection 2023: Selections from the Purchases Excellent Student Works | 脱境界 インターアジアの木版画実践 Debordering: Woodcut Printmaking Practice in Inter-Asian Context | Punk! The Revolution of Everyday Life | 藝大密林化計画 @ 東京藝術大学美術館|陳列館|アートプラザ

令050504  第31回 MOKURI 展 ―版画7人展― @ アートスペース羅針盤

令050503  タグコレ 現代アートはわからんね TAGUKORE: Dunno A Thing About Art (But I Like It) | 稲葉浩志作品展 シアン @ 角川武蔵野ミュージアム

令050502  MET Live|Richard Wagner: "Lohengrin" @ 東劇

令050501  特別展「東福寺」 @ 東京国立博物館平成館

令050429  第40回 上野の森美術館大賞展/入賞者展 @ 上野の森美術館/同ギャラリー

令050428  オーガ ベン ドローイング展 ―a thousand voices― @ Gallery Hana, Shimokitazawa

令050428  エンジェルス・イン・アメリカ 第2部「ペレストロイカ」 @ 新国立劇場 小劇場

令050427  エンジェルス・イン・アメリカ 第1部「ミレニアム迫る」 @ 新国立劇場 小劇場

令050426  森下進士 展 顕見蒼生 (うつくしきあおひとくさ) をめぐって @ Gallery b. Tokyo

令050425  エンジェルス・イン・アメリカ 第1部「ミレニアム迫る」 @ 新国立劇場 小劇場

令050420  Duo Exhibition by nagu・itabamoe "Pink Mood" @ masataka contemporary

令050420  Beyond the Ages/Portrait Part 1 @ Sansiao Gallery

令050420  古今東西 “蒐集匣” @ 不忍画廊

令050420  宇野かこ 展 @ 日本橋高島屋美術画廊

令050420  みちすがらこえのひびきをひろいあつめて[前期](備前焼展) @ 日本橋高島屋美術画廊

令050420  末松由華利・野中美里 二人展 @ 日本橋高島屋美術画廊X

令050418  塩澤宏信 展 妄想内燃機工匠 融通無碍図鑑 @ Gallery Tsubaki

令050418  佐藤 温 展 ―空ヲ想フ― @ Gallery Tsubaki GT2

令050417  ラビット・ホール @ PARCO劇場

令050415  帰ってきたマイ・ブラザー @ 世田谷パブリックシアター (ストリーミング配信)

令050412  本と絵画の800年 吉野石膏所蔵の貴重書と絵画コレクション @ 練馬区立美術館

令050411  李宣喜・寺田朋代 2人展 @ アートスペース羅針盤

令050411  富田菜摘「日常に非ず」|”Monkey Magic” @ ギャルリー東京ユマニテ 1F/B1F

令050410  SMBC Art HQ/Annex 藤田貴也×三重野 慶 @ 三井住友銀行東館1階 アース・ガーデン

令050407  デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム Moonage Daydream @ TOHOシネマズ日比谷

令050406  Bunkamura Gallery Selection 2023(完売の吉田樹保など7人展) @ Bunkamura Gallery

令050406  ブレイキング・ザ・コード Breaking the Code @ シアタートラム

令050405  時代の作家展 ―忘れてはならない昭和の作家― @ 森田画廊

令050404  後藤光利 展「中空」 @ Gallery b. Tokyo

令050331  渡邊和生 展「エレファント」 @ Gallery b. Tokyo

令050331  石川九楊 展 @ 日本橋高島屋美術画廊

令050331  五味謙二展 ―built to last― @ 日本橋高島屋美術画廊X

令050331  小さな从展 @ 不忍画廊

令050331  きゃらあい個展 些細で未熟な日々 @ Ammon Tokyo

令050330  第26回岡本太郎現代藝術賞展|常設展「岡本太郎とにらめっこ」 @ 川崎市岡本太郎美術館

令050329  はっとり・よしをコレクション展「マン・レイやジャンルー・シーフなど」 @ Art Gallery M84

令050329  山岸千穂 個展「一条の光」 @ Gallery Mumon

令050329  ビリー・ホリデイ物語 Lady Day at Emerson's Bar & Grill (2015年作品、Audra McDonald 主演) @ 東劇

令050328  しりあがり 寿 展 <愚かなり、この世界!> Shiriagari Kotobuki: Foolish, this world! @ Gallery Q

令050328  マベル ポブレット展 Mabel Poblet Exhibition: Where Oceans Meet @ Chanel Nexus Hall

令050328  佐伯祐三 自画像としての風景 Saeki Yuzo: Emerging from the Urban Landscape @ 東京ステーションギャラリー

令050327  生誕101年 松澤宥 (ゆたか) @ gallery Art Unlimited

令050327  "The Original" directed by 土田貴宏 @ 21_21 Design Sight

令050327  ルーヴル美術館展 愛を描く Peindre l'amour dans les collections du Louvre @ 国立新美術館 企画展示室1E

令050327  第99回 白日会展 @ 国立新美術館 展示室2A~2D

令050323  恵比寿映像祭2023 コミッション・プロジェクト | 深瀬昌久 1961-1991 レトロスペクティブ | 土門拳の古寺巡礼 @ 東京都写真美術館

令050323  第45回 从展 @ 東京都美術館

令050322  レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 @ 東京都美術館 企画展示室

令050322  VOCA展 2023 @ 上野の森美術館

令050321  羽多野加与 ドローイング個展 @ 新宿眼科画廊

令050321  Jazz Graphics Exhibition(展示監修・塙 耕記) | 阿部克自写真展「素顔のジャズ・ジャイアンツ by K. Abe」・ 徳持耕一郎作品展「線で奏でるJazz」 @ BAG - Brillia Art Gallery

令050321  櫻井あすみ展 流転と滞留 @ アートスペース羅針盤

令050321  蔡云逸 展 The Last Evil in the World @ Gallery b. Tokyo

令050320  ミュージカル「太平洋序曲」 @ 日生劇場

令050319  池田ひかる個展「昔噺」|春風駘蕩(川邊りえ等5人展)|【秘められたる魔性10】 @ みうらじろうギャラリー 5F~3F

令050317  歌舞伎座新開場十周年 三月大歌舞伎 第一部「花の御所始末」 @ 歌舞伎座

令050315  ミュージカル「ジキル&ハイド」(笹本玲奈・石丸幹二) @ 東京国際フォーラム ホールC

令050314  ハムレット(構成・演出:野村萬斎) @ 世田谷パブリックシアター

令050311  Art Fair Tokyo 2023 @ 東京国際フォーラム

令050310  ナイロン100℃ 48th Session "Don't freak out" @ ザ・スズナリ

令050307  石川真衣個展 シルクウェイ @ The Artcomplex Center of Tokyo

令050306  MET Live | Umberto Giordano: "Fedora" @ 東劇

令050305  Art Market Tennoz(岩崎奏波、南 花奈、堀川由梨佳、加藤智大、宮間夕子ほか) @ What Cafe

令050304  Primaveral(9人展) @ Gallery Tsubaki

令050302 新国立劇場演劇研修所 第16期生修了公演  ブルーストッキングの女たち (役者たちはよく演じていたが、大杉栄というキャラの救いようのないバカぶりに白けて、マジで中途退出したくなった) @ みうらじろうギャラリー

令050301  アンナ・カレーニナ(上演台本・演出: Phillip Breen 主演・宮沢りえ) @ シアターコクーン

令050227  Double Annual 2023 反応微熱 これからを生きるちから Slightly Feverish: Heat of Reaction, Strength for New Life(京都藝術大学・東北藝術工科大学 学内選抜展) @ 国立新美術館(展示室3A)

令050227  令和4年度(第46回)東京五美術大学 連合卒業・修了制作展 @ 国立新美術館(1A~E, 2A~E)

令050226  Faces and Heads(新宅和音、伊藤千恵子ほか) @ みうらじろうギャラリー

令050226  合田佐和子展(「夏の日の名スターシャ」ほか) @ みうらじろうギャラリー@5



読 ん だ:

令050719  ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編      (新潮社、平成6年刊)   村上春樹 著
(蒙古兵による間諜「山本」皮剥ぎのシーンがパワフルで1巻読んだ記憶のすべてを塗りつぶしてしまった。間宮少尉が語るなかの浜野軍曹のひと言「南京あたりじゃずいぶんひどいことをしましたよ」が余分。たぶん著者は本質的に逼塞のおっちょこちょいなのだろう。和文の質は、悪文家大江健三郎よりはまだマシかていどのレベルだ。前半の加納マルタとのやりとりはぎこちなさすぎるし、加納クレタや笠原メイとのシーンも安部公房ならずっとしっくりと幻想文に仕立てるはず。)

令050716  中川一政画文集 独り行く道      (求龍堂、平成23年刊)   中川一政 著・画
(武者小路実篤さんとの親交記が愉快。広い世界に心を開きつづける姿勢が共通していたのだろう。押しかけた新聞記者の依頼する色紙に「竜となれ雲来たらん」と武者さんが書き、宿に戻って一政さんが「あんなのに、もったいない」と言ったら武者さんが「うん、そうだ。われ鍋にとじぶた、と書いときゃよかった」と言って、かけぶとんが上下に波打っていた、というのに大いに笑えた。)

令050713 詩集  見えない涙      (亜紀書房、平成29年刊)   若松英輔 著
(≪大切な気持ちもすべてを書かずにそっと心に還す するとある日予期せぬ姿となって戻ってくる≫ ≪ようやく出会った運命の人をまえにはじめて声を発するときのように ページをめくるのがためらわれる人生の一冊を探せ≫ ≪愛を語るな 愛する人を語れ お前よりもお前の魂に近いその人を語れ それは未知なるお前自身を語ることになる≫)

令050711  画本 厄除け詩集      (パロル舎、平成20年刊)   井伏鱒二 著、金井田英津子 画
(于武陵の「勧酒」の ”花発多風雨 人生足別離” を ≪ハナニアラシノタトヘモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ≫ と歎じた名調子はあまりに有名だが、今回、賀知章の「題袁氏別業」のトビまくった風流に恐れ入った。賀知章は李白の才を見出したひとだったそうで、むべなるかな。)

令050711  生物と無生物のあいだ      (講談社現代新書、平成19年刊)   福岡伸一 著
(もっと早く読むべきだった名著。単なる生物学論考ではなくて、いのちのイメージを読み手の脳内に紡ぎ入れようとする上質の知性的文学の営みであり、科学史。≪エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性と構造を強化することではなく、むしろその仕組み自体を流れの中に置くことなのである。≫ ≪生命は、その内部に張り巡らされたかたちの相補性によって支えられており、その相補性によって、絶え間のない流れの中で動的な平衡状態を保ちえているのである。≫ ≪生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。≫ ≪私たちは遺伝子をひとつ失ったマウスに何事も起こらなかったことに落胆するのではなく、何事も起こらなかったことに驚愕すべきなのである。動的な平衡がもつ、やわらかな適応力となめらかな復元力の大きさにこそ感嘆すべきなのだ。≫)

令050702  長田弘詩集      (角川春樹事務所、令和4年刊)   長田 弘 著
(代表作「最初の質問」がとても気に入って、何度も読み、毎朝読めるようにコピーを部屋の壁に貼った。この選詩集は「最初の質問」以外は料理詩に充てられている。おって全詩集を読むつもり。)

令050629 ビジュアル版  昭和のくらしと道具図鑑  衣食住から年中行事まで     (河出書房新社、令和4年刊)   小泉和子 編著
(著者は昭和8年生まれ、工学博士。大田区南久が原の自宅を家財道具ごと保存し博物館として公開し、国の登録有形文化財に指定されている。≪いつの時代も、最も残りにくく、かつ軽んじられるのは、いちばん身近なはずの庶民のくらしである≫という静かなことばに頭がさがる。女学生の慰問の手紙へ、黒竜江省に配属の兵士から押し花を同封して送られた端正な返信は心をうつ。)

令050628  音楽と生命      (集英社、令和5年刊)   坂本龍一・福岡伸一 対談
(ともすればランダムなピュシスに耐えられず秩序あるロゴスを求めてしまう人間のさが。ロゴスという認識の牢屋をのがれるには、ピュシスのノイズのなかに内部観察者として入っていくしかない。AIは正解を1つだけ提示するが、「正解が1つだけ」ということは音楽にもアートにも生命にもない。ただ、米国の研究者にわかってもらうにはロゴスで説明しないとニューエイジの世界になってしまうから、福岡氏の課題は「動的平衡」をロゴスで説明すること。体調管理は、動的平衡を揺すってやり覚醒させることから。)

令050625 わたしの古典22 岩橋邦枝の 誹風柳多留      (集英社、昭和62年刊)   岩橋邦枝 著
(江戸の川柳、ちかしくは感じるが、背景知識がないと糸口すら見つからぬ。この解説本、名著なり。なんと当時、高齢出産や、まして双生児・三つ子は、ひじょうな恥とされた。主殺しは親殺しより重罪で、二日晒一日引回し鋸挽きのうえ磔。吉原の禿を岡場所では「小職 (こじょく) 」と呼んだ。|安うぶ着さぎとすつぽん舞遊び|はらんでもいいと橋から連れて来る|川を越す女壱寸づつまくり|寝て読んだ文 (ふみ) まん中で起上り|神代にもだます工面は酒が入り|母の名は親父の腕にしなびて居|もてんとすべからずふられじとすべし|子沢山州の字形に寝る夫婦)

令050623  私の本棚      (新潮文庫、平成28年刊、平成25年原著)   新潮社 編
(23名の粋人の蔵書挌闘記。貧窮の一時期を経た児玉清さんの、ドイツ文学愛から銀河のように広がる蔵書宇宙のすがしさに感銘を受けた。)

令050621  奇界紀行      (KADOKAWA 平成27年刊)   佐藤健寿 著
(切れば血のでる教養を体現した名著。体験の数々もすごいが、それを文章に落とし込む韜晦のセンスが絶品。≪インドはあまりにも不潔だが、決して不浄を意味しない。明らかに薄汚れたガンジス川にあえて身を浸すのは、それだけ今生がすでに穢れていることを自ら認識するためであるように思える。不潔きわまりないガンジス川への沐浴を通じて、彼らは穢れた自らのカルマを洗い流す。≫|ローマとフィレンツェの間に1552年に造られたボマルツォの怪物庭園に行ってみたい。入園料を払えば入れるらしい。|≪台湾は小さな島国であるにもかかわらず、その国土に対して実に奇妙なものが多い。もしも世界に「奇妙密度」みたいな数値があったならば、きっと世界でも最高レベルの数値を叩き出すのではないだろうか。≫)

令050618  世界は分けてもわからない      (講談社現代新書、平成21年刊)   福岡伸一 著
(Efraim Racker 教授のもとで Mark Spector が短期間にシャープな業績を編み出しそれがフェイクと知れる衝撃の記録を後半に置いた本書は、高度に知的な散文詩だ。研究者たちの科学探求の最前線の仕組みを伝えている。)

令050618  失われた時を求めて 2 スワン家のほうへ II      (岩波文庫、平成23年刊)   Marcel Proust 著、吉川一義 訳
(記憶の窯変現象に向き合う、恋愛散文詩。)

令050616  歌集|光弾      (雁書館、平成13年刊)   岩井謙一 著
(歌人の結婚前の30代の歌が秀逸。定型のこころよい音律のままにマルチバースな隠喩の冒険がある。|| おそらくは今も宇宙を走りゆく二つの光 水ヲ下サイ|累々と廃墟つらなるわがぬちに悲しみの村ありて花満つ|少年の父の眼に我やどり眺めたりけむ上海の月|電光の文字滝のごと落ち続き街は一日の罪を懺悔す|乱数の行進しゆく液晶の砂漠はるかに蜃気楼たつ|写生する君の姿を目に宿し魚眠りゐる夜の水族館|地に降りし白木蓮の上 (へ) をゆけば踏み絵踏みたる悲しみきたり|いにしへはローマ兵なる男ゐて死せる鯨の脇腹突きぬ|銀盆にさびしきものを捧げたりヨハネは首を母は乳房を)

令050612  ふしぎな中国      (講談社現代新書、令和4年刊)   近藤大介 著
(名著。習近平が、夫婦で3人の子作りを共産党員としての義務として規定した (”三孩政策”) とは、さすがに仰天した。中国の無気力混沌化は着実に進んでいて、滝壺はちゃんと用意されているなぁ。習近平の中国夢とは、1840年のアヘン戦争と1894年の日清戦争前に戻すこと ― とすれば、 泉曰 朝鮮半島も中国が支配せねばなるまい。著者は習近平を清の雍正帝に例える。2013年以降の5年間で腐敗分子として失脚させられた幹部の数は153万7千人。文革だな。北京大学の文系の最高峰は法学部や経済学部ではなく、”人文学部中国語言文学系”。科挙の伝統躍如。そこに1979年に16歳で入学し首席で卒業したのが、ほんらいのポスト習近平たる胡春華だった。)

令050611  奇界遺産3      (エクスナレッジ、令和3年刊)   佐藤健寿 著
(≪私は、一般にラスコーの洞窟壁画に象徴されるといわれる、人間の<余計なもの>をつくりだす想像力や好奇心こそが、人類を駆動させてきた力そのものではないかと、ずっと考えている。その結果生まれたものたちを「奇界遺産」と呼んでいるわけである。≫|米国・ネヴァダ州の毎8月の1週間の砂漠のノマドイベント Burning Man がいい。北朝鮮のマスゲームの原点は、日本がドイツから学んで1927年の朝鮮神宮競技大会の種目にしたことと。ブルガリアの田舎に残った「クケリ」という、キリスト教以前の民俗祭や、トカラ列島・悪石島の、ニューギニアのような「ボゼ」の祭に驚く。)

令050609  奇界遺産2      (エクスナレッジ、平成26年刊)   佐藤健寿 著
(心が凝り固まったときにこの写真集をみると解き放たれた気分になる。いまだ非公開の、レイモンド・モラレスの彫刻庭園に巨万のアート価値を感じる。素材の鉄は赤錆びて、徐々に朽ちていくのだろうか。ピカソの作品群を凌駕しているように思えるが。中国・昆明市郊外の小矮人王国も強烈。小人症の人を中国全土から集めて作った、フリーク超えの別世界。他国では人権意識が園の存立を許すまい。ミャンマーの巨大な仏陀施設も同国ならではか。発想はアンコールワットに通じるのかもしれない。)

令050608  「低学歴国」ニッポン     (日経プレミアシリーズ、令和5年刊)   日本経済新聞社 編
(≪国際的には、自国民の学力・能力を引き上げる競争が激化しているのに、いまの日本は周回遅れだ。≫(板東真理子)|Ph.D.を取るまでの知的訓練は破壊的イノヴェーションそのもの。通説をひっくり返すような新規の仮説を立て、実験などで検証し、一般的に通用することを証明する。その能力をつけるのが大学院の訓練であり、Ph.D.はそれがひと通りできることの証。学問で身につく大局観や、学び続ける習慣、化学的にひとを説得する技術は、経営者になる訓練そのもの。|いまや工学部卒の女性は産業界から引く手あまた。ユーザーの要望にきめ細かく応える少量多品種型の製品開発が求められるようになり、女性の発想が不可欠になった。制御工学、情報工学など新しい研究分野も増えた。|塾と学校にはそれぞれの機能がある。学校は、多様な同世代のなかで時間・空間を共有しながら能力・才能を多面的に見る。学問の幅広さ・奥深さ、夢をもつことなどを教える場。受験勉強は合理的にやらねばならないので塾が手伝う。非資源国・日本はとくに理数系の技術力で世界の最上位を目指す必要があり、数学はその根幹。|日本ほど、アスリートに引退後のセカンドキャリアがない国はない。部活を学校から切り離して彼らに指導を委ねれば効果も大きく雇用も生まれる。)

令050607  格差の起源  なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか    (NHK出版、令和4年刊)   Oded Galor 著、柴田裕之・森内薫 訳
(原著 The Journey of Humanity: The Origis of Wealth and Inequality.  前半は Harari 氏の Sapiens の焼き直しっぽいが、マルサスの停滞の人口論が支配する歴史が大衆教育革命により臨界点に達して次段階へ突入するようすが語られる。そして社会の富がどういう形で共有されていくかの分かれ道となる土地所有形態や社会制度の差によって、経済の離陸が左右される。中央集権型の文明では、エリート層の利益を損なう技術や文化の発展を拒むちからを政府が持っていたが、ヨーロッパではそのような抵抗に会った発明家や実業家は隣国に移るという手があった。民族の多様性は、サハラ以南のアフリカのように過度では社会の結束につながらず、逆に多様性を失うと社会が沈滞する。ゆえに、均質度が高い社会がほんらいとるべき政策は、新しい考えを受け入れること、ものごとを鵜呑みにしないこと、現状に満足せず進んで改革を行うことの奨励だ。未来志向や教育や技術革新を促し、男女平等や多元主義、差異の尊重を進めるような方策こそが、普遍的な繁栄のカギとなる。)

令050602  Finding Your Element: How to Discover Your Talents And Passions and Transform Your Life      (Allen Lane, London 2013)   Ken Robinson and Lou Aronica 著
(多くの人生のかたちを示しながら道を示してくれる著者の微笑が見える本。)

令050529  奇界遺産      (エクスナレッジ、平成22年刊)   佐藤健寿 著
(行きも行ったりの写真集。中華圏のキッチュな道教テーマパークがやたら多い。注目は古代ペルーのエロい土器人形群か。やたら新品のようにすべすべだが、ホンマモノ?)

令050529  21世紀の啓蒙【下】  理性、科学、ヒューマニズム、進歩     (草思社、令和元年刊)   Steven Pinker 著、橘明美・坂田雪子 訳
(原題の Enlightenment Now を言い直せば『いまこそ真の教養を』。延々と、 Factfulness の増補版のような記述が続くのは第3部の主張のための長い助走路だ。健全なヒューマニズムこそが人類の進歩を導いてきた。それを、行き過ぎたリベラルと同一視するのは間違いだし、事実に基づかない懐旧のポピュリズムはさらに始末が悪い。信心深く、高学歴でなく、人種的に多数派に属する中年以上の男性が織りなすポピュリズムは早晩絶滅危惧種だ。著者は勇気をもって正義と公正への道をさやかに指し示す。イスラムの誤った面を偽善的に擁護する欧米の知識人への批判もある。|生物界では150万種以上が科学的に分類されており、残りの700万種も今世紀中に名がつく と。非暴力の抵抗運動の4分の3が成功してきたが、暴力を伴う抵抗運動の成功率はわずか3分の1。≪文化が活気にあふれるのは、人や発想が広範囲から大量に集まってくる場所と決まっている。≫)

令050524  夢十夜      (平凡社、令和3年刊)   夏目漱石 著、金井田英津子 画
(金井田さんの版画がメインとなる本。「夢十夜」通読は2度目。朗読劇に3篇かけたとき、共演者から質問されたことに答えられなかったのは何だったのだろう。英訳でも読んでみたい作品だ。)

令050522  我々はどこから来て、今どこにいるのか?【上】  アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか     (文藝春秋、令和4年刊)   Emmanuel Todd 著、堀 茂樹 訳
(英国圏の強みは、人類の基底にある絶対核家族に由来する。世代間の継続性を強く断ち切れるし、弱者救済システムの構築をつうじて英国を欧州初の福祉国家にした。英国から米国にわたった入植者たちはいわば旧約聖書を携えて自らを約束の地へ到達したユダヤ人になぞらえた。|聖書を読ませるべしという宗派と識字率上昇、そして社会の変容、という関係もおもしろい。|中国は出生率1.3と以上に低い国で、大量に人口が流出しており、将来の国力衰退は明らかなので単に待てば脅威でなくなる。|現代遺伝学の測定では米国の黒人の先祖の4分の1はヨーロッパ系で、かかる25%ポイントのうち19%ポイントが男性要素、つまり男性白人が黒人女性に産ませた子の末裔ということ。)

令050520  猫町      (平凡社、令和3年刊)   萩原朔太郎 著、金井田英津子 画
(金井田さんの版画がメインとなる本。「猫町」は安部公房作品の雰囲気だ。)

令050428  静物 小池 光 歌集      (砂子屋書房、平成12年刊)   小池 光 著
(味のある作品が多いのだが、五七五七七を大きく逸脱する作が多すぎて閉口する。ぼくは基本的に韻律に忠実な作しか評価しないので。|| ごきぶりをみればかならず撲殺し女になりてゆくむすめたち|山小屋に棲みつくねずみその祖 (おや) は峰をつたひてここに来しもの|勝新の柩に入れし札たばの五百万円を意気地といはむ|備考欄を李香蘭と聞きちがへわけのわからぬ話がしばらく|ともぐひに生き残りたるこほろぎが夜籠 (よかご) の沙 (すな) になみだをおとす|にはたづみの水を満濃池のごとく見て蟻の斥候 (ものみ) の引きかへしゆく|戦没者といひかへしとき戦死者のするどき眸 (まみ) はみえなくなりぬ|善良な軽薄さを国是としてきたり割らるるまへの西瓜のやうに )

令050428  人類の起源  古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」    (中公新書、令和4年刊)   篠田謙一 著
(名著。巻末19頁にのぼる参考文献リストが事実上すべて英文の論文で占められている。海外の諸研究フォローのためのメモの集積が本書の原点と。科学の発展の道のりは、間違いと訂正の歴史であり、「科学は間違うものだ」という認識が重要、と冒頭に。多人数の研究者グループによる核ゲノム研究により、まさに現在進行形で歴史が書き換えられつつある。遺伝子研究による人類史探究の成果が世界史に統合される日が早く来ることを望む。いわゆる「人種」という概念の非科学性があぶり出される。ホモ・サピエンスの世界的展開は6萬年前以降である。)

令050424  短歌の友人      (河出書房新社、平成19年刊)   穂村 弘 著
(時代性を軸にして的確な歌論が紡がれる。近代における「<私>の獲得」、塚本邦雄らによる「言葉のモノ化」、近来の「口語の導入」、そして未来への期待と過去への郷愁をともに封じられた世代が<今>への違和感を煮詰めたところから「棒立ちの歌」が量産される。≪矛盾や混乱の要素が含まれているからこそ深く共感できる…≫ ≪「ダシャン」というオノマトペには一回性の新鮮さ…全員が生の一回性の現実を深いレベルで共有しているから…≫ ≪短歌的リアリティの補強要素として、もっとも有効なのは…なるべく具体的で小さな違和感…現実的社会的には役に立たない情報≫ ≪現代では悪夢的だということがすなわちリアルなのであり、そのリアルさこそが、対極にあるアニミズム的な世界から生命力を奪っているものの正体だろう≫ ≪(歌人は)ハートの庶民性濃度が通常の10倍…普通さにまみれながら、同時にそこを突き抜ける過剰さ≫ ≪石川啄木や寺山修司の庶民性はあくまで知的に仮構されたものであり、本来は非凡な詩人タイプだったのではないか≫ || たくさんのおんなのひとがいるなかで/わたしをみつけてくれてありがとう (今橋 愛) |菜の花にからし和えればしみじみと本音を聞きたい飛雄馬の姉さん (飯田有子) |木のもとにころがつてゐる空蝉のなかに夕べの水溜まりをり (喜多昭夫) |腹が減っては絶望できぬぼくのためサバの小骨を抜くベトナム人 (斉藤斎藤) |メリーゴーランドを止めるスイッチはどこですかそれともありませんか (中澤 系) |罪おほき男こらせと肌きよく黒髪ながくつくられし我れ (与謝野晶子) |天竺からみれば第三セクターのやうな大和のほとけほほゑむ (馬場あき子) |藍青 (らんじやう) の天 (そら) のふかみに昨夜 (よべ) 切りし爪の形の月浮かびをり (小島ゆかり)

令050421  戯れ言の自由      (思潮社、平成27年刊)   平田俊子 著
(かつての南川航に、こういうふうにことばで遊び、すっとぼけた作品がけっこうあった。その路線で行けばよかったかな。)

令050421  桜前線開架宣言  Born after 1970 現代短歌日本代表     (左右社、平成27年刊)   山田 航 編著
(共感打率がきわめて低いのは、何ぞや。作家は無意識の筆出を意図するのだろうが、結果は排泄におわってないか。優れた作にも逢えたのが救い。|| デッサンのように何度も君の手に撫でられて僕の輪郭になる (松村正直) |輪廻など信じたくなし限りなく生まれ変わってたかが俺かよ|偶像の破壊のあとの空洞がたぶん僕らの偶像だろう|「しなやか」と「やさしさ」だけは使わずに女性を褒めてみよ(20点) (松木秀) |あらずともよき日などなく蜉蝣は翅を得るなり死へ向かふため|人にみな若き母ありきひらがなにひらきたるやうに子の名を呼びき (横山未来子) |国ひとつ潰えゆく夏 兵士ではなく男娼として見届ける|ぼくたちが神の似姿であるための化粧、刺青、ピアス、傷痕 (松野志保) |少年時友とつくりし秘密基地ふと訪ぬれば友が住みおり|Gパンを穿きたる祖父に実写版鉄腕アトムのような哀しみ (笹公人) |ぼくもです。と/きみからメールが来て/わたし/こころだけになって/ずっとまってた (今橋愛) |したあとの朝日はだるい 自転車に撤去予告の赤紙は揺れ (岡崎裕美子) |行く川を追いかけたくて真っ白に柳絮を飛ばしていたり柳は (齋藤芳生(よしき)) |食卓に微笑む乙女ひとりをりおかめ納豆のカップ、の他に (田村元(はじめ)) |忘れてた、あなたの町に降るのをと雨はベランダを打ちはじめたり (澤村斉美(まさみ)) |正座して「個性を高めるのよ。」とひとしきりうなずく人達に囲まれている|ムーミン谷の色彩が嫌 放射能を浴びたる後の視界のようで (花山周子) |「アジア系の女の子たちは」とくくられる日々炭酸を飲んで過ごせり|声の大きい大叔父、日陰の金魚草、やたら電飾だらけの神社 (山崎聡子) |噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし|わたくしも子を産めるのと天蓋をゆたかに開くグランドピアノ|きみとの恋終わりプールに泳ぎおり十メートル地点で悲しみがくる (小島なお) |自己批判に金玉がない そのことを教養などと言っているなり|ツイッターとフェイスブックで自己実現したる学生を現実で、殺る (野口あや子) |感覚はいつも静かだ柿むけば初めてそれが怒りと分かる|酸漿のひとつひとつを指さしてあれはともし火 すべて標的 (服部真里子) |燃えさかる傘が空から降ってきてこれは復讐なのだと気付く (木下龍也) |カーテンに遮光の重さ くちづけを終えてくずれた雲を見ている|これが最後と思わないまま来るだろう最後は 濡れてゆく石灯籠|すずかけの樹に風満ちて君になら言い得ることを言わずにいたり (大森静佳) |棺にさへ入れてしまへば死のときは交接 (まぐは) ふときとおなじ体位で|姉は背を、傷ひとつなき背をみせて血しほの海のさなかに立てり (吉田隼人) |訃報 抱きとむるこころは天頂を発つ夕立の粒の加速度|ゑんどうの花の奥処をまさぐりてメンデルは夜に手をすすぎしか|特急の窓に凭るるまどろみはやがて筋なす雨に倚りゐき|灯さずにゐる室内に雷 (らい) させば雷が彫りたる一瞬の壜|真の檻には格子なく錠もなく空地にほしいままのひるがほ|老いてわれは窓に仕へむ 鳥来なばこころささげて鳥の宴を (小原(おばら)奈実) ―― こうしてみると、ぼくの評価の最高点は小原奈実さんだ。)

令050419  失われた時を求めて 1 スワン家のほうへ I      (岩波文庫、平成22年刊)   Marcel Proust 著、吉川一義 訳
(ついに長旅へと漕ぎ出した。「スワン家のほうへ」は「スワン家方面」とすべき。この巻前半の「お母さん」を恋う主人公の心根が幼すぎて気持ちが悪い。文革中国でこれを訳したら即つるし上げだ。365~366頁にモネの睡蓮庭園に相当する景色あり、うつくしい。訳者のこの解説がわかりやすい:「プルーストに言わせると、あのころはこうだった、ああだったと想いうかべるのは、平板な過去の羅列にすぎない。ほんとうの過去は、匂いや風味など、失われた感覚のなかに潜んでいて、ふとそれに遭遇したとき、はじめて深い詩情とともによみがえる。これがプルーストのくり返し描いた無意志的記憶現象で…」)

令050413  私の戦後短歌史      (角川書店、平成21年刊)   岡井 隆 × 小高 賢 (聞き手)
(≪無意識の中にある何かを引っ張り出してゆく方法として、、たとえば題詠なんかがありうる。…ペンを持ったときに出てくるものをそのまま書くといった方法はありうる。…塚本さんが…横っちょにいろいろな本を置きながら歌を作っているというのは、あれはある意味で自分の無意識の中から何かを引っ張り出すための方法でもあるのです。≫ ≪文学はつきつめると自分なりの格付けの問題ですよね。≫ ≪ヴァースかライトヴァースかということで、オーデンは論じているのですね。…80年代半ばの日本はたしかにそういう時期でした。≫|それにしても、短歌に思想性とは、ぼくにはどうにもしゃらくさく思える。思想を語りたければ長詩であり散文だ。思想を感性・感情のつぶやきにしてしまうのは堕落にして卑怯と思う。)

令050412 続 谷岡亜紀歌集      (砂子屋書房・現代短歌文庫、令和4年刊)   谷岡亜紀 著
(打率の高い歌集だ。|紫陽花の葉に巡礼の道伸びて五体投地をする毛虫おり|タンカーは影となりつつ沖にあり私は海辺に黒き傘さす|アブサンの香る夜会に更けゆきしそらみつヤマトホテルの灯り|その未明粉雪のごと月光は降り来てやがて積もり始めつ|来年こそ猫年くると歳末の夜の広場に家猫集う|黒南風 (はえ) が吹きて西日が衰えて鳥が騒いでスコールが来る)

令050410  我々はどこから来て、今どこにいるのか?【下】  民主主義の野蛮な起源     (文藝春秋、令和4年刊)   Emmanuel Todd 著、堀 茂樹 訳
(英国そして米国の自由主義革命の由来は、原初的な民主制が十分に残っていたから。米国で白人層の平等が確保できた時代は黒人が差別された時代であり、黒人と対照的な存在としての白人が平等たりえた。|中国の指導者らは西洋に操られたのであり、西洋の態度が豹変するとき北京の戦略的無力さが明らかになる。)

令050408 世界の賢人12人が見た ウクライナの未来 プーチンの運命      (講談社+α新書、令和4年刊)   クーリエ・ジャポン編
(本書がウクライナ侵攻開始後わずか2ヶ月半で出され、ほとんど読み誤っていないのは、さすが。Thomas Piketty が、不動産と金融資産を合わせて1000万ユーロ以上のロシア人2万人(将来の局面しだいでは同様に中国人20万人)を標的にした制裁が支配層の輿論転換に寄与すると。F. Fukuyama は、戦禍や専制に苦難を経た世代からリベラル民主主義をありがたく思わない世代へと世代的サイクルが一巡したことが、リベラルを軽視することにつながったが、時代の潮目がまた来ると。)

令050407  寂しさでしか殺せない最強のうさぎ       (書肆侃侃房、令和4年刊)   山田 航 著
(ことばが散漫で結晶に至らず、ゆえに打率悪し。||この街の自傷のように誰もいない公園に噴水があがるよ|ちがうこころとこころとが混じりあうとき/ほんとうのゆきどけをきみは知るだろう|金魚鉢のなかであそんだまだそこが容器であると気付かぬままに|映画にはならないけれどドナルドとデイジーも買い物に行くのさ)

令050405  世界インフレの謎      (講談社現代新書、令和4年刊)   渡辺 努 著
(つまるところインフレ率は、供給側と需要側の双方がもつ「インフレ予想(社会の常態イメージ)」の総和であり、疑心暗鬼でせめぎ合いつつスパイラルにも凍結状態にもなる。インフレ率2%というのは、中央銀行が金利操作で泳げる余地を確保しつつ、消費者も容認するであろう線。実質賃金が不変でも名目賃金が毎年2%ずつ上昇する世の中にリセットできるかがカギ。本書は昨年10月出版なので、賃金上昇の見通しが白紙だが、いまなら著者はどう書くか。いやむしろ、今春の状況は著者のような経世家がもたらしてくれたものと言えよう。)

令050405  歌集 暮れてゆくバッハ      (書肆侃侃房、平成27年刊)   岡井 隆 著
(彩よき雑誌のような歌集。観念と事物をにぶく衝撃に導く作にひかれる。|| 詠む歌は眞 (まこと) であると力 (りき) みたる夏の朝 (あした) をなつかしむ、虚 (うそ) |はしり行く車をうしろから見れば釈明のない試論の通過|虚になる眞もありぬ裏庭の闇をこのみて咲ける臘梅|るり色を出さうとすればパレットは濁るばかりだ 如月ちかく|ルーツつまり始原つて奴だ暗きよりあらはるる故信ぜむとする|てんてんとてんてんてんと川岸をころがりてゆく思考の兎)

令050404  食に知恵あり      (日経ビジネス人文庫、平成14年刊)   小泉武夫 著
(茅台酒が水を使わぬ固体発酵だと知ってビックリ。辞書で”茅台酒”をひくと茅台鎮の赤水という河のあたりの湧き水の質が良くて云々とあるが、はて。Amazonの評のなかに「日本人の伝えてきた食の知恵を過剰に評価する文章が目立つのが気にかかった」というのがあったが、ぼくもそれを感じることがあった。発行年の平成14年ごろといえば妙な日本否定が横行していたから(だからぼくもメルマガをがんばった)、その時代に抗うがゆえの筆致だったのだろう。)

令050331  岡井隆の忘れもの     (書肆侃侃房、令和4年刊)   岡井 隆 著
(≪問い(謎)が先に出て、答えが後になるのも、詩(ひろく文学)の常に用いる兵法である。≫≪どんなに素朴にみえている歌でも、人を打つ歌には、それなりのレトリックがものを言っているのであって、そもそも修辞を馬鹿にしていたら、一首の歌といえども成功しない。≫
|眼が覚めてももう会えないと気づく でも誰のしずかな鎖骨だったか ― 永田紅
|死にたい人と/殺したい人が/無言で雪を眺めている/病んだ人にも/癒えた人にも/同じぐらい雪は無関心 ― 平田俊子
|軽く罪にぎって風の中をゆく さほどでもなき人生をゆく ― 陣崎草子)


令050326  中華電影的中国語 さらば、わが愛 覇王別姫 中国語・日本語対訳シナリオ集      (キネマ旬報社、平成8年刊)   陳凱歌 著、水野衛子 訳
(時代の痛々しさが丹念に描かれている。ピンイン表示にアクセント符号位置の誤りが多いのが残念。)

令050324  歌集 はらりさん      (砂子屋書房、平成15年刊)   山埜井喜美枝 著
(名歌集と思うが、もうすこし振り仮名を増やしてほしい。「蔑す」「菴没羅」を漢字だけみて「なみす」「あんもら」とは読めない。|≪山姥のあふるる乳のいろに咲く霞立つ春峡のさくらは≫ ≪たしかもう身罷りしはず咲き初めのさくらの下を歩み来たるは≫ ≪断崖 (きりぎし) に立てば吹きあげ吹きおろす風にさくらは散りかひ惑ふ≫ ≪秋来ぬとつくつく法師いないまだ夏よと競ひ啼く深山蟬≫ ≪いまだ見ぬおほうみを恋ひ火の山の伏流水は呼び合ひてゆく≫ ≪眠がらぬ心とねむりたがる身と糾 (あざな) はれゆく梅の木下を≫ ≪立葵緋に咲きのぼりたたかひに召されし馬はいづへにて果つ≫ ≪願はくはすくやかなる死を そののちは折折化けて一人を訪はむ≫ ≪長き夜を眠らぬ女眠れざる男迷へる仔羊の群れ≫)

令050318  小さき王たち 第三部 激流      (早川書房、令和4年刊)   堂場瞬一 著
(さわやかな結末。第三部も早々に結末が見えたと思ったが、著者がうわてだった。「小さな王たち」とは、大きく世の中を動かすつもりが結局ちいさな枠から逃れられないふたりのジイさんのことだった。みごとな終結。映画化が楽しみ。≪いつかは必ず負ける。そして負けた時にどう振る舞うかで、人間の価値は決まるんだ。≫)

令050313  極権・習近平  中国全盛30年の終わり    (日本経済新聞出版、令和4年刊)   中澤克二 著
(副題が魅力的だが、新たなファクトには乏しい。メンツ亡者の近平がたかだか自分のメンツのために国を滅ぼす。情報のシャットアウトが防げるかどうか! ≪圧倒的な権力を手にした習が「今なら勝てる」と判断すれば、台湾侵攻は実行される。≫ ≪スパイ摘発など安全保障に関わる「国家安全」と、現政権の権威と安定を守る「政治安全」の同一視≫)

令050312  傳奇集     (思潮社、令和4年刊)   北川 透 著
(ようやく現代詩に舞い戻れた。ハルハリ島シリーズがつくる世界観、よほどこの詩集を買って手元に置こうかと思った。| おれはおまえを/燃える薪のなかに投げ込んだ/そして おまえに別れのあいさつをしようとしたが/用意していたはずの文句が出てこない/それもそのはず/投げ込まれていたのはおまえではなかった/おれが黒焦げになるのを見物して/笑い転げていたのはおまえだった/よくあることだ まっくらやみだと思っていたのに/眼をしばたいたら まひるだったということは/それほどいまのいまを知ることはむずかしい(「火刑」) この「よくあることだ」にしびれる。)

令050310  短歌の世界     (岩波新書、平成7年刊)   岡井 隆 著
(短歌は、ひとつの枢要としてのテーマ、情景、比喩を得ることで生まれる。いくつかの短詩型が並列していくのがありうべき理想の姿、という岡井さんの夢に共鳴する。≪短歌はある時代から、新鮮な喩法を発見するための隠喩探しの時代に入ったといってよい。≫)

令050309  長距離走者の孤独     (新潮文庫、昭和48年刊)   Alan Sillitoe 著、河野一郎・丸谷才一 訳
(原著はぼくの生年の刊。訳本は半世紀前の古風な日本語だ。Sillitoe 作品では確実にことが起こり、内実あるパワーをはらんでいる。)

令050305  蔵書一代  なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか     (松籟社、平成29年刊)   紀田順一郎 著
(蔵書の切り口で見た大正・昭和史だ。円本の盛衰など時世の変化の速さは平成・令和の比ならず。|渡部昇一先生は15万冊の巨大な書庫を建設するために77歳にして数億円の融資を受け、87歳で逝去。)

令050302  英語の読み方  ニュース、SNSから小説まで    (中公新書、令和3年刊)   北村一真 著
(要所をおさえた良書。リスニング対象と同速度で英文読解ができなければリスニングもできないという、ロジカルなファクトを繰り返し指摘する。読解例題の選択センスも、さすが。)

令050302  いま生きている英語  大辞典でも収めきれない情報    (中公新書、平成9年刊)   飛田茂雄 著
(いかんせん26年前の本。|1未満の数量の単数扱いは、自然科学の学術論文の国際ルールと。|Look, no hands! と自転車乗り。納得。)

令050228  ふりさけ見れば      (日経朝刊連載)   安部龍太郎 著、西のぼる 画
(おそらく初めて新聞連載小説を完読。)

令050227  Where the Crawdads Sing      (G.P. Putnam's Sons 2018)   Delia Owens 著
(Kya and Tate will live in me forever.)


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